日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PE(01-80)

ポスター発表 PE(01-80)

2017年10月8日(日) 13:30 〜 15:30 白鳥ホールB (4号館1階)

13:30 〜 15:30

[PE53] 女子大学生の進路決定過程と対人環境の関係(4)

就職活動ストレスと役割占有感、自己効力感が自己成長感に及ぼす影響

風間文明1, 山下倫実2 (1.十文字学園女子大学, 2.十文字学園女子大学)

キーワード:就職活動, 自己成長感, 役割占有感

 「若い頃の苦労は買ってでもせよ」というが,就職活動は大学生にどのような効果をもたらすのだろうか。これまでの研究から,就職活動が大学生の自己成長を促す可能性が示されている(高橋・岡田,2012;浦上,1996)。就職活動中には,友人と競いあったり,志望業種が決められなかったり,筆記試験や面接など繰り返し厳しい評価にさらされたり,不合格にされたりといった,多くの苦労を乗り越えて内定を勝ち取ることになろう。こうした苦労は結果として自己成長につながるとしても,同時に活動中のストレッサーでもある。苦労が大きい,すなわちストレスが強いほど,より成長するのだろうか。本研究の目的は,就職活動中のストレスが自己成長感にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることである。その際に,活動者の自己効力感,役割占有感,就職活動の頻度の影響も合わせて検討する。
方   法
調査対象者 埼玉県内の私立女子大学4年生75名。平均年齢21.40歳(SD=0.49)。2017年7月下旬から8月中旬にかけて調査実施した。一般企業への就職希望者54名(72.0%)の内,回答漏れのなかった48名を分析対象とした。なお就職活動を終えていた者は38名(70.4%)であった。
質問紙の内容 1)就職活動時のストレス:北見・茂木・森(2009)による就職活動ストレス尺度(6件法)。2)就職活動による自己成長感:高橋・岡田(2012)による就職活動による自己成長感尺度(6件法)。3)役割占有感:風間(2015)による13項目(7件法)。4)自己効力感:成田ら(1995)による特性自己効力感尺度(5件法)。5)1週間あたりの就職活動の頻度(回数)。 調査用紙には,他に6)ソーシャル・サポート源,7)対人環境に関する質問,8)就職活動,内定状況に関する質問などを含めたが,本研究では1)~5)までを分析に使用した。
結   果
就職活動ストレス尺度 因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行い,項目削除後の19項目に関して,固有値1.0を基準に5因子を抽出した。第1因子を「他者比較」,第2因子を「身体的疲労」,第3因子を「志望・適性不明」,第4因子を「不合格」,第5因子を「決定不信」と解釈した。
就職活動による自己成長感尺度 因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行い,項目削除後の22項目について,固有値1.0を基準に3因子を抽出した。第1因子を「自己明確化」,第2因子を「就業準備性」,第3因子を「関係性強化」と解釈した。
役割占有感 13項目について同様に因子分析を行い,固有値1.0以上の基準で「役割期待認知・遂行感」,「居場所感」の2因子を抽出した。
 以上の各因子についてα係数が十分高いことを確認した上で平均評定値を算出し尺度得点とした。
就活ストレス,役割占有感,自己効力感が自己成長感に及ぼす影響 就活ストレス5因子,役割占有感2因子,自己効力感,就活頻度を説明変数,就活による自己成長感3因子をそれぞれ目的変数とした,ステップワイズ法による重回帰分析を行った(表1)。その結果,自己明確化に対しては役割期待認知・遂行感から,就業準備性に対しては決定不信と自己効力感から,関係性強化に対しては決定不信と役割期待認知・遂行感から,それぞれ有意な正の影響が見られた。
考   察
 就職活動中の決定不信ストレスが高いほど,就業準備性,関係性強化が高まることが示された。進路決定に確信が持てず,更なる情報や他者からの支援を求めた結果,就業に向けてのスキルや構えの習得,他者との関係の拡大良好化といった自己成長につながったのだと考えられる。また役割占有感が自己明確化と関係性強化を,自己効力感が就業準備性を高めることが合わせて示された。(本研究は平成28年度十文字学園女子大学プロジェクト研究費の助成を受けた)