1:30 PM - 3:30 PM
[PE54] 女子大学生の進路決定過程と対人環境の関係(5)
情緒的/道具的サポートが就職活動及び就職活動ストレスに及ぼす影響
Keywords:ソーシャルサポート, 就職活動ストレス, 就職活動
問 題
就職活動においては,友人(同性/異性)や親しい先輩からの就職関連情報を利用し,大学の先生や就職課からの就職関連情報を重視する(下村・木村,1994)など,身近な人々から提供される道具的サポート(以後,SP)の利用を予測させる結果が得られている。また,就職活動においては自分にふさわしい職業を決定し,試験や面談による厳しい選抜に臨む必要があり,このようなストレス状況では周囲の人の理解や励ましといった情緒的SP は欠かせないだろう。ただし,家族や友人,先輩などの関係性によってSP の内容に違いがある可能性がある(下村・木村,1997)。そこで,本研究の目的は,誰から受けるSPが就職活動ストレスを低下させ,実際の就職活動に影響を及ぼすのかを探索的に検討することである。
方 法
<調査対象者>女子大学生の進路決定過程と対人環境の関係(4)と同様
<質問項目>1)就職活動に関する項目:①就活の1週間あたりの頻度,②内定数,③内定を得るまでの受験企業数,④内定までの労力,⑤内定先の納得度を測定。①~③は数値で自由に記述,④と⑤は7件法で回答を求めた。2)情緒的/道具的SP源:情緒的SPは,「就職活動中にあなたの選択や取り組みを信頼し,あなたの抱える悩みに共感を示し,あなたを支え励ましてくれる人」を尋ね,友人,親しい異性,先輩,家族,先生,就職課,社会人という関係性ごとに人数を回答。道具的SPについても同様に,「就職活動で生じた問題や困ったことに対処するための,必要な情報や役に立つ知識を与えてくれる人」と尋ね,人数を回答。3)就職活動ストレス:女子大学生の進路決定過程と対人環境の関係(4)と同様
結果と考察
就職活動に関する項目(5),就活ストレス(5)を基準変数とし,SP 源の総数,7種類の関係ごとのSP 割合を説明変数としたステップワイズ法による重回帰分析を実施した。なお,分析は情緒的SP 及び道具的SP ごとに実施した。投入された変数と標準偏回帰係数を表1に示す。
まず,就職活動に関する変数に着目すると,週当たりの就活頻度には情緒的SPよりも様々な関係からの道具的SPが影響を及ぼしていた。家族や親しい異性,先輩や就職課からの道具的SPがあるほど,積極的に就職活動を行っていることが推測される。類似した変数である受験企業数では情緒的SPでも道具的SPでも就職課の影響が強かった。ただし,就職支援課のSPは内定までの労力にも影響を及ぼしており,就職活動の幅を拡大する一方で,負担感を増やすようである。最後に,内定先の納得度については,社会人から情緒的SPを受けるほど,親しい異性から道具的SPを受けるほど,低くなることが示された。特に,就職活動において,職業決定の過程や総合職と一般職といった働き方の志望などで違いを感じやすい親密な異性との情報交換が,内定をもらった後の納得度の低さに影響する可能性がある。
次に,就職活動ストレスに関する変数に着目すると,他者比較ストレスと不合格ストレスに就職課の情緒的SPや道具的SPが影響しており,就職活動全体の動向を把握している就職課とのつながりが強くなるほど,他者と自分の就職活動を比較しがちになり,ストレスを感じることが推測される。また,様々なサポートをしてもらったにも関わらず,不合格になった事実は,他者の期待に添えなかった自分を強く意識することとなり,不合格のストレスを高める可能性もある。唯一,家族の道具的SPが決定不信ストレスを下げており,家族の実際的な支援によって,就職活動に対する迷いが低くなる傾向にあった。
今回の検討により,実際に就職活動が開始されると,ソーシャルサポートが就職活動の積極性を支える一方で,「負担」や「圧力」として捉えられる側面が明らかとなった。今後は,就職活動の時期に応じた適切なSPの有り方や負担感の少ないサポート方法等を検討していく必要があると考える。
(本研究は,H28年度十文字学園女子大学のプロジェクト研究費の助成を受けて実施された)
就職活動においては,友人(同性/異性)や親しい先輩からの就職関連情報を利用し,大学の先生や就職課からの就職関連情報を重視する(下村・木村,1994)など,身近な人々から提供される道具的サポート(以後,SP)の利用を予測させる結果が得られている。また,就職活動においては自分にふさわしい職業を決定し,試験や面談による厳しい選抜に臨む必要があり,このようなストレス状況では周囲の人の理解や励ましといった情緒的SP は欠かせないだろう。ただし,家族や友人,先輩などの関係性によってSP の内容に違いがある可能性がある(下村・木村,1997)。そこで,本研究の目的は,誰から受けるSPが就職活動ストレスを低下させ,実際の就職活動に影響を及ぼすのかを探索的に検討することである。
方 法
<調査対象者>女子大学生の進路決定過程と対人環境の関係(4)と同様
<質問項目>1)就職活動に関する項目:①就活の1週間あたりの頻度,②内定数,③内定を得るまでの受験企業数,④内定までの労力,⑤内定先の納得度を測定。①~③は数値で自由に記述,④と⑤は7件法で回答を求めた。2)情緒的/道具的SP源:情緒的SPは,「就職活動中にあなたの選択や取り組みを信頼し,あなたの抱える悩みに共感を示し,あなたを支え励ましてくれる人」を尋ね,友人,親しい異性,先輩,家族,先生,就職課,社会人という関係性ごとに人数を回答。道具的SPについても同様に,「就職活動で生じた問題や困ったことに対処するための,必要な情報や役に立つ知識を与えてくれる人」と尋ね,人数を回答。3)就職活動ストレス:女子大学生の進路決定過程と対人環境の関係(4)と同様
結果と考察
就職活動に関する項目(5),就活ストレス(5)を基準変数とし,SP 源の総数,7種類の関係ごとのSP 割合を説明変数としたステップワイズ法による重回帰分析を実施した。なお,分析は情緒的SP 及び道具的SP ごとに実施した。投入された変数と標準偏回帰係数を表1に示す。
まず,就職活動に関する変数に着目すると,週当たりの就活頻度には情緒的SPよりも様々な関係からの道具的SPが影響を及ぼしていた。家族や親しい異性,先輩や就職課からの道具的SPがあるほど,積極的に就職活動を行っていることが推測される。類似した変数である受験企業数では情緒的SPでも道具的SPでも就職課の影響が強かった。ただし,就職支援課のSPは内定までの労力にも影響を及ぼしており,就職活動の幅を拡大する一方で,負担感を増やすようである。最後に,内定先の納得度については,社会人から情緒的SPを受けるほど,親しい異性から道具的SPを受けるほど,低くなることが示された。特に,就職活動において,職業決定の過程や総合職と一般職といった働き方の志望などで違いを感じやすい親密な異性との情報交換が,内定をもらった後の納得度の低さに影響する可能性がある。
次に,就職活動ストレスに関する変数に着目すると,他者比較ストレスと不合格ストレスに就職課の情緒的SPや道具的SPが影響しており,就職活動全体の動向を把握している就職課とのつながりが強くなるほど,他者と自分の就職活動を比較しがちになり,ストレスを感じることが推測される。また,様々なサポートをしてもらったにも関わらず,不合格になった事実は,他者の期待に添えなかった自分を強く意識することとなり,不合格のストレスを高める可能性もある。唯一,家族の道具的SPが決定不信ストレスを下げており,家族の実際的な支援によって,就職活動に対する迷いが低くなる傾向にあった。
今回の検討により,実際に就職活動が開始されると,ソーシャルサポートが就職活動の積極性を支える一方で,「負担」や「圧力」として捉えられる側面が明らかとなった。今後は,就職活動の時期に応じた適切なSPの有り方や負担感の少ないサポート方法等を検討していく必要があると考える。
(本研究は,H28年度十文字学園女子大学のプロジェクト研究費の助成を受けて実施された)