13:30 〜 15:30
[PE60] 女子短大生の不安と大学適応感との関連
不適応の予防に向けて
キーワード:適応感, 不安, 女子短大生
問題と目的
近年は大学に入学する学生は多様化し,不適応や中途退学をする学生も増加している。大学への不適応を予防するためには,問題への適切な支援が必要である。本研究では,女子短期大学生の1年次生を対象に,入学時とその後の不安が約10ヶ月後の大学適応とどのように関連するのかを調べる。適応の指標として,大学環境へ適合しているかどうか,学生自身の主観的な感覚(大学適応感)を測定する。
方 法
(1) 対象者と手続き A県内にある女子短期大学の1年次生280名のうち,調査に協力が得られた197名を対象とした。調査は4月の入学直後と入学10カ月後に実施した。対象の大学は,保育・医療領域と芸術の5学科があり,職業教育が中心である。
(2) 調査内容 ①不安:4月の健康診断時に大学生活に関する不安の有無を調べた。10ヵ月後の調査時に入学から今までに感じた不安や悩みについて回顧してもらい,「学業」「友人関係」「家族関係」「将来・就職」「心身の健康」に関する不安の頻度を尋ねた。4件法。
②大学適応感:大久保・青柳(2003)の大学生用適応感尺度を用いた。大学環境に対する学生の認知や感情を測定するものである。「居心地の良さの感覚」(例“周囲に溶け込めている”),「被信頼・受容感」(例”他人から頼られていると感じる“)「課題・目的の存在」(”熱中できるものがある“),「拒絶感の無さ」(例”その状況で嫌われていると感じる(R)から構成される。29項目,5件法。
結果と考察
(1)尺度の検討
大学不適応感の因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行ったところ,2項目(逆転項目)以外は大久保ら(2003)と同様の因子構造が確認された。α係数は第1因子.92,第2因子.93,第3因子.84,第4因子.92であった。
(2)不安の頻度
4月時点の「不安有」群は57名(28.9%),「不安無」群は128名(65.0%),欠損値12名(6.1%)であった。10ヵ月後の調査については不安の各項目に関して“よくあった”または“ときどきあった”と回答した者を「不安有」群,“あまりなかった”または“全くなかった”と回答した者を「不安無」群として分類したところ,「不安有」は学業148名(75.1%),友人関係83名(42.1%),家族関係28名(14.2%),将来・就職130名(66.0%),心身の健康61名(31.0%)であった。人間関係に関する不安よりも学業や就職に関する不安を感じる者が多い様子がうかがわれた。
(3)不安と大学適応感との関連
4月時点の不安の有無による大学適応感の差を調べたところ,有意差は示されなかった。入学直後の不安の有無はその後の適応には関連しないことが示唆される。10ヶ月後の不安については,大学適応感に差がみられた。
ⅰ)「学業」の不安:課題・目的の存在(t(193)=-2.77,p<.01)と拒絶感の無さ(t(192)=-2.23 p<.05)に差が示された。
ⅱ)「友人関係」の不安:居心地のよさ(t(192)=-3.69,p<.001),被信頼・受容感(t(193)=-2.19,p<.05),拒絶感の無さ(t (192)=-3.66,p<.001)に差が示された。
ⅲ)「家族関係」の不安:被信頼・受容感(t(192)=-2.46,p <.05),課題・目的の存在(t(193)=-3.09,p<.01),拒絶感の無さ(t (192)=-3.19, p <.01)に差が示された。
ⅳ)「将来・就職」の不安:居心地のよさ(t(191)=-3.05, p <.01),被信頼・受容感(t (192)=-2.00,p <.05),拒絶感の無さ(t (192)=-3.77, p <.001)に差が示された。
ⅴ)「心身の健康」の不安:居心地のよさ(t(191)=-3.46,p<.01),課題・目的の存在(t(193)=-3.00,p<.01),拒絶感の無さ(t(192)=-3.91,p<.001)に差が示された。
「学業」「友人関係」「家族関係」「将来・就職」「心身の健康」に関する各不安は,大学適応感4因子のいずれかと関連し,不安の頻度が高いと大学適応感は低かった。「拒絶感のなさ」はすべての不安と関連しており,多くの不安を抱える学生は周囲からの拒絶感を感じやすいことが示唆される。
大学適応感を高める上では様々な不安に対する多面的な支援が必要と考えられる。
近年は大学に入学する学生は多様化し,不適応や中途退学をする学生も増加している。大学への不適応を予防するためには,問題への適切な支援が必要である。本研究では,女子短期大学生の1年次生を対象に,入学時とその後の不安が約10ヶ月後の大学適応とどのように関連するのかを調べる。適応の指標として,大学環境へ適合しているかどうか,学生自身の主観的な感覚(大学適応感)を測定する。
方 法
(1) 対象者と手続き A県内にある女子短期大学の1年次生280名のうち,調査に協力が得られた197名を対象とした。調査は4月の入学直後と入学10カ月後に実施した。対象の大学は,保育・医療領域と芸術の5学科があり,職業教育が中心である。
(2) 調査内容 ①不安:4月の健康診断時に大学生活に関する不安の有無を調べた。10ヵ月後の調査時に入学から今までに感じた不安や悩みについて回顧してもらい,「学業」「友人関係」「家族関係」「将来・就職」「心身の健康」に関する不安の頻度を尋ねた。4件法。
②大学適応感:大久保・青柳(2003)の大学生用適応感尺度を用いた。大学環境に対する学生の認知や感情を測定するものである。「居心地の良さの感覚」(例“周囲に溶け込めている”),「被信頼・受容感」(例”他人から頼られていると感じる“)「課題・目的の存在」(”熱中できるものがある“),「拒絶感の無さ」(例”その状況で嫌われていると感じる(R)から構成される。29項目,5件法。
結果と考察
(1)尺度の検討
大学不適応感の因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行ったところ,2項目(逆転項目)以外は大久保ら(2003)と同様の因子構造が確認された。α係数は第1因子.92,第2因子.93,第3因子.84,第4因子.92であった。
(2)不安の頻度
4月時点の「不安有」群は57名(28.9%),「不安無」群は128名(65.0%),欠損値12名(6.1%)であった。10ヵ月後の調査については不安の各項目に関して“よくあった”または“ときどきあった”と回答した者を「不安有」群,“あまりなかった”または“全くなかった”と回答した者を「不安無」群として分類したところ,「不安有」は学業148名(75.1%),友人関係83名(42.1%),家族関係28名(14.2%),将来・就職130名(66.0%),心身の健康61名(31.0%)であった。人間関係に関する不安よりも学業や就職に関する不安を感じる者が多い様子がうかがわれた。
(3)不安と大学適応感との関連
4月時点の不安の有無による大学適応感の差を調べたところ,有意差は示されなかった。入学直後の不安の有無はその後の適応には関連しないことが示唆される。10ヶ月後の不安については,大学適応感に差がみられた。
ⅰ)「学業」の不安:課題・目的の存在(t(193)=-2.77,p<.01)と拒絶感の無さ(t(192)=-2.23 p<.05)に差が示された。
ⅱ)「友人関係」の不安:居心地のよさ(t(192)=-3.69,p<.001),被信頼・受容感(t(193)=-2.19,p<.05),拒絶感の無さ(t (192)=-3.66,p<.001)に差が示された。
ⅲ)「家族関係」の不安:被信頼・受容感(t(192)=-2.46,p <.05),課題・目的の存在(t(193)=-3.09,p<.01),拒絶感の無さ(t (192)=-3.19, p <.01)に差が示された。
ⅳ)「将来・就職」の不安:居心地のよさ(t(191)=-3.05, p <.01),被信頼・受容感(t (192)=-2.00,p <.05),拒絶感の無さ(t (192)=-3.77, p <.001)に差が示された。
ⅴ)「心身の健康」の不安:居心地のよさ(t(191)=-3.46,p<.01),課題・目的の存在(t(193)=-3.00,p<.01),拒絶感の無さ(t(192)=-3.91,p<.001)に差が示された。
「学業」「友人関係」「家族関係」「将来・就職」「心身の健康」に関する各不安は,大学適応感4因子のいずれかと関連し,不安の頻度が高いと大学適応感は低かった。「拒絶感のなさ」はすべての不安と関連しており,多くの不安を抱える学生は周囲からの拒絶感を感じやすいことが示唆される。
大学適応感を高める上では様々な不安に対する多面的な支援が必要と考えられる。