The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PE(01-80)

ポスター発表 PE(01-80)

Sun. Oct 8, 2017 1:30 PM - 3:30 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:30 PM - 3:30 PM

[PE61] ロールレタリングの継続的施行が怒りの変容に及ぼす影響

想定する他者の組み合わせによる効果の比較を通して

金築智美1, 金築優#2 (1.東京電機大学, 2.法政大学)

Keywords:ロールレタリング, 怒り, 想定する他者

目   的
 特性怒りが高い大学生は,心理社会的な問題を呈しやすい。そのため,過度に高い特性怒りは,援助対象となりうる。また,怒りへの介入を施す際には,その誘発因の約9割は人であり,怒りそのものが対人関係上の問題を生じさせやすい(増田ら,2005)点を踏まえ,介入要素の中に,対人関係上の視点を取り入れる必要性がある。
 対人関係の視点を考慮した介入法の一つにロールレタリング(以下RL)がある。RLとは,空椅子の技法(Perls, 1969)を援用する形で考案された書記的方法であり,自己と想定する他者との間で,架空の手紙のやり取りを行う方法である(春口,1987)。金築・金築(2016)は,特性怒りの高い大学生にRLを4回行い,その長期的効果を検証している。その際に,RLの効果を規定する一要因である「誰に対して手紙を書くのか?」といった手紙を書く自己と想定する他者との関係性に着目し,2種の異なるタイプの想定する他者,すなわち,実際に怒りを感じた相手に対してRLを行う怒り対象RLか,自身にとって受容的な内在他者に対してRLを行う受容他者RLかによって,その効果の違いを比較している。その結果,怒り対象RLでは,怒りの反芻と特性怒りの変容が示された。一方,受容他者RLは,想定した他者の視点に立った際に感じる優しさの程度が高かった。既述の通り,想定する他者の違いで,怒りの諸側面への効果の現れ方が異なることが示唆された。よって,想定する他者を組み合わせたRLを施行することで,怒りの変容及び諸側面に対する相乗効果が期待される。そこで本研究では,金築・金築(2016)の知見を鑑み,怒りの変容を目指す継続的なRLを行う際に,効果の高かった怒り対象RL単独の場合(以下,怒り対象RL群)と異なるタイプのRLを組み合わせた場合(以下,組み合わせRL群)の効果の違いを,比較・検討することを目的とする。
方   法
実験参加者:首都圏大学生164名(男性136名,女性28名,19.20歳,SD=1.06)を対象に,特性怒り(鈴木ら,2001)を実施した。その中から,特性怒りの平均値(M=21)以上の者に実験参加の依頼を行い,承諾を得た者26名を3つの群(怒り対象RL群8名,組み合わせRL群8名,統制群10名)に振り分け,個別に実験を行った。
測定尺度: (1)状態怒り(鈴木ら,2001),(2)怒りの自己陳述尺度(ASSQ; 増田ら,2005):“他者からの不当な扱い(不当な扱い)”“敵意に満ちた考え(敵意)”“報復の正当化(報復)”“自己への叱責(自己叱責)”“他者への非難(他者非難)”の5つの下位尺度から成る。
実験手続き: 対人場面での怒り喚起場面5つを同定させ,プリテスト(プリ)を実施した。RL群には,怒りの問題性に関する心理教育を行い,RLの具体的な方法や効果について説明した。その後,2週間でRL(往信と返信が各10分)を4回実施した。想定する他者は,怒り対象RL群には「怒り喚起場面で怒りを感じた相手」を,組み合わせRL群には,1,2回は怒り対象RL群と同様に選定した他者を,3,4回は「自身の気持ちを優しく理解してくれて,温かく支えてくれた受容他者一人」を選定させた。その後,実験直後のポストテスト(ポスト)の査定を行った。なお,本研究の実施前に,第一著者が所属する機関のヒト生命研究倫理委員会の承認を得た。
結果と考察
 各尺度について介入条件×段階の2要因の分散分析を行った。ここでは,有意な結果が得られた主なものに限定する。状態怒りとASSQの自己叱責を除く下位尺度のうち,報復では交互作用に有意傾向(p<.10)が,それ以外では交互作用が有意であった(状態怒りはp<.05,それ以外はp<.01)。下位検定の結果(有意水準は5%),両RL群は,プリからポストにかけて有意に状態怒り,不当な扱い,他者非難が低減しており,ポストでは,統制群と比して有意に低かった。敵意は,組み合わせRL群でプリからポストにかけて有意に低減しており,ポストでは,両RL群とも統制群より有意に低かった。報復は,両RL群ともプリからポストで有意に低減していたが,ポストでは組み合わせRL群が統制群より有意に低かった。単発のRLでは,状態怒りの変容は認められなかったが(金築・金築,2015),RLを継続的に行うことで,状態怒りが低減したことから,怒りの変容にはRLを持続的に実施することが重要であることが示唆された。また,認知的側面である自己陳述の内容によって,2つのRL群の効果の現れ方に違いが見られた。さらに,自己叱責のみ変容がなかったことから,本研究で行ったRLは,対他的な認知を低減するのに適しているといえよう。想定する他者を組み合わせることでも,怒りの変容に効果が得られた点は本研究の成果であるが,今後はRLの実施プロセスのどの時点で変容するかを調べる必要がある。
引用文献
金築智美・金築 優(2016).ロールレタリングの継続的施行が怒りの長期的変化に及ぼす影響‐想定する他者の違いに着目して‐ 役割交換書簡法・ロールレタリング学会第1回大会発表論文集,12-15.
謝   辞
 本研究は文部科学省科学研究費(課題番号:26780397)の補助を受けて行われた。