The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PE(01-80)

ポスター発表 PE(01-80)

Sun. Oct 8, 2017 1:30 PM - 3:30 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:30 PM - 3:30 PM

[PE63] 特別支援学校におけるキャリア発達支援の研究(2)

社会性発達を促す観点から

榊慶太郎1, 今林俊一2 (1.鹿児島県立武岡台養護学校, 2.鹿児島大学)

Keywords:社会性発達, キャリア発達支援, 特別支援学校

目   的
 筆者らは,障害者が一般就労を目指し,就労を継続するために必要な力の要素について,障害の種類や程度など多くの観点から検討を行った。その結果,①日常生活を送る上で必要な基盤となる「健康管理や基本的生活習慣,マナー」(生活基盤力),②社会性の発達を促進し生活意欲や働く意欲を支える基盤となる「自己効力感,ソーシャルスキル,レジリエンス」(以下,社会性発達の三要素),③一般就労の機会や就労継続の可能性を広げるための「職業適性,専門的な知識・技能」(就労継続力)の三つの枠組みで捉えられていることが明らかにされた。
 そこで,本研究では社会性発達の三要素に焦点を当て,特別支援学校の教員を対象に,毎日の教育活動における社会性発達の三要素の指導・支援場面に関する機会の認知度を把握することを目的とする。
方   法
調査協力者:K県立A特別支援学校教員67人(小学部27人,中学部16人,高等部24人)(教職歴5年未満14人,5~10年未満13人,10~20年未満19人,20年以上21人)調査時期:2017年1月 調査内容:毎日の教育活動において「社会性発達の三要素(自己効力感,ソーシャルスキル,レジリエンス)の育成につながる学習内容や場面があると思うか」という教師一人一人の指導・支援場面の認知度について,「あると思わない=1」から「あると思う=5」の5件法で回答を求めた。
結   果
 学部ごとと教職歴ごとに分けて,平均値及び標準偏差を算出した(Table 1及びTable 2)。その結果,特別支援学校全体で最も平均値が高かったのは「自己効力感」の4.16で,最も平均値が低かったのは「レジリエンス」の3.73であった。学部ごとと教職歴ごとでもレジリエンスの平均値は最も低く,標準偏差の値も学部ごとで1.15~1.25,教職歴で0.82~1.35と「自己効力感」「ソーシャルスキル」と比べて大きかった。また,学部や教職歴の違いで認知度について差があるか調べるために分散分析を行った。学部では,社会性発達の三要素全てにおいて主効果は認められなかった。教職歴では,自己効力感とソーシャルスキルは,主効果は認められなかったが,レジリエンスについては主効果が認められた。主効果の認められたレジリエンスについて多重比較をした結果,5年未満と10~20年未満及び5年未満と20年以上との関係において有意差が認められた。
 さらに,教師一人一人の社会性発達の三要素間の指導・支援場面の認識の傾向を調べる目的で,クラスター分析(Ward法)を行い,デンドログラムとデータを比較・分析した結果,三つのクラスターに分類することができた。それぞれのクラスターの特徴は,クラスターⅠ(43人)は,社会性発達の三要素の指導・支援場面について「ある」と肯定的に認知している。クラスターⅡ(12人)は,社会性発達の三要素の指導・支援場面は,やや否定的に認知している。クラスターⅢ(12人)は,自己効力感とソーシャルスキルの指導・支援場面は「ある」と肯定的に認知しているが,レジリエンスについては否定的に認知している。

考   察
 指導・支援場面の認知度について,「自己効力感」と「ソーシャルスキル」については学部や教職歴による差はないが,「レジリエンス」は,教職歴による違いがあり,教職歴5年未満で認知度が低いことが分かった。また,クラスター分析の結果から,教師一人一人の社会性発達の三要素の認知度の傾向については,三要素とも肯定的に認知しているグループや,やや否定的に認知しているグループの存在が明らかにされた。一方で,「自己効力感」と「ソーシャルスキル」は肯定的に「レジリエンス」を否定的に認知しているグループのあることも分かった。これらのことから,同じ教育活動を行っていても教師一人一人の指導・支援の意図にズレがある可能性が示唆された。