13:30 〜 15:30
[PE65] 弱視学生支援サービスに対する健常学生の意識に及ぼす個人要因の影響
キーワード:障害学生支援, 視覚障害, 弱視
問題と目的
弱視学生が大学生活を円滑に送るためには障害学生支援が必要となる。しかし,弱視学生の中には支援を受けることに対する周囲の反応を危惧し,援助要請に躊躇する者も多い。彼らが援助要請を行うためには,どのような人がどのような支援内容を受け入れやすいのかを解明し,情報提供することが必要である。そこで本研究では,弱視学生支援サービスに対する健常学生の意識を個人要因との関係から検討した。
方 法
1.参加者と調査手続き
201X年9月~12月の間に個別留置き形式による質問紙調査を複数の大学で実施した。有効回答は418名(男性:172名,女性:246名),平均年齢は20.04歳(SD=1.81)であった。なお,本研究は愛知教育大学の研究倫理委員会の承認を得て行った。
2.調査内容
(1)支援項目:弱視学生支援サービスを先行研究(相羽ら, 2016; 河内, 2002)から収集し,支援項目(31項目)を作成した。参加者には同性,同学年の弱視学生(視覚障害のために眼鏡やコンタクトの矯正ができず,外出するときは遠くの看板が見えなかったり,読み書きするときは虫眼鏡などの拡大レンズを使ったりする人)が各支援項目の内容を大学に求めたらどのように考えるのかを「全く適切ではない」~「非常に適切である」までの7件法で尋ねた。
(2)個人要因:会話(視覚障害者との会話経験の有無),友人(障害者の友人の有無),関心(弱視への関心の有無),職種(支援職希望/一般職希望)について尋ねた。
結果と考察
1.支援サービスに対する意識構造
全ての支援項目に主因子法による因子分析を行った。スクリ―法と解釈可能性から3因子を抽出し,プロマックス回転による分析を繰り返した(Table 1)。その結果,第Ⅰ因子は授業支援に関する内容(授業支援因子:11項目),第Ⅱ因子は成績評価に関する内容 (成績評価因子:8項目),第Ⅲ因子は組織的な支援に関する内容(組織支援因子:7項目)が採択され,弱視学生支援サービスは多次元構造であることが確認された。
2.健常学生の意識に及ぼす個人要因の影響
各因子に対応した支援サービス尺度を構成し,それぞれの尺度得点(総点)を従属変数に,各個人要因(会話・友人・関心・職種)を独立変数とする分散分析を行った。全ての分析で交互作用はみられず,授業支援尺度では関心(F(1,377)=5.17, p<.05)と職種(F(1,377)=8.41, p<.01),成績評価尺度でも関心(F(1,377)=10.99, p<.01)と職種(F(1,377)=3.95, p<.05),組織支援尺度でも関心(F(1,377)=4.02, p<.05)と職種(F(1,377)=9.05, p<.01)の主効果が見出され,いずれも関心有群が無群よりも得点が高く,支援職群が一般職群よりも得点が高く,受容的であった。
一方,組織支援尺度では,会話(F(1,377)=5.28, p<.05)の主効果も見出され,経験有群が無群よりも得点が高く,受容的であった。組織支援は全ての支援サービスに関わる基礎的環境であり,その意識を前向きにすることは重要である。本研究の結果は弱視学生との会話(障害開示や援助要請等を含む)がそれに寄与することを示していた。
今後,弱視学生支援サービスを拡充するためには,3つの支援内容ごとに理解啓発活動が必要であり,いずれの場合も弱視学生に関心を示し,支援職を志す学生にアプローチすることが有効といえる。ただし,組織支援の場合は,弱視学生からの情報発信が有効と示唆された。
引用文献
相羽大輔・奈良里紗 (2016) 援助要請をした弱視学生に提供された支援サービス内容の分析. 第54回日本特殊教育学会発表論文集, P3-42.
河内清彦 (2002) 視覚障害学生の学業支援サービスに対する大学生の意識構造 : 自己効力感,視覚障害者観,ボランティアイメージおよび支援意欲との関連. 特殊教育学研究, 39(4), 33-45.
付 記
本研究はJSPS科研費(若手研究B:15K17422)の助成を受けた。
弱視学生が大学生活を円滑に送るためには障害学生支援が必要となる。しかし,弱視学生の中には支援を受けることに対する周囲の反応を危惧し,援助要請に躊躇する者も多い。彼らが援助要請を行うためには,どのような人がどのような支援内容を受け入れやすいのかを解明し,情報提供することが必要である。そこで本研究では,弱視学生支援サービスに対する健常学生の意識を個人要因との関係から検討した。
方 法
1.参加者と調査手続き
201X年9月~12月の間に個別留置き形式による質問紙調査を複数の大学で実施した。有効回答は418名(男性:172名,女性:246名),平均年齢は20.04歳(SD=1.81)であった。なお,本研究は愛知教育大学の研究倫理委員会の承認を得て行った。
2.調査内容
(1)支援項目:弱視学生支援サービスを先行研究(相羽ら, 2016; 河内, 2002)から収集し,支援項目(31項目)を作成した。参加者には同性,同学年の弱視学生(視覚障害のために眼鏡やコンタクトの矯正ができず,外出するときは遠くの看板が見えなかったり,読み書きするときは虫眼鏡などの拡大レンズを使ったりする人)が各支援項目の内容を大学に求めたらどのように考えるのかを「全く適切ではない」~「非常に適切である」までの7件法で尋ねた。
(2)個人要因:会話(視覚障害者との会話経験の有無),友人(障害者の友人の有無),関心(弱視への関心の有無),職種(支援職希望/一般職希望)について尋ねた。
結果と考察
1.支援サービスに対する意識構造
全ての支援項目に主因子法による因子分析を行った。スクリ―法と解釈可能性から3因子を抽出し,プロマックス回転による分析を繰り返した(Table 1)。その結果,第Ⅰ因子は授業支援に関する内容(授業支援因子:11項目),第Ⅱ因子は成績評価に関する内容 (成績評価因子:8項目),第Ⅲ因子は組織的な支援に関する内容(組織支援因子:7項目)が採択され,弱視学生支援サービスは多次元構造であることが確認された。
2.健常学生の意識に及ぼす個人要因の影響
各因子に対応した支援サービス尺度を構成し,それぞれの尺度得点(総点)を従属変数に,各個人要因(会話・友人・関心・職種)を独立変数とする分散分析を行った。全ての分析で交互作用はみられず,授業支援尺度では関心(F(1,377)=5.17, p<.05)と職種(F(1,377)=8.41, p<.01),成績評価尺度でも関心(F(1,377)=10.99, p<.01)と職種(F(1,377)=3.95, p<.05),組織支援尺度でも関心(F(1,377)=4.02, p<.05)と職種(F(1,377)=9.05, p<.01)の主効果が見出され,いずれも関心有群が無群よりも得点が高く,支援職群が一般職群よりも得点が高く,受容的であった。
一方,組織支援尺度では,会話(F(1,377)=5.28, p<.05)の主効果も見出され,経験有群が無群よりも得点が高く,受容的であった。組織支援は全ての支援サービスに関わる基礎的環境であり,その意識を前向きにすることは重要である。本研究の結果は弱視学生との会話(障害開示や援助要請等を含む)がそれに寄与することを示していた。
今後,弱視学生支援サービスを拡充するためには,3つの支援内容ごとに理解啓発活動が必要であり,いずれの場合も弱視学生に関心を示し,支援職を志す学生にアプローチすることが有効といえる。ただし,組織支援の場合は,弱視学生からの情報発信が有効と示唆された。
引用文献
相羽大輔・奈良里紗 (2016) 援助要請をした弱視学生に提供された支援サービス内容の分析. 第54回日本特殊教育学会発表論文集, P3-42.
河内清彦 (2002) 視覚障害学生の学業支援サービスに対する大学生の意識構造 : 自己効力感,視覚障害者観,ボランティアイメージおよび支援意欲との関連. 特殊教育学研究, 39(4), 33-45.
付 記
本研究はJSPS科研費(若手研究B:15K17422)の助成を受けた。