13:30 〜 15:30
[PE73] 中学生のスクールカーストといじめの関連
いじめ被害と被害後の行動
キーワード:いじめ, スクールカースト
問題と目的
中学生以降は,生徒は友だちグループと呼ばれるような小集団で行動することが多く(e.g., 石田・小島, 2009),近年ではそのグループ間に地位格差が生まれ,いじめや不適応などの様々な問題の誘因になることが指摘されている(堀, 2015;森口, 2007;鈴木, 2012)本研究では,鈴木(2012)を援用し,スクールカーストを「学級内でのグループ間の地位格差」と定義して議論を進める。
スクールカーストと学校適応の問題は水野・太田(2016)や鈴木(2012)の一部で実証的に検証され,所属するグループの地位が低い生徒ほど学校適応が低いことが明らかとなっている。しかし,いじめに関しては事例や経験的な論考しか存在せず,実証的研究は存在しない(堀, 2015;森口, 2007)。また,グループの地位が低い生徒は自己主張が弱く,上位グループの生徒に対して消極的に振る舞う(鈴木, 2012)ことが知られている。このことから,いじめを受けた際にグループの地位が低いと相手にやめるように説得しにくくなるとが考えられるが,この点に関しても実証的に検証されていない。
そこで,本研究では中学生における友だちグループ間の地位といじめ被害の関連と,いじめを受けた際にグループの地位によって行動がどう変わるのかを検討する。それによって,「スクールカースト」といじめの関係を明らかにすることが本研究の目的である。
方 法
調査協力者
A県B市(小規模都市)の公立校に在籍する中学1―3年生の2384名
質問項目
いじめ被害 加藤他(2016)を参考に,8項目5件法(1点:全くない―5点:11回以上ある)で尋ねた(M=1.274, SD=.483, α=82)。
グループ間の地位 水野他(2015)を用いた。友だちグループがあると回答した生徒に,「私の仲良しグループはクラスの中で中心的な存在だと思う」と尋ね,5件法(1点:全くそう思わない―5点:とてもそう思う)で回答を求めた(M=3.062, SD=.994)。
いじめ被害後の行動 いじめを1回でも受けたことのある生徒に「相手にやり返した」,「先生に相談した」など被害後の行動6項目の回答を求めた(なし=0, ある=1)。
結 果
いじめとの関連
いじめ被害の得点は大きく歪んでいた(Figure1)ため,性別と学年を統制変数,いじめ被害を従属変数,グループ間の地位を独立変数とするポアソン回帰分析を行った。その結果,グループ間の地位は有意傾向で負の関連(b=-.017, SE=.009, eb= .983, p<.10)がみられた (R2DEV=.026)。
いじめ被害後の行動との関連
次に,性別と学年を統制変数,グループ間の地位を独立変数,被害後の行動を従属変数とするロジスティック回帰分析を行った。その結果,「相手にやり返した」(b=.280, SE=.083, eb=1.323, p<.001)と「何もしなかった」(b=-.164, SE=.066, eb=0.848, p<.05)で有意な関連がみられた(Cox-Snell’s R2は順に.095, .026)。
考 察
以上の結果から,グループ間の地位が低いほどいじめを受けやすいことが明らかとなった。また,いじめを受けた生徒で,グループの地位が低い生徒ほど,相手にやり返せず,何もしない傾向にあることが明らかとなった。しかし,リスク比とオッズ比に着目すると,どれも係数の値が大きいとは言えなかった。このことから,スクールカーストといじめは関連するが,実質的には関連が弱く,また生徒がいじめを受けた際にも,グループの地位によってその後の行動はあまり変わらないものだったと考えられる。
中学生以降は,生徒は友だちグループと呼ばれるような小集団で行動することが多く(e.g., 石田・小島, 2009),近年ではそのグループ間に地位格差が生まれ,いじめや不適応などの様々な問題の誘因になることが指摘されている(堀, 2015;森口, 2007;鈴木, 2012)本研究では,鈴木(2012)を援用し,スクールカーストを「学級内でのグループ間の地位格差」と定義して議論を進める。
スクールカーストと学校適応の問題は水野・太田(2016)や鈴木(2012)の一部で実証的に検証され,所属するグループの地位が低い生徒ほど学校適応が低いことが明らかとなっている。しかし,いじめに関しては事例や経験的な論考しか存在せず,実証的研究は存在しない(堀, 2015;森口, 2007)。また,グループの地位が低い生徒は自己主張が弱く,上位グループの生徒に対して消極的に振る舞う(鈴木, 2012)ことが知られている。このことから,いじめを受けた際にグループの地位が低いと相手にやめるように説得しにくくなるとが考えられるが,この点に関しても実証的に検証されていない。
そこで,本研究では中学生における友だちグループ間の地位といじめ被害の関連と,いじめを受けた際にグループの地位によって行動がどう変わるのかを検討する。それによって,「スクールカースト」といじめの関係を明らかにすることが本研究の目的である。
方 法
調査協力者
A県B市(小規模都市)の公立校に在籍する中学1―3年生の2384名
質問項目
いじめ被害 加藤他(2016)を参考に,8項目5件法(1点:全くない―5点:11回以上ある)で尋ねた(M=1.274, SD=.483, α=82)。
グループ間の地位 水野他(2015)を用いた。友だちグループがあると回答した生徒に,「私の仲良しグループはクラスの中で中心的な存在だと思う」と尋ね,5件法(1点:全くそう思わない―5点:とてもそう思う)で回答を求めた(M=3.062, SD=.994)。
いじめ被害後の行動 いじめを1回でも受けたことのある生徒に「相手にやり返した」,「先生に相談した」など被害後の行動6項目の回答を求めた(なし=0, ある=1)。
結 果
いじめとの関連
いじめ被害の得点は大きく歪んでいた(Figure1)ため,性別と学年を統制変数,いじめ被害を従属変数,グループ間の地位を独立変数とするポアソン回帰分析を行った。その結果,グループ間の地位は有意傾向で負の関連(b=-.017, SE=.009, eb= .983, p<.10)がみられた (R2DEV=.026)。
いじめ被害後の行動との関連
次に,性別と学年を統制変数,グループ間の地位を独立変数,被害後の行動を従属変数とするロジスティック回帰分析を行った。その結果,「相手にやり返した」(b=.280, SE=.083, eb=1.323, p<.001)と「何もしなかった」(b=-.164, SE=.066, eb=0.848, p<.05)で有意な関連がみられた(Cox-Snell’s R2は順に.095, .026)。
考 察
以上の結果から,グループ間の地位が低いほどいじめを受けやすいことが明らかとなった。また,いじめを受けた生徒で,グループの地位が低い生徒ほど,相手にやり返せず,何もしない傾向にあることが明らかとなった。しかし,リスク比とオッズ比に着目すると,どれも係数の値が大きいとは言えなかった。このことから,スクールカーストといじめは関連するが,実質的には関連が弱く,また生徒がいじめを受けた際にも,グループの地位によってその後の行動はあまり変わらないものだったと考えられる。