4:00 PM - 6:00 PM
[PF05] 養護教諭の目を通した学校における自傷児童生徒への対応
心の成長による自傷からの脱却
Keywords:自傷行為, 児童生徒, 養護教諭
問 題
自傷行為に関する研究はおもに1970年代以降に始まり,近年では国内外で活発に研究が進められ,中高生世代の自傷の実態やその背景についてはさまざまなことが明らかになりつつある。
自傷には,友人関係や教室内集団における非充実感(穴水・田中, 2010)等との関連がみられる。自己否定感や不安感の強さ(山口他,2013;山口他,2014),自尊心の低さ(松本・今村,2009),過活動(Izutsu et al., 2006)等,さまざまな心理的要因との関連性も指摘されている。ときには傷をきっかけに児童生徒対応をする養護教諭ばかりでなく,自傷への対応はしていないとしても,自傷児童生徒にかかわる養護教諭以外の教員の多くは,自傷に関連する諸問題にアプローチしているものと考えられる。そのため,特に教員自身は意識していないにせよ,児童生徒に対する教員のかかわりが,彼らが自傷をやめるきっかけや一因にもなっている場合もあるのではないかと考えた。
本研究では,自傷行為のある児童生徒を養護教諭がどのように理解・対応し,他の教員と連携しているのかを把握し,学校現場における自傷対応のあり方を検討することを目的とする。具体的には,養護教諭は,①自傷児童生徒にはどのような特徴があると考え,理解しているのか。②自傷児童生徒にどのような対応をしているのか。③校内連携は児童生徒の自傷にどのように影響しているのかについて検討する。
方 法
1 調査協力者
小中高等学校,特別支援校に勤務する養護教諭10名(経験年数8年~38年)。このうち特別支援校勤務者を含めた6名は他校種経験をもつ。
2 調査時期及び手続き
2016年7月~2017年4月にかけて,半構造的インタビューを実施。グラウンデッドセオリーアプローチにて分析。
結果と考察
調査対象者が対応した27事例のうち,かかわりが終了した時点で自傷をしていなかったとみられるのは3分の2となる18事例だった。本人や本人を取り巻く状況も好転したとみられるのは約半数の13事例だった。
養護教諭が認知した自傷児童生徒が抱える問題としては,〈悩むことや考えを深めることをしない/できない〉一群と,それに相反した,周囲に較べて〈深く悩み考える〉という一群もみられた。しかしいずれにも共通して〈自己肯定感・自己存在感の低さ〉〈自信のなさ〉が示された。
次に教職員の対応に関しては,特に人間関係で躓いた自傷児童生徒が,学校の教職員とのかかわりの中で成長し,自傷がおさまっていくようすがうかがえた。具体的には,養護教諭は〈傾聴〉〈受容的なかかわり〉〈児童生徒を認め,褒める〉等のかかわりをしていた。養護教諭が〈傷の手当て〉をする際には,〈身体の傷よりも心の傷を重視〉した会話をしていた。
養護教諭が連携していた教職員には,ホームルーム担任,教科担任,部活動顧問の他,図書室担当の教員や技術職員がいた。彼らは自傷児童生徒に対して〈受容的なかかわり〉〈児童生徒を認め,褒める〉他,自己肯定感にもつながる学力の向上を目的として〈勉強を教え〉,経験を積ませる目的で〈学校外での活動に参加させる〉などを通して,自分自身や他者とのかかわり等,さまざまなことについて考えさせ,ときには教え諭すような〈対話〉をしていた。通常教室で学ぶ,自閉傾向のある児童は,学校生活の中で社会性を身につけることにより,自傷や自傷以外の問題行動も落ち着いていく可能性が示された。
この他,小中学校においては,担任や養護教諭が自傷の事実を保護者に伝え,特に家庭での対応について助言することが児童生徒を取り巻く状況の好転に影響を与えていた。また,小中学校では養護教諭の異動,小学校では担任が替わることが,問題行動の予防や発見の遅れにつながるリスクとなる可能性があることとが示唆された。
自傷行為に関する研究はおもに1970年代以降に始まり,近年では国内外で活発に研究が進められ,中高生世代の自傷の実態やその背景についてはさまざまなことが明らかになりつつある。
自傷には,友人関係や教室内集団における非充実感(穴水・田中, 2010)等との関連がみられる。自己否定感や不安感の強さ(山口他,2013;山口他,2014),自尊心の低さ(松本・今村,2009),過活動(Izutsu et al., 2006)等,さまざまな心理的要因との関連性も指摘されている。ときには傷をきっかけに児童生徒対応をする養護教諭ばかりでなく,自傷への対応はしていないとしても,自傷児童生徒にかかわる養護教諭以外の教員の多くは,自傷に関連する諸問題にアプローチしているものと考えられる。そのため,特に教員自身は意識していないにせよ,児童生徒に対する教員のかかわりが,彼らが自傷をやめるきっかけや一因にもなっている場合もあるのではないかと考えた。
本研究では,自傷行為のある児童生徒を養護教諭がどのように理解・対応し,他の教員と連携しているのかを把握し,学校現場における自傷対応のあり方を検討することを目的とする。具体的には,養護教諭は,①自傷児童生徒にはどのような特徴があると考え,理解しているのか。②自傷児童生徒にどのような対応をしているのか。③校内連携は児童生徒の自傷にどのように影響しているのかについて検討する。
方 法
1 調査協力者
小中高等学校,特別支援校に勤務する養護教諭10名(経験年数8年~38年)。このうち特別支援校勤務者を含めた6名は他校種経験をもつ。
2 調査時期及び手続き
2016年7月~2017年4月にかけて,半構造的インタビューを実施。グラウンデッドセオリーアプローチにて分析。
結果と考察
調査対象者が対応した27事例のうち,かかわりが終了した時点で自傷をしていなかったとみられるのは3分の2となる18事例だった。本人や本人を取り巻く状況も好転したとみられるのは約半数の13事例だった。
養護教諭が認知した自傷児童生徒が抱える問題としては,〈悩むことや考えを深めることをしない/できない〉一群と,それに相反した,周囲に較べて〈深く悩み考える〉という一群もみられた。しかしいずれにも共通して〈自己肯定感・自己存在感の低さ〉〈自信のなさ〉が示された。
次に教職員の対応に関しては,特に人間関係で躓いた自傷児童生徒が,学校の教職員とのかかわりの中で成長し,自傷がおさまっていくようすがうかがえた。具体的には,養護教諭は〈傾聴〉〈受容的なかかわり〉〈児童生徒を認め,褒める〉等のかかわりをしていた。養護教諭が〈傷の手当て〉をする際には,〈身体の傷よりも心の傷を重視〉した会話をしていた。
養護教諭が連携していた教職員には,ホームルーム担任,教科担任,部活動顧問の他,図書室担当の教員や技術職員がいた。彼らは自傷児童生徒に対して〈受容的なかかわり〉〈児童生徒を認め,褒める〉他,自己肯定感にもつながる学力の向上を目的として〈勉強を教え〉,経験を積ませる目的で〈学校外での活動に参加させる〉などを通して,自分自身や他者とのかかわり等,さまざまなことについて考えさせ,ときには教え諭すような〈対話〉をしていた。通常教室で学ぶ,自閉傾向のある児童は,学校生活の中で社会性を身につけることにより,自傷や自傷以外の問題行動も落ち着いていく可能性が示された。
この他,小中学校においては,担任や養護教諭が自傷の事実を保護者に伝え,特に家庭での対応について助言することが児童生徒を取り巻く状況の好転に影響を与えていた。また,小中学校では養護教諭の異動,小学校では担任が替わることが,問題行動の予防や発見の遅れにつながるリスクとなる可能性があることとが示唆された。