4:00 PM - 6:00 PM
[PF06] 中学生の食生活と家族関係および精神的健康との因果関係の検討
夕食場面における男女の差異に着目して
Keywords:食生活要素, 家族関係, 精神的健康
問題と目的
近年,核家族化や共働きなどの生活スタイルの変化に伴い,家族と一緒に食事をする共食(「Family Meals」)の重要性が指摘されている。こうした観点から研究としては,家族との共食頻度の高さが家族関係を高め(Franko et al., 2008),子どもの精神的健康にも影響している(Musick & Meier, 2012)ことが示唆されている。しかしながら,共食頻度以外の子どもの食生活を構成する要素(食生活要素)と家族関係および精神的健康との因果関係の検証はあまり行われていない。そこで本研究では,中学生を対象に短期縦断調査を実施することにより,家族との時間を比較的長く持つことができる夕食場面における食生活要素が,家族関係や精神的健康に影響するメカニズムを男女の差異に着目して検証する。
方 法
<調査対象者・調査時期>岐阜県内の公立中学校(2校)に通う生徒を対象に質問紙による調査を実施し,欠損値のない525名(1年生181名,2年生184名,3年生160名:男子267名,女子258名)を分析対象者とした。1回目の調査は2016年5月に,2回目の調査は2016年9~10月に実施。
<調査内容>食生活要素については,平日の朝食と夕食に関する献立内容,共食状況,手伝い,会話についての回答を求めた。共食感については,足立(2010)を改変し,「家族と一緒に食事をすることは楽しい」「できるだけ家族と一緒に食事がしたい」の2項目を4件法で尋ねた。家族関係については,家族機能測定尺度(草田・岡堂,1993)のうちの凝集性尺度10項目の回答を求めた。精神的健康に関しては,生活満足度(吉武,2010)7項目と子ども版自己記入式抑うつ尺度(村田・清水・森・大島,1996)18項目の回答を求めた。
結果と考察
夕食場面における食生活要素(献立数,共食人数,手伝い,会話)と共食感,家族関係および精神的健康との因果関係の検討を行った。学年を統制し,交差遅延効果モデルを用いて共分散構造分析を行った。その結果,食生活要素については,手伝いと会話に関連がみられた。家族関係との関連では,男子については,手伝い(T1)から会話(T2)へ,会話(T1)から共食感(T2)と家族関係(T2)へ,共食感(T1)から家族関係(T2)への有意な正のパスがみられた。また男女ともに,家族関係(T1)から会話(T2)と共食感(T2)への有意な正のパスがみられた(Figure1)。
精神的健康との関連では,男子については,手伝い(T1)から会話(T2)へ,会話(T1)から共食感(T2)への有意な正のパスが,共食感(T1)から抑うつ(T2)へ有意な負のパスがみられた。また男女ともに,共食感(T1)から会話(T2)と生活満足度(T2)への有意な正のパスがみられた。
以上の結果から,夕食場面における食生活要素から家族関係への影響に関しては,男子については確認されたが,女子については確認されなかった。食生活要素から精神的健康への影響に関しては,男子については生活満足度と抑うつで確認されたが,女子については生活満足度の一部でしか確認されなかった。このことから,男子にとって夕食は,家族関係や精神的健康の向上に有効な手段となり得るが,女子についてはあまり影響がみられないことが示唆された。
近年,核家族化や共働きなどの生活スタイルの変化に伴い,家族と一緒に食事をする共食(「Family Meals」)の重要性が指摘されている。こうした観点から研究としては,家族との共食頻度の高さが家族関係を高め(Franko et al., 2008),子どもの精神的健康にも影響している(Musick & Meier, 2012)ことが示唆されている。しかしながら,共食頻度以外の子どもの食生活を構成する要素(食生活要素)と家族関係および精神的健康との因果関係の検証はあまり行われていない。そこで本研究では,中学生を対象に短期縦断調査を実施することにより,家族との時間を比較的長く持つことができる夕食場面における食生活要素が,家族関係や精神的健康に影響するメカニズムを男女の差異に着目して検証する。
方 法
<調査対象者・調査時期>岐阜県内の公立中学校(2校)に通う生徒を対象に質問紙による調査を実施し,欠損値のない525名(1年生181名,2年生184名,3年生160名:男子267名,女子258名)を分析対象者とした。1回目の調査は2016年5月に,2回目の調査は2016年9~10月に実施。
<調査内容>食生活要素については,平日の朝食と夕食に関する献立内容,共食状況,手伝い,会話についての回答を求めた。共食感については,足立(2010)を改変し,「家族と一緒に食事をすることは楽しい」「できるだけ家族と一緒に食事がしたい」の2項目を4件法で尋ねた。家族関係については,家族機能測定尺度(草田・岡堂,1993)のうちの凝集性尺度10項目の回答を求めた。精神的健康に関しては,生活満足度(吉武,2010)7項目と子ども版自己記入式抑うつ尺度(村田・清水・森・大島,1996)18項目の回答を求めた。
結果と考察
夕食場面における食生活要素(献立数,共食人数,手伝い,会話)と共食感,家族関係および精神的健康との因果関係の検討を行った。学年を統制し,交差遅延効果モデルを用いて共分散構造分析を行った。その結果,食生活要素については,手伝いと会話に関連がみられた。家族関係との関連では,男子については,手伝い(T1)から会話(T2)へ,会話(T1)から共食感(T2)と家族関係(T2)へ,共食感(T1)から家族関係(T2)への有意な正のパスがみられた。また男女ともに,家族関係(T1)から会話(T2)と共食感(T2)への有意な正のパスがみられた(Figure1)。
精神的健康との関連では,男子については,手伝い(T1)から会話(T2)へ,会話(T1)から共食感(T2)への有意な正のパスが,共食感(T1)から抑うつ(T2)へ有意な負のパスがみられた。また男女ともに,共食感(T1)から会話(T2)と生活満足度(T2)への有意な正のパスがみられた。
以上の結果から,夕食場面における食生活要素から家族関係への影響に関しては,男子については確認されたが,女子については確認されなかった。食生活要素から精神的健康への影響に関しては,男子については生活満足度と抑うつで確認されたが,女子については生活満足度の一部でしか確認されなかった。このことから,男子にとって夕食は,家族関係や精神的健康の向上に有効な手段となり得るが,女子についてはあまり影響がみられないことが示唆された。