16:00 〜 18:00
[PF11] 褒められた経験が自尊感情およびやり抜く力に与える影響
キーワード:自尊感情, やり抜く力, 褒められ・叱られ経験
問 題
子供の頃の両親や教師との関わり経験は,人々の現在の心理特性とどのように結びついているのだろうか?本研究の目的は,現在の心理特性として自尊感情とやり抜く力(Grit)に焦点を合わせ,それぞれの心理特性に対して,子供の頃に褒められた経験あるいは叱られた経験がどのように影響を与えているのかを探索的に検討することにある。
方 法
調査会社クロスマーケティングを介して,成人1300名(男性650名,女性650名,平均年齢44.67歳)に回答を依頼した。調査対象者には,自尊感情の水準を測定するためのローゼンバーグの自尊感情尺度10項目(以下,RSE尺度; Rosenberg, 1965)とやり抜く力を測定するための尺度8項目(以下,Grit-S尺度; 西川,奥上 & 雨宮, 2015),そして小学生の頃から中学生の頃までに母親,父親,そして教師からよく褒められた経験があるか否か,またよく叱られた経験があるか否かを尋ねた。
結 果
信頼性係数 RSE尺度のα係数は0.85,Grit-S尺度のα係数は0.77であった。両尺度の得点の相関係数はr = 0.47であった。
褒められ・叱られ経験と心理特性の関係 母親,父親そして教師にかかわらず,よく褒められた経験があると回答した人たちの方が,ないと回答した人たちよりもRSE尺度の得点が高かった。叱られた経験については,その反対の結果――すなわち,よく叱られた経験がないと回答した人たちの方がRSE尺度の得点が高い――という結果であった。Grit-S尺度についても,RSE尺度と同様の結果――よく褒められた経験があると回答した人たちの方が,ないと回答した人たちよりもGrit-S尺度の得点が高いという結果――を得た。両親から叱られた経験との関係については,Grit-S尺度に関しては示されなかった。
考 察
よく褒められた経験がある人たちの方が自尊感情の得点ややり抜く力の得点が高いことを示す本研究の結果は,先行研究(例えば,井上,2015)や近年の国立青少年教育振興機構(2017)による調査データ等と一貫する結果である。ただし本調査における褒められ・叱られ経験の回答は,あくまで調査対象者の回想に頼らざるを得ないものである。したがって,現在の心理特性(例えば,自尊感情得点が高い)によって肯定的な経験の記憶がもたらされた(よく褒められた経験が想起されやすかった)可能性は否定できない。今後の研究では,縦断的データを収集するかたちで,本研究の知見の妥当性を確かめる作業が必要である。
子供の頃の両親や教師との関わり経験は,人々の現在の心理特性とどのように結びついているのだろうか?本研究の目的は,現在の心理特性として自尊感情とやり抜く力(Grit)に焦点を合わせ,それぞれの心理特性に対して,子供の頃に褒められた経験あるいは叱られた経験がどのように影響を与えているのかを探索的に検討することにある。
方 法
調査会社クロスマーケティングを介して,成人1300名(男性650名,女性650名,平均年齢44.67歳)に回答を依頼した。調査対象者には,自尊感情の水準を測定するためのローゼンバーグの自尊感情尺度10項目(以下,RSE尺度; Rosenberg, 1965)とやり抜く力を測定するための尺度8項目(以下,Grit-S尺度; 西川,奥上 & 雨宮, 2015),そして小学生の頃から中学生の頃までに母親,父親,そして教師からよく褒められた経験があるか否か,またよく叱られた経験があるか否かを尋ねた。
結 果
信頼性係数 RSE尺度のα係数は0.85,Grit-S尺度のα係数は0.77であった。両尺度の得点の相関係数はr = 0.47であった。
褒められ・叱られ経験と心理特性の関係 母親,父親そして教師にかかわらず,よく褒められた経験があると回答した人たちの方が,ないと回答した人たちよりもRSE尺度の得点が高かった。叱られた経験については,その反対の結果――すなわち,よく叱られた経験がないと回答した人たちの方がRSE尺度の得点が高い――という結果であった。Grit-S尺度についても,RSE尺度と同様の結果――よく褒められた経験があると回答した人たちの方が,ないと回答した人たちよりもGrit-S尺度の得点が高いという結果――を得た。両親から叱られた経験との関係については,Grit-S尺度に関しては示されなかった。
考 察
よく褒められた経験がある人たちの方が自尊感情の得点ややり抜く力の得点が高いことを示す本研究の結果は,先行研究(例えば,井上,2015)や近年の国立青少年教育振興機構(2017)による調査データ等と一貫する結果である。ただし本調査における褒められ・叱られ経験の回答は,あくまで調査対象者の回想に頼らざるを得ないものである。したがって,現在の心理特性(例えば,自尊感情得点が高い)によって肯定的な経験の記憶がもたらされた(よく褒められた経験が想起されやすかった)可能性は否定できない。今後の研究では,縦断的データを収集するかたちで,本研究の知見の妥当性を確かめる作業が必要である。