16:00 〜 18:00
[PF12] 学校適応の促進をめざしたソーシャルスキルトレーニングの実践
情動過程を伴った社会的情報処理モデルに基づく全校規模のアプローチ
キーワード:学校適応, 社会的情報処理, 全校規模
Lewis et al. (1998) は公立小学校において学校規模のソーシャルスキルトレーニング(SST)を実施し,直接的,予防的な介入を行うことで,頻発する小学生の問題行動が減少することを明らかにしている。国内の学校適応の促進を目指した予防的・開発的なSSTの実践研究においては,一部の学年での実施にとどまり,全校規模の研究はまだない。本研究では,情動過程を伴った社会的情報処理モデル(Lemerise & Arsenio, 2000)に基づき,児童の問題解決場面での認知的側面の特徴をアセスメントした結果と発達段階とを考慮した全校規模のSSTカリキュラムを開発し,実践した。
方 法
1. 対象と手続き
岐阜県内の小学校1校において,平成27年12月に小学校1~6年生の計382名を対象とした事前アセスメント(表情認知,手がかり-意図,敵意帰属バイアス,目標の明確化,反応構成,反応決定,反応的・道具的攻撃性)を行った。平成28年度1年生(男子36名・女子40名)については,4月に教師評価用の子どもの行動チェックリストTRF(Teacher’s Report Form; 井欄他,2001)の攻撃性の項目について児童個別に担任の回答を求めた。事後アセスメントとして,同様のものを平成28年7月に,フォローアップ測定として同年10月に1年生から6年生を対象に実施した。
2.SSTの実践内容
筆者が考案した内容(Table 1)を,全学年対象に4月から7月までの期間,各学級担任が週1回朝の活動(15分・計8回)で行うとともに,第一研究者が学級活動(45分・計6時間)で実施した。
結果と考察
2~6年生については,介入前,介入後,フォローアップ測定時(被験者内要因)における社会的情報処理指標および学校適応に関する指標の変化について,達成度,自己評価,他者評価の低・高群(被験者間要因)それぞれを要因に加えた2要因分散分析を行った。また,発達差を考慮し,低学年(2年生),中学年(3・4年生),高学年(5・6年生)に分けて分析を実施した。介入効果が確認された結果の一部は,Figure 1・2の通りである。1年生については,TRFの攻撃性の変化について同様の分析を行った。
道具的攻撃性では,達成度,自己評価,他者評価低・高群の全てにおいて,敵意帰属バイアスでは,中学年自己評価群別を除く全てにおいて,介入前より介入後及びフォローアップ測定時の得点が有意に低く,攻撃性が低下したことが分かった(p <.01)。反応的攻撃性では,介入前より介入後の得点が有意に低く攻撃性が低下したことが分かった(p <.05)。表情認知合計得点や手がかり-意図合計得点では,時期の主効果において介入前より介入後の得点が有意に高く(p <.05)介入実践の効果があったと考える。1年生については,介入前より介入後及びフォローアップ測定時の得点が有意(p <.01)に低く,介入後よりフォローアップ測定時の得点が有意(p <.01)に低かったことから,介入実践の効果が確認できた。反応的攻撃性,否定的な感情を表出せず行う主張的行動(P),表情認知の一部,手がかり-意図の一部など介入後の効果が確認できたが,フォローアップ測定時まで効果が維持できなかったものについては,介入実践の継続により改善が期待できるであろう。友好的目標設定では,中学年以上で介入後の効果が見られなかった。友好的目標設定は,その時々の友だちとの関係性に大きく影響されるものであるため,今後は友だちとの関係性を構築するSSTを継続することで改善の可能性があると考える。
方 法
1. 対象と手続き
岐阜県内の小学校1校において,平成27年12月に小学校1~6年生の計382名を対象とした事前アセスメント(表情認知,手がかり-意図,敵意帰属バイアス,目標の明確化,反応構成,反応決定,反応的・道具的攻撃性)を行った。平成28年度1年生(男子36名・女子40名)については,4月に教師評価用の子どもの行動チェックリストTRF(Teacher’s Report Form; 井欄他,2001)の攻撃性の項目について児童個別に担任の回答を求めた。事後アセスメントとして,同様のものを平成28年7月に,フォローアップ測定として同年10月に1年生から6年生を対象に実施した。
2.SSTの実践内容
筆者が考案した内容(Table 1)を,全学年対象に4月から7月までの期間,各学級担任が週1回朝の活動(15分・計8回)で行うとともに,第一研究者が学級活動(45分・計6時間)で実施した。
結果と考察
2~6年生については,介入前,介入後,フォローアップ測定時(被験者内要因)における社会的情報処理指標および学校適応に関する指標の変化について,達成度,自己評価,他者評価の低・高群(被験者間要因)それぞれを要因に加えた2要因分散分析を行った。また,発達差を考慮し,低学年(2年生),中学年(3・4年生),高学年(5・6年生)に分けて分析を実施した。介入効果が確認された結果の一部は,Figure 1・2の通りである。1年生については,TRFの攻撃性の変化について同様の分析を行った。
道具的攻撃性では,達成度,自己評価,他者評価低・高群の全てにおいて,敵意帰属バイアスでは,中学年自己評価群別を除く全てにおいて,介入前より介入後及びフォローアップ測定時の得点が有意に低く,攻撃性が低下したことが分かった(p <.01)。反応的攻撃性では,介入前より介入後の得点が有意に低く攻撃性が低下したことが分かった(p <.05)。表情認知合計得点や手がかり-意図合計得点では,時期の主効果において介入前より介入後の得点が有意に高く(p <.05)介入実践の効果があったと考える。1年生については,介入前より介入後及びフォローアップ測定時の得点が有意(p <.01)に低く,介入後よりフォローアップ測定時の得点が有意(p <.01)に低かったことから,介入実践の効果が確認できた。反応的攻撃性,否定的な感情を表出せず行う主張的行動(P),表情認知の一部,手がかり-意図の一部など介入後の効果が確認できたが,フォローアップ測定時まで効果が維持できなかったものについては,介入実践の継続により改善が期待できるであろう。友好的目標設定では,中学年以上で介入後の効果が見られなかった。友好的目標設定は,その時々の友だちとの関係性に大きく影響されるものであるため,今後は友だちとの関係性を構築するSSTを継続することで改善の可能性があると考える。