16:00 〜 18:00
[PF13] 小中一貫校・非一貫校における子どもの適応・発達(11)
学校環境からの負荷に着目して
キーワード:小中一貫校, 環境負荷, 横断調査
問題と目的
近年,公立小中一貫校が増加している。いわゆる「中1ギャップ」の解消などを目指した制度設計が行われている一方,新しい制度の中で,子どもに対して従来以上に負荷がかかり,適応や精神的健康,発達などに影響を及ぼしている可能性もある。
そこで,本研究では,学校環境からの負荷について一貫校と非一貫校で比較検討することを目的とする
方 法
調査対象者・調査時期 2015年9月から12月に,公立施設一体型小中一貫校6校に在籍する4年生から9年生1163名(男子624名,女子528名,不明11名),公立小学校15校・中学校5校に在籍する4年生から中学3年生3931名(男子2026名,女子1845名,不明60名)を調査対象者とした。
調査内容 学校環境からの負荷(環境負荷)に関する項目6項目を独自に作成して使用した(4件法,例:いまの学校は時間におわれていそがしい)。
結果と考察
まず,環境負荷に関する項目6項目への回答の平均を算出し,環境負荷得点を作成した(α=.78)。次に,環境負荷得点について,学校形態(2)×学年(6)の2要因分散分析を行った。その結果,交互作用が有意であった(F(5, 4893)=13.03, p<.001)。そこで,単純主効果の検定を行ったところ,6年生と9年生では非一貫校より一貫校の方が得点が高く,7年生と8年生では一貫校よりも非一貫校の方が得点が高かった。また,一貫校では,4年生や5年生よりも7年生・8年生・9年生の方が得点が高く,非一貫校では,4年生・6年生よりも5年生・9年生の方が得点が高く,さらに7年生・8年生の得点は高かった(Figure 1)。
これらの結果から,一貫校は学年が上がるにつれて,徐々に学校環境からの負荷が高まっていると認識されているのに対して,非一貫校では,小学校段階における学校環境からの負荷に対して,中学校段階における学校環境からの負荷が急激に強まったと認識されていることが明らかとなった。特に中学1・2年生で環境負荷が強くなっていることから,非一貫校の児童生徒は,小学校段階から中学校段階への移行において,この環境負荷の差異に戸惑いを感じる可能性がある。さらに,6年生・9年生(中学3年生)という小学校・中学校での最高学年において環境負荷が弱く認識されていた。これは,環境に対する順応であると考えられるが,それに対して一貫校では環境負荷の低下がみられず,継続的に強い環境負荷のなかに児童生徒がおかれていると考えられる。
付 記
本研究は,科学研究費助成事業(基盤研究(B)課題番号15H03479:代表・梅原利夫)の助成を受けたものである。
近年,公立小中一貫校が増加している。いわゆる「中1ギャップ」の解消などを目指した制度設計が行われている一方,新しい制度の中で,子どもに対して従来以上に負荷がかかり,適応や精神的健康,発達などに影響を及ぼしている可能性もある。
そこで,本研究では,学校環境からの負荷について一貫校と非一貫校で比較検討することを目的とする
方 法
調査対象者・調査時期 2015年9月から12月に,公立施設一体型小中一貫校6校に在籍する4年生から9年生1163名(男子624名,女子528名,不明11名),公立小学校15校・中学校5校に在籍する4年生から中学3年生3931名(男子2026名,女子1845名,不明60名)を調査対象者とした。
調査内容 学校環境からの負荷(環境負荷)に関する項目6項目を独自に作成して使用した(4件法,例:いまの学校は時間におわれていそがしい)。
結果と考察
まず,環境負荷に関する項目6項目への回答の平均を算出し,環境負荷得点を作成した(α=.78)。次に,環境負荷得点について,学校形態(2)×学年(6)の2要因分散分析を行った。その結果,交互作用が有意であった(F(5, 4893)=13.03, p<.001)。そこで,単純主効果の検定を行ったところ,6年生と9年生では非一貫校より一貫校の方が得点が高く,7年生と8年生では一貫校よりも非一貫校の方が得点が高かった。また,一貫校では,4年生や5年生よりも7年生・8年生・9年生の方が得点が高く,非一貫校では,4年生・6年生よりも5年生・9年生の方が得点が高く,さらに7年生・8年生の得点は高かった(Figure 1)。
これらの結果から,一貫校は学年が上がるにつれて,徐々に学校環境からの負荷が高まっていると認識されているのに対して,非一貫校では,小学校段階における学校環境からの負荷に対して,中学校段階における学校環境からの負荷が急激に強まったと認識されていることが明らかとなった。特に中学1・2年生で環境負荷が強くなっていることから,非一貫校の児童生徒は,小学校段階から中学校段階への移行において,この環境負荷の差異に戸惑いを感じる可能性がある。さらに,6年生・9年生(中学3年生)という小学校・中学校での最高学年において環境負荷が弱く認識されていた。これは,環境に対する順応であると考えられるが,それに対して一貫校では環境負荷の低下がみられず,継続的に強い環境負荷のなかに児童生徒がおかれていると考えられる。
付 記
本研究は,科学研究費助成事業(基盤研究(B)課題番号15H03479:代表・梅原利夫)の助成を受けたものである。