The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PF(01-81)

ポスター発表 PF(01-81)

Sun. Oct 8, 2017 4:00 PM - 6:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

4:00 PM - 6:00 PM

[PF14] 小中一貫校・非一貫校における子どもの適応・発達(12)

学校環境と学習意欲の関係に注目して

金子泰之1, 高坂康雅2, 都筑学3, 岡田有司4 (1.常葉大学短期大学部, 2.和光大学, 3.中央大学, 4.東北大学)

Keywords:小中一貫, 学校適応, 学習動機づけ

問題と目的
 小中一貫校という学校形態が法的に位置付けられた。その小中一貫校が従来の小中学校(非一貫校)と比べ,子ども達の発達や学校適応にどのような影響を及ぼすのか,少しずつ調査研究が始まっている。例えば,レジリエンス(高坂ら,2017),ソーシャルサポート(都筑ら,2017),学級適応感(岡田ら,2017),学習動機づけ(金子ら,2017)について,小中一貫校と非一貫校の得点を比較し,それぞれの学校形態が子ども達の学校適応に及ぼす影響を検討している。
 本研究では,小中一貫校と非一貫校を比較しながら,子ども達が認知する学校環境が,小・中学生の学習動機づけにどのような影響を及ぼすのかを明らかにする。

方   法
調査対象者・調査時期 研究(11)と同じ。
調査内容 (1)環境負荷:研究(11)と同じ。(2)友人・教師からのソーシャルサポート:嶋田・岡安・坂野(1993)に基づき,友人・教師のソーシャルサポートを各5項目で測定。(3)動機づけ尺度(安藤・布施・小平,2008):「低自律的外発」「高自律的外発」「内発」の下位尺度から各4項目を使用した。

結果と考察
 「環境負荷」,「友人からのソーシャルサポート」「教師からのソーシャルサポート」が,学習動機づけ(低自律外発,高自律外発,内発)にどのような影響を及ぼすのかを分析した。一貫校の小学生,非一貫校の小学生,一貫校の中学生,非一貫校の中学生の4群によって,変数間の影響力の違いを検討するため,多母集団同時分析を行った。全体の傾向として,変数間の影響関係はほぼ共通していた。
環境負荷の影響 環境負荷が高まるほど,低自律的外発が高くなる正の影響と,内発が低くなる負の影響が見られた。
友人からのソーシャルサポートの影響 友人からのソーシャルサポートが高まるほど,低自律的外発が低くなる負の影響と,高自律的外発と内発が高くなる正の影響が見られた。
教師からのソーシャルサポートの影響 教師からのソーシャルサポートが高まるほど,高自律的外発と内発が高くなる正の影響が見られた。
学校区分ごとのパス係数の比較 環境負荷から低自律的外発への影響力は,一貫中学校よりも非一貫中学校の方が大きかった(p<.05)。また,一貫中学校よりも一貫小学校の方が,影響力が大きかった(p<.01)。一貫校の生徒よりも非一貫の生徒の方が,また一貫校の中学生より小学生の方が,環境負荷により低自律的外発が高くなることが明らかとなった。
 環境負荷から内発への影響力は,非一貫中学よりも一貫中学の方が大きかった(p<.001)。非一貫中学よりも一貫中学校の生徒の方が,環境負荷により内発が低くなることが明らかとなった。
 一貫校の小学生は一貫校の中学生より学習動機に対して環境負荷の影響を受けやすいことが明らかとなった。一貫校において中学校文化を小学校高学年に前倒しすることは慎重にした方がよいことが示唆された。
付   記
 本研究は,科学研究費助成事業(基盤研究(B)課題番号15H03479:代表・梅原利夫)の助成を受けた。