16:00 〜 18:00
[PF15] 小中一貫校・非一貫校における子どもの適応・発達(13)
学校環境と学校適応の関係に注目して
キーワード:小中一貫, 学校環境, 学校適応
問題と目的
小中一貫校は増加しつつあるが,小中一貫化が子どもの適応・発達にどのような影響を与えているのかについては研究が蓄積されていない。筆者らはこれまでに大規模調査に基づき,小中一貫校と非一貫校の児童生徒の適応・発達が学校区分によってどのように異なるのかを検討してきた。しかし,一貫校と非一貫校で学校生活の諸要因と学校適応との関連に差異があるのかについては明らかにされてこなかった。
本研究では,学校環境と学校適応の関係が小中一貫校,非一貫校でどのように異なるのかについて明らかにすることを目的とした。
方 法
調査対象者・調査時期 研究(11)と同じ。
調査内容 (1)環境負荷:研究(11)と同じ。(2)友人・教師からのソーシャルサポート:研究(12)と同じ。(3)学校適応:学校への心理的適応尺度(岡田,2012)の「欲求充足」と「要請対処」から各3項目を用いた。
結果と考察
「環境負荷」「友人ソーシャルサポート」「教師ソーシャルサポート」が学校への心理的適応(「欲求充足」「要請対処」)にどのように影響を与えているのか検討するため,多母集団同時分析を実施した。筆者らのこれまでの研究で小学校段階と中学校段階では違いのあることが示唆されているため,「一貫校小学校段階」「非一貫校小学校段階」「一貫校中学校段階」「非一貫校中学校段階」の4つの集団を区分した。
全体的には学校区分が異なっても,変数間の関係は類似しており,欲求充足,要請対処ともに友人からのソーシャルサポートの影響が最も強かった。また,教師からのソーシャルサポートも学校適応に一定の影響を与えていた。一方,環境からの負荷については一部有意なパスも示されたが,学校適応への影響はそれほど強くないことが明らかになった。以上のことから,小中一貫・非一貫といった違いがあっても,友人や教師からのソーシャルサポートが学校に適応する上で重要であることには変わりがないといえる。
ただし,それぞれのパス係数の大きさを見てみると,そこには主に中学校段階において学校区分による違いのあることが明らかになった。パス係数の差に関する検定統計量を確認すると,友人ソーシャルサポートについては,欲求充足(p<.01),要請対処(p<.001)ともに一貫中学校と非一貫中学校のパス係数に有意な差があった。また,教師ソーシャルサポートについては要請対処へのパス係数について一貫中学校と非一貫中学校に差が認められた(p<.01)。これらの結果から,一貫校の中学生は非一貫校の中学生に比べ,友人からのソーシャルサポートが学校適応においてより重要であるといえる。一貫校では小学校段階から中学校段階まで同じ人間関係が継続することになるため,そこで良好な関係が形成できるかどうかが適応状況にも強く影響するのだと考えられる。以上のことから,小中一貫化は学校適応に影響を与える対人的要因に違いをもたらすことが示唆された。
付 記
本研究は,科学研究費助成事業(基盤研究(B)課題番号15H03479:代表・梅原利夫)の助成を受けたものである。
小中一貫校は増加しつつあるが,小中一貫化が子どもの適応・発達にどのような影響を与えているのかについては研究が蓄積されていない。筆者らはこれまでに大規模調査に基づき,小中一貫校と非一貫校の児童生徒の適応・発達が学校区分によってどのように異なるのかを検討してきた。しかし,一貫校と非一貫校で学校生活の諸要因と学校適応との関連に差異があるのかについては明らかにされてこなかった。
本研究では,学校環境と学校適応の関係が小中一貫校,非一貫校でどのように異なるのかについて明らかにすることを目的とした。
方 法
調査対象者・調査時期 研究(11)と同じ。
調査内容 (1)環境負荷:研究(11)と同じ。(2)友人・教師からのソーシャルサポート:研究(12)と同じ。(3)学校適応:学校への心理的適応尺度(岡田,2012)の「欲求充足」と「要請対処」から各3項目を用いた。
結果と考察
「環境負荷」「友人ソーシャルサポート」「教師ソーシャルサポート」が学校への心理的適応(「欲求充足」「要請対処」)にどのように影響を与えているのか検討するため,多母集団同時分析を実施した。筆者らのこれまでの研究で小学校段階と中学校段階では違いのあることが示唆されているため,「一貫校小学校段階」「非一貫校小学校段階」「一貫校中学校段階」「非一貫校中学校段階」の4つの集団を区分した。
全体的には学校区分が異なっても,変数間の関係は類似しており,欲求充足,要請対処ともに友人からのソーシャルサポートの影響が最も強かった。また,教師からのソーシャルサポートも学校適応に一定の影響を与えていた。一方,環境からの負荷については一部有意なパスも示されたが,学校適応への影響はそれほど強くないことが明らかになった。以上のことから,小中一貫・非一貫といった違いがあっても,友人や教師からのソーシャルサポートが学校に適応する上で重要であることには変わりがないといえる。
ただし,それぞれのパス係数の大きさを見てみると,そこには主に中学校段階において学校区分による違いのあることが明らかになった。パス係数の差に関する検定統計量を確認すると,友人ソーシャルサポートについては,欲求充足(p<.01),要請対処(p<.001)ともに一貫中学校と非一貫中学校のパス係数に有意な差があった。また,教師ソーシャルサポートについては要請対処へのパス係数について一貫中学校と非一貫中学校に差が認められた(p<.01)。これらの結果から,一貫校の中学生は非一貫校の中学生に比べ,友人からのソーシャルサポートが学校適応においてより重要であるといえる。一貫校では小学校段階から中学校段階まで同じ人間関係が継続することになるため,そこで良好な関係が形成できるかどうかが適応状況にも強く影響するのだと考えられる。以上のことから,小中一貫化は学校適応に影響を与える対人的要因に違いをもたらすことが示唆された。
付 記
本研究は,科学研究費助成事業(基盤研究(B)課題番号15H03479:代表・梅原利夫)の助成を受けたものである。