16:00 〜 18:00
[PF29] フィードバックが作文の改善過程に及ぼす効果
制御焦点とのATIに着目して
キーワード:フィードバック, 作文, 制御焦点
問題と目的
フィードバック(以下,FB)の効果に関する研究は数多いが,作文の改善過程に着目したもの,とりわけ学習者の適性との交互作用(ATI)に着目したものは少ない。したがって,本研究の目的は,FBの誘意性が作文の改善過程に及ぼす影響を,制御焦点とのATIに着目して検討することである。なお,本研究は福富(2016)で使用されたデータに新たな変数を加え,再分析したものである。
方 法
参加者 青森県内の短期大学生90名(女性85名,男性5名)。参加者は,後述の利得接近志向から損失回避志向を引いた平均値がなるべく等しくなるように,肯定FB群30名,改善FB群30名,両FB群30名に分けられた。
課題 「あなたの長所は何ですか?具体的な経験を挙げて教えてください」というテーマで文章を書く課題を実施した。
手続き 集団を対象に,2回に分けて実験を行った。1回目は,全ての参加者に同じ条件で課題を実施した。2回目は,最初に課題に対するコメントが記されたシートを渡した後に,2回目の課題を実施した。ただし,コメントの内容は群ごとに異なっていた。すなわち,肯定FB群の参加者のシートには,作文の「良かったところ」が2点記されていた。改善FB群の参加者のシートには,作文の「直した方がよいところ」が2点記されていた。両FB群の参加者のシートには,上記の2種類のコメントが,それぞれ1点ずつ記されていた。
制御焦点適性 尾崎・唐沢(2011)のPPFS邦訳版を使用した。下位尺度は,(1)利得接近志向:肯定的な結果や進歩などへの関心,(2)損失回避志向:否定的な結果や後退などへの関心,である。
従属変数 (1)不安:課題遂行中の不安,(2)熟慮的方略:じっくり考えながら文章を書く方略,(3)改善意図:作文を改善する意図,(4)文字数,(5)総合評価:作文の総合的な質の高さ。(1)~(4)は質問紙による自己報告,(5)は大学院生2名による評定である。
結果と考察
重回帰分析の結果,不安,熟慮的方略,改善意図に対して,損失回避志向とFB群の交互作用がみられた(F(2,80)=2.61,p<.10; F(2,80)=7.76,p<.01; F(2,81)=2.56,p<.10; Figure1)。3変数とも,損失回避志向が高いほど,両FBで値が高くなるパターンを示した。
また,文字数と総合評価に対して,利得接近志向とFB群の交互作用がみられた(F(2,80)=7.29,p<.01; F(2,80)=2.67,p<.10; Figure2)。2変数とも,利得接近志向が高いほど,両FBで値が高くなるパターンを示した。
分析の結果,両FBを受けた後の作文の改善過程には,制御焦点適性による差があることが明らかになった。これは,予防焦点適性の高い人は熟慮しながら内容全体を改善するのに対して,促進焦点適性の高い人は即座に指摘されたところを改善する可能性を示唆するものである。
フィードバック(以下,FB)の効果に関する研究は数多いが,作文の改善過程に着目したもの,とりわけ学習者の適性との交互作用(ATI)に着目したものは少ない。したがって,本研究の目的は,FBの誘意性が作文の改善過程に及ぼす影響を,制御焦点とのATIに着目して検討することである。なお,本研究は福富(2016)で使用されたデータに新たな変数を加え,再分析したものである。
方 法
参加者 青森県内の短期大学生90名(女性85名,男性5名)。参加者は,後述の利得接近志向から損失回避志向を引いた平均値がなるべく等しくなるように,肯定FB群30名,改善FB群30名,両FB群30名に分けられた。
課題 「あなたの長所は何ですか?具体的な経験を挙げて教えてください」というテーマで文章を書く課題を実施した。
手続き 集団を対象に,2回に分けて実験を行った。1回目は,全ての参加者に同じ条件で課題を実施した。2回目は,最初に課題に対するコメントが記されたシートを渡した後に,2回目の課題を実施した。ただし,コメントの内容は群ごとに異なっていた。すなわち,肯定FB群の参加者のシートには,作文の「良かったところ」が2点記されていた。改善FB群の参加者のシートには,作文の「直した方がよいところ」が2点記されていた。両FB群の参加者のシートには,上記の2種類のコメントが,それぞれ1点ずつ記されていた。
制御焦点適性 尾崎・唐沢(2011)のPPFS邦訳版を使用した。下位尺度は,(1)利得接近志向:肯定的な結果や進歩などへの関心,(2)損失回避志向:否定的な結果や後退などへの関心,である。
従属変数 (1)不安:課題遂行中の不安,(2)熟慮的方略:じっくり考えながら文章を書く方略,(3)改善意図:作文を改善する意図,(4)文字数,(5)総合評価:作文の総合的な質の高さ。(1)~(4)は質問紙による自己報告,(5)は大学院生2名による評定である。
結果と考察
重回帰分析の結果,不安,熟慮的方略,改善意図に対して,損失回避志向とFB群の交互作用がみられた(F(2,80)=2.61,p<.10; F(2,80)=7.76,p<.01; F(2,81)=2.56,p<.10; Figure1)。3変数とも,損失回避志向が高いほど,両FBで値が高くなるパターンを示した。
また,文字数と総合評価に対して,利得接近志向とFB群の交互作用がみられた(F(2,80)=7.29,p<.01; F(2,80)=2.67,p<.10; Figure2)。2変数とも,利得接近志向が高いほど,両FBで値が高くなるパターンを示した。
分析の結果,両FBを受けた後の作文の改善過程には,制御焦点適性による差があることが明らかになった。これは,予防焦点適性の高い人は熟慮しながら内容全体を改善するのに対して,促進焦点適性の高い人は即座に指摘されたところを改善する可能性を示唆するものである。