日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PF(01-81)

ポスター発表 PF(01-81)

2017年10月8日(日) 16:00 〜 18:00 白鳥ホールB (4号館1階)

16:00 〜 18:00

[PF35] 個別学習支援に携わる学生が重視する算数文章題解決時のメタ認知方略の検討

小澤郁美1, 福屋いずみ2, 浦上萌3 (1.広島大学大学院・日本学術振興会特別研究員DC, 2.広島大学大学院, 3.久留米大学)

キーワード:メタ認知, 算数文章題, 学習指導

 算数科では,算数文章題に苦手を抱える小学生が多いことが課題とされている。岡本(1992)は,算数文章題を解くには,どのようなメタ認知方略を用いるかが重要であると指摘している。
 では,具体的にどのようなメタ認知方略が算数文章題解決に必要なのであろうか。小澤他(2016)では,多鹿他(2004)の算数文章題解決におけるメタ認知方略尺度の用語と評定段階を小学生用に改変し,大学生を対象に,小学生の時の算数文章題解決の場面を想起させ,メタ認知方略の因子を明らかにした。その結果,「問題解決に必要な情報の選択」や「既有知識の使用」,「問題文理解の手がかりの外化」といった,メタ認知的コントロールにあたる方略が見出された(以下,順にF1,F2,F3とする)。
 しかしながら,実際に算数文章題に苦手を抱える小学生が,これらのメタ認知方略のうち,どの方略の使用に困難があるのかは十分に検討されていない。加えて,指導者がどのメタ認知方略を重視しているのかについても明らかになっていない。これらについて検討することで,小学生の指導方法に対して示唆を得ることができると考えられる。
 そこで,本研究では,指導者側が重視するメタ認知方略について明らかにすることを目的とする。具体的には,小学生の個別学習支援に携わる大学生を対象に,小学生に算数文章題を指導する際に,どのメタ認知方略を重視しているかを検討する。また,個別学習支援の経験回数や学年によって,重視するメタ認知方略が異なるかも検討する。
方   法
参加者 A大学で実施されている個別学習支援プログラムに参加する小学校教員免許取得予定の大学生36名であった。
算数文章題解決時のメタ認知方略尺度 多鹿他(2004)の項目の文章表現,用語,評定段階を小学生向けに改変した,小澤他(2016)の尺度を使用した。尺度は21項目であった。
手続き 調査はWeb上で行った。参加者に対し,小学生に算数文章題を支援する際に,各項目についてどれくらい気をつけさせる必要があるかを評定させた。評定は「4:とても気をつけさせる必要がある」から「1:まったく気をつけさせる必要がない」までの4段階であった。質問紙の最後に,フェイス項目への回答を求めた。フェイス項目では参加者の学年,個別学習支援経験回数を尋ねた。
結   果
 初めに,メタ認知方略尺度の平均評定値について,各因子(参加者内:F1,F2,F3)の一要因分散分析を実施した。その結果,因子の主効果が見られ(F (2,35) = 27.4, p < .00),多重比較の結果,F1>F3>F2であった。
 次に,算数文章題解決時のメタ認知方略尺度の各因子について,学年ごとや個別学習支援経験回数ごとの平均評定値を算出した(Table 1)。
 各因子(参加者内:F1,F2,F3)×学年(参加者間:1・2年,3・4年)の二要因分散分析を実施した結果,各因子の主効果は有意だったが(F1>F3>F2),学年の主効果と交互作用は見られなかった。各因子(参加者内:F1,F2,F3)×個別学習支援経験(参加者間:0回,1回,2・3回,4回以上)の二要因分散分析の結果も同様であった。
考   察
 個別学習支援に参加する学生は,算数文章題を教える際に「問題解決に必要な情報の選択」を最重視していることが明らかとなった。他方,学年差や個別学習支援経験による差は見られなかった。尺度のどの項目に気を付けるべきか重みづけさせることで差がみられる可能性がある。
主要引用文献
小澤 郁美・福屋 いずみ・浦上 萌・中條 和光(2016).算数文章題解決におけるメタ認知方略尺度の作成(1)―小学生版尺度作成を目指して―日本教育心理学会第58回大会発表論文集,764.