日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PF(01-81)

ポスター発表 PF(01-81)

2017年10月8日(日) 16:00 〜 18:00 白鳥ホールB (4号館1階)

16:00 〜 18:00

[PF43] 現職教員と教員志望学生の児童・生徒観および指導行動に関する研究(7)

教員養成大学における文系ー理系学生間の比較検討

藤田正1, 林龍平2, 崎濱秀行3 (1.奈良教育大学, 2.関西福祉科学大学, 3.阪南大学)

キーワード:児童・生徒観, 指導行動, 文系ー理系

問題と目的
 研究(1)(﨑濱・藤田・林,2015)では,現職教員と教員志望学生の児童・生徒観および指導行動の様相を検討するための尺度を作成した。そして,作成尺度を基に,現職教員と教員志望学生間,小学校教員と中学校教員間,希望校種間(教員養成大学学生が対象。取得免許状および教科は個々によって異なる),大学間(教員養成大学学生と一般大学教職課程志望者の間),学年間(教員養成大学学生)において,児童生徒観および学習指導行動の違いについて検討を重ねてきた。
 しかしながら,教員を目指す学生であっても,取得免許状ならびに専攻は各々異なっており,文系教科(英語・国語・社会等)に関わるものもあれば,理系教科(理科・数学等)に関わるものも見られる。
 以上を踏まえ,本研究では,教員養成大学に在籍する学生を対象に,取得免許状の違い(文系―理系)によって児童・生徒観および学習指導行動に何らかの違いが見られるのかどうかを検討する。
方   法
調査参加者 近畿地方の教員養成大学に在籍する大学2年生~4年生77名(文系学生66名,理系学生11名,平均年齢20.1歳)。
材 料 研究(1)で作成された,児童・生徒観尺度および学習指導行動尺度を用いた。
手続き 研究(1)の手続きに同じであった。
結果と考察
 参加者から得られたデータについて,SPSS Ver. 23.0を用いて,以下の事項に関するt検定を行った。F検定によって等分散性が仮定できなかった項目(児童・生徒観尺度の項目11)はウェルチの検定を行った。TABLE1に結果をまとめた。
1)児童・生徒観の比較検討 研究(1)において確認された下位尺度の構造に基づき,文系学生―理系学生間の児童・生徒観の違いについて比較検討を行った。その結果,項目11においてt値が有意(t21=2.98 p<.01)であったことから,理系学生の方がより児童生徒中心的な考え方をしていることが伺える。しかしながら,文系学生,理系学生ともに評定平均値は2.0を下回っており,共に児童・生徒中心的な児童・生徒観を有していると言える。その理由として,教員養成大学の場合,専攻科目には文系科目・理系科目の双方が含まれてはいるが,学生全体の特徴としては文系学部と類似していると考えられる。また,学校での参加観察を初年次より行っていることから,望ましい教員のあり方について考える機会が他大学よりも確保されていることも一因と考えられる。
2)学習指導行動の比較検討 自分が教師であったらどのような学習指導行動を重視するかについて回答を求めた。その結果,項目10においてt値が有意であった(t35=2.97 p<.01)。このことから,理系学生はどちらかといえば児童・生徒中心的な学習指導行動を重視していたのに対し,文系学生の場合はやや教師中心的な学習指導行動を重視していることが伺える。この違いが生じた理由として,理数系教科の場合,実験や問題演習等により,当該時間に必ずしも導入・展開・まとめの過程を経るとは限らないこと等が考えられる。