16:00 〜 18:00
[PF49] 高校生の質問力育成を目的とした授業効果の検討
質問力および質問態度に着目して
キーワード:質問力, 質問態度, 高校生
批判的思考力の中でも「疑問を持つ力」である質問力は,専門教育が本格化する前に必要な力であり,獲得の重要性が示されている(道田,2016)。道田(2011)は,大学生を対象とした様々な質問経験を伴う授業実践による質問力に及ぼす効果を示している。小山(2014)が中等教育における「生徒の問う力」の育成の重要性を指摘しているように,大学に先駆け,高校においても質問力の育成に取り組むことで,自律的な学習者の育成により大きな効果をもたらすと考えられる。そこで本研究は,高校生の質問力育成を目的とした授業の効果を検討する。なお質問力は,質問をすることに対する準備状態である質問態度と同時に検討されることが多いため(道田,2011など),質問態度に関しても,検討する。
方 法
調査対象者 (1)授業群として,対象授業を受講した高校生18名(男10名,女8名)。(2)統制群として,対象授業を受講していない高校生21名(男9名,女12名)。
授業概要 45分×2コマの授業を4日実施した。初日:1)質問力測定(授業前)2)質問力の定義に関する講義,2日目:1)質問のカテゴリ(道田,2011)に関する講義,2)指定された質問をカテゴリ分類する実践,文章課題に対するカテゴリを意識した質問生成の実践,3日目:1)自分と,ペアの生徒が生成した質問を分類する実践,2)映像に対する質問生成の実践,4日目:1)まとめ,2)質問力測定(授業後)。
質問力測定 質問力の測定に関しては道田(2011)の方法を採用した。授業群は初日1コマ目の授業と最終日の2コマ目の授業時に,統制群は授業群と同様の期間を空け,実施した。道田(2011)では,大学生を対象に教育心理学に関する文章題材を使用していたが,本研究では,高校生向けに作成された心理学の書籍(小川ら,2013)の“社会心理学”,“教育心理学”に関する文章を使用し,2種類の文章課題を作成した。授業前測定では,この課題をランダムに配布した。20分の制限時間内で,文章に対しできるだけたくさんの質問を記入するよう教示し,文章課題に対する質問の記述を求めた。授業後測定では,授業前測定で使用しなかった方の文章課題への回答を求めた。
分析に用いた調査項目 質問態度:道田(2011)による6項目(6件法)。
結果と考察
道田(2011)のカテゴリ表を参考に,記述された質問を“思考を刺激する質問”,“事実を問う質問”,“意図不明な質問1”に分類した(表1)。質問力,質問態度への授業の効果を検討するため,授業の有無(授業群,統制群)×時期(授業前,授業後)の2要因分散分析(混合計画)を行った。質問力に関しては道田(2011)と同様に質問数をZ得点に変換後,分析を実施した。その結果,事実を問う質問数において有意な交互作用効果が見られ,授業群では授業前と比べ授業後に質問数が増加し,統制群では,授業前に比べ減少した(F(1,37)=14.565, p<.001, ηp2=.282)。一方,思考を刺激する質問数では,有意な交互作用効果は見られなかった(F(1,37)=2.340, ns, ηp2=.059)。また質問態度においても交互作用効果が有意傾向であり,授業群では授業前よりも授業後のほうが,質問態度得点が高かった(F(1,36)=3.481, p=.07, ηp2=.088)。なお,全ての変数において授業の有無,時期の主効果は有意ではなかった。つまり,授業を実施した結果,質問力の一側面である事実を問う質問数および,質問態度が上昇することが示された。ただし,質問力に関して,浅い質問である事実を問う質問数は増加したものの,深い質問である思考を刺激する質問数は増加しておらず,授業の効果は浅い質問の生成数のみに留まった。道田(2011)は質問力と質問態度の向上が同時に生じているわけではない可能性を指摘している。つまり,質問力や質問態度には,態度から浅い質問の生成,その後深い質問の生成といった,獲得段階がある可能性が考えられる。本授業は道田(2011)など,授業効果が示された授業に対し回数が少なかったため,質問行動に対する準備状態である質問態度と,浅い質問に対しての効果のみに留まったと考えられる。
1意図不明な質問数に関しては,最頻値が0であったため分析から除外した。
方 法
調査対象者 (1)授業群として,対象授業を受講した高校生18名(男10名,女8名)。(2)統制群として,対象授業を受講していない高校生21名(男9名,女12名)。
授業概要 45分×2コマの授業を4日実施した。初日:1)質問力測定(授業前)2)質問力の定義に関する講義,2日目:1)質問のカテゴリ(道田,2011)に関する講義,2)指定された質問をカテゴリ分類する実践,文章課題に対するカテゴリを意識した質問生成の実践,3日目:1)自分と,ペアの生徒が生成した質問を分類する実践,2)映像に対する質問生成の実践,4日目:1)まとめ,2)質問力測定(授業後)。
質問力測定 質問力の測定に関しては道田(2011)の方法を採用した。授業群は初日1コマ目の授業と最終日の2コマ目の授業時に,統制群は授業群と同様の期間を空け,実施した。道田(2011)では,大学生を対象に教育心理学に関する文章題材を使用していたが,本研究では,高校生向けに作成された心理学の書籍(小川ら,2013)の“社会心理学”,“教育心理学”に関する文章を使用し,2種類の文章課題を作成した。授業前測定では,この課題をランダムに配布した。20分の制限時間内で,文章に対しできるだけたくさんの質問を記入するよう教示し,文章課題に対する質問の記述を求めた。授業後測定では,授業前測定で使用しなかった方の文章課題への回答を求めた。
分析に用いた調査項目 質問態度:道田(2011)による6項目(6件法)。
結果と考察
道田(2011)のカテゴリ表を参考に,記述された質問を“思考を刺激する質問”,“事実を問う質問”,“意図不明な質問1”に分類した(表1)。質問力,質問態度への授業の効果を検討するため,授業の有無(授業群,統制群)×時期(授業前,授業後)の2要因分散分析(混合計画)を行った。質問力に関しては道田(2011)と同様に質問数をZ得点に変換後,分析を実施した。その結果,事実を問う質問数において有意な交互作用効果が見られ,授業群では授業前と比べ授業後に質問数が増加し,統制群では,授業前に比べ減少した(F(1,37)=14.565, p<.001, ηp2=.282)。一方,思考を刺激する質問数では,有意な交互作用効果は見られなかった(F(1,37)=2.340, ns, ηp2=.059)。また質問態度においても交互作用効果が有意傾向であり,授業群では授業前よりも授業後のほうが,質問態度得点が高かった(F(1,36)=3.481, p=.07, ηp2=.088)。なお,全ての変数において授業の有無,時期の主効果は有意ではなかった。つまり,授業を実施した結果,質問力の一側面である事実を問う質問数および,質問態度が上昇することが示された。ただし,質問力に関して,浅い質問である事実を問う質問数は増加したものの,深い質問である思考を刺激する質問数は増加しておらず,授業の効果は浅い質問の生成数のみに留まった。道田(2011)は質問力と質問態度の向上が同時に生じているわけではない可能性を指摘している。つまり,質問力や質問態度には,態度から浅い質問の生成,その後深い質問の生成といった,獲得段階がある可能性が考えられる。本授業は道田(2011)など,授業効果が示された授業に対し回数が少なかったため,質問行動に対する準備状態である質問態度と,浅い質問に対しての効果のみに留まったと考えられる。
1意図不明な質問数に関しては,最頻値が0であったため分析から除外した。