4:00 PM - 6:00 PM
[PF59] 青年期の攻撃行動における心理教育の刺激呈示の工夫の試み
マインドフルネス呼吸法を習得するために
Keywords:攻撃行動, マインドフルネス, 青年期
問題と目的
青年期における攻撃行動は,いまだ発生件数の減少がみられず,学校現場においてその低減や変容を目指した取り組みが必要な問題行動の1つである。このような学校不適応の改善を目的として,コーピングレパートリーの拡充や自分の特徴に応じたコーピング選択を目的とした問題解決訓練が効果を示しており(Nezu et al.,2004),状態像に応じ,他の介入技法も組み合わせることによって効果を高めることができると指摘されている(宮田他,2010)。
攻撃行動を示す児童生徒の代表的な状態像の1つとして,特定の刺激に対する情動喚起によって,反応的に攻撃行動をしてしまう状態像があり,このような状態像に対しては,問題解決訓練に「リラクセーション技法」を加えることによって,攻撃行動低減効果が高まることが示されている(高橋他,2010)。一方で,近年では怒りなどの情動コントロールに対する介入技法として,マインドフルネス呼吸法の有効性が示されており(平野他,2013),学校現場においてもこの技法を用いた介入が盛んに行なわれている(Kuyken, et al.,2013)。海外の学校におけるマインドフルネス介入では,青年期の体験的理解を促し,適切なマインドフルネス呼吸法の取り組みを促すための工夫として,映像刺激を用いた10セッションからなる介入が行なわれている(Johnson, et al.,2016)。この映像刺激を用いた介入によって,情動のコントロールに対する効果が高まることが示されているが,セッション数や時間,文化的背景などの日本の学校現場に応じた映像刺激を作成することが必要である。そこで本研究では,日本の学校現場に応じたマインドフルネス呼吸法に関する映像刺激を作成し,内容的妥当性を確認することを目的とした。
方 法
研究参加者:大学院生4名および大学生7名の計12名(男性5名,女性7名,平均年齢23.9±3.2歳)であった。
調査方法:映像刺激を視聴してもらい,本研究にて作成した映像刺激の内容的妥当性を確認するための質問紙への回答を5件法によって求めた。
映像刺激のシナリオ:「.bプログラム」(Johnson, et al.,2016)およびCiarrochi, et al.(2012 大月他訳 2016)に従い,青年期のマインドフルネス呼吸法の体験的理解を高めるための映像刺激を作成した(約10分)。第1著者が臨床心理学を専攻する大学院生6名と協議のうえ作成し,小学校教師1名,臨床心理士3名の指導により修正した。映像刺激はiMovie(バージョン10.1.5)にて作成した。
映像刺激の内容:映像刺激は(1)呼吸の姿勢の教示,(2)マインドフル呼吸法のしかた,(3)映像に合わせてお腹・足・肩に意識を向ける,(4)実践的に自分のペースで行なう,の4段階からなり,青年期の情動をコントロールすることを目的として,「呼吸を意識的に行なう操作」,「お腹・足・肩への意識を向ける操作」および「意識がそれた際に戻す操作」の3点を意図して映像を作成した(Ciarrochi, et al.,2012 大月他訳 2016)。
結果と考察
映像刺激の妥当性の内容的妥当性チェック:分析の結果,全項目において,4(あてはまる)または5(とてもよくあてはまる)を選択した研究参加者の割合が91.2%であった。
呼吸を意識的に行なわせる操作:呼吸を意識的に行なう操作を意図した項目において,4(あてはまる)と5(とてもよくあてはまる)を選択した研究参加者の割合が76.9%〜100%であった。
お腹・足・肩への意識を向けさせる操作:お腹・足・肩への意識を向けさせる操作を意図した項目においては,4(あてはまる)と5(とてもよくあてはまる)を選択した研究参加者の割合が92.3%であった。
意識がそれた際に戻させる操作:意識がそれた際に戻させる操作を意図した項目においては,4(あてはまる)と5(とてもよくあてはまる)を選択した研究参加者の割合が92.3%であった。
本研究の結果,映像刺激の内容的妥当性が確認され,映像刺激によってマインドフルネス呼吸法の体験的理解が促進する可能性が示された。これらのことから,学校においてマインドフルネス呼吸法の集団介入が可能となる映像刺激を作成したことに実践上の意義があると考えられる。今後は,本研究で用いた映像刺激を用いて,日本の学校における青年期の情動コントロールや攻撃行動に対する有効性を確認する必要がある。
青年期における攻撃行動は,いまだ発生件数の減少がみられず,学校現場においてその低減や変容を目指した取り組みが必要な問題行動の1つである。このような学校不適応の改善を目的として,コーピングレパートリーの拡充や自分の特徴に応じたコーピング選択を目的とした問題解決訓練が効果を示しており(Nezu et al.,2004),状態像に応じ,他の介入技法も組み合わせることによって効果を高めることができると指摘されている(宮田他,2010)。
攻撃行動を示す児童生徒の代表的な状態像の1つとして,特定の刺激に対する情動喚起によって,反応的に攻撃行動をしてしまう状態像があり,このような状態像に対しては,問題解決訓練に「リラクセーション技法」を加えることによって,攻撃行動低減効果が高まることが示されている(高橋他,2010)。一方で,近年では怒りなどの情動コントロールに対する介入技法として,マインドフルネス呼吸法の有効性が示されており(平野他,2013),学校現場においてもこの技法を用いた介入が盛んに行なわれている(Kuyken, et al.,2013)。海外の学校におけるマインドフルネス介入では,青年期の体験的理解を促し,適切なマインドフルネス呼吸法の取り組みを促すための工夫として,映像刺激を用いた10セッションからなる介入が行なわれている(Johnson, et al.,2016)。この映像刺激を用いた介入によって,情動のコントロールに対する効果が高まることが示されているが,セッション数や時間,文化的背景などの日本の学校現場に応じた映像刺激を作成することが必要である。そこで本研究では,日本の学校現場に応じたマインドフルネス呼吸法に関する映像刺激を作成し,内容的妥当性を確認することを目的とした。
方 法
研究参加者:大学院生4名および大学生7名の計12名(男性5名,女性7名,平均年齢23.9±3.2歳)であった。
調査方法:映像刺激を視聴してもらい,本研究にて作成した映像刺激の内容的妥当性を確認するための質問紙への回答を5件法によって求めた。
映像刺激のシナリオ:「.bプログラム」(Johnson, et al.,2016)およびCiarrochi, et al.(2012 大月他訳 2016)に従い,青年期のマインドフルネス呼吸法の体験的理解を高めるための映像刺激を作成した(約10分)。第1著者が臨床心理学を専攻する大学院生6名と協議のうえ作成し,小学校教師1名,臨床心理士3名の指導により修正した。映像刺激はiMovie(バージョン10.1.5)にて作成した。
映像刺激の内容:映像刺激は(1)呼吸の姿勢の教示,(2)マインドフル呼吸法のしかた,(3)映像に合わせてお腹・足・肩に意識を向ける,(4)実践的に自分のペースで行なう,の4段階からなり,青年期の情動をコントロールすることを目的として,「呼吸を意識的に行なう操作」,「お腹・足・肩への意識を向ける操作」および「意識がそれた際に戻す操作」の3点を意図して映像を作成した(Ciarrochi, et al.,2012 大月他訳 2016)。
結果と考察
映像刺激の妥当性の内容的妥当性チェック:分析の結果,全項目において,4(あてはまる)または5(とてもよくあてはまる)を選択した研究参加者の割合が91.2%であった。
呼吸を意識的に行なわせる操作:呼吸を意識的に行なう操作を意図した項目において,4(あてはまる)と5(とてもよくあてはまる)を選択した研究参加者の割合が76.9%〜100%であった。
お腹・足・肩への意識を向けさせる操作:お腹・足・肩への意識を向けさせる操作を意図した項目においては,4(あてはまる)と5(とてもよくあてはまる)を選択した研究参加者の割合が92.3%であった。
意識がそれた際に戻させる操作:意識がそれた際に戻させる操作を意図した項目においては,4(あてはまる)と5(とてもよくあてはまる)を選択した研究参加者の割合が92.3%であった。
本研究の結果,映像刺激の内容的妥当性が確認され,映像刺激によってマインドフルネス呼吸法の体験的理解が促進する可能性が示された。これらのことから,学校においてマインドフルネス呼吸法の集団介入が可能となる映像刺激を作成したことに実践上の意義があると考えられる。今後は,本研究で用いた映像刺激を用いて,日本の学校における青年期の情動コントロールや攻撃行動に対する有効性を確認する必要がある。