4:00 PM - 6:00 PM
[PF60] アイデンティティ形成をねらいとした心理教育プログラム開発の試み
メンタライジング・アプローチの視点から
Keywords:アイデンティティ, 心理教育, メンタライゼーション
問題と目的
Erikson(1959)は青年期の課題はアイデンティティの確立であると提唱している。
杉村(2001)は,「関係性」の視点からアイデンティティをとらえなおし,「自己の視点に気づき,他者の視点との食い違いを調整し,内在化するプロセス」であると述べている。
心理臨床の場面において,Fonagyらが創始したメンタライジング・アプローチが存在する。自他境界の感覚をはぐぐむ目的がある(崔,2016)とされており,メンタライジング・アプローチの枠組みを援用し,アイデンティティ形成の支援が行える可能性があると考えられる。この点は臨床的にも意義があると考えられる。
そこで本研究では,アイデンティティ形成をねらいとしたた心理教育プログラムを作成し,その実践を通して効果を検証する。
方 法
・プログラムの作成
Allen&Fonagy(2011),上地(2011),崔(2016)を参考に心理教育プログラムを作成した。
プログラムの構成は以下の通り(Figure.1)
・実施手続き
コミュニケーション実践講座に参加する8名。
「アイデンティティ講座」と題し,筆者がファシリテーターのワークショップの形(3日間×3時間)で実施した。
・効果検証の方法
質問紙および事後インタビューを行った。
使用した質問紙は,多次元同一性尺度(谷,2001)であり,講座開始以前及び,講座終了後1ヶ月後にそれぞれ記入を依頼した。インタビューでは,「講座での体験」「印象に残ったこと」「講座後に意識していること」などを質問項目として,半構造化面接を行った。
結 果
各参加者の得点と得られた語りの抜粋
考 察
事後におけるMEIS得点は上昇した者と低下した者として分かれた。これには2つの結果が考えられる。 1)メンタライゼーションの枠組みを理解し,考えを援用できたかどうかという点,2)プログラム自体のクオリティの2点にあると考えられる。
メンタライジングは,Fonagy&Bateman(2008)によれば,一般的に適応的であるとされるが,それは不適応的な苦痛を伴うことがあると述べられている。今回の協力者についても,他者の視点を取り入れること,および自他境界を作ることに心理的な抵抗が働いていたことも考えられる。
一方で質的なインタビューでは,参加者それぞれに気づきが生まれている語りが見られた。これは支援の入り口として必要であると考えられ,またこの気づきについて,支援者がどう拾い上げ支援していくかという点は重要な課題となると考えられる。
本研究の課題
本研究の限界を述べる。まず限られたサンプルとなっており結果の一般化には限界が生じる。
さらに考察でも述べたように,このアプローチが適用しやすい者と適用しにくい者などが存在すると考えられ,そうした点を明らかにすることも重要であると考えられる。
Erikson(1959)は青年期の課題はアイデンティティの確立であると提唱している。
杉村(2001)は,「関係性」の視点からアイデンティティをとらえなおし,「自己の視点に気づき,他者の視点との食い違いを調整し,内在化するプロセス」であると述べている。
心理臨床の場面において,Fonagyらが創始したメンタライジング・アプローチが存在する。自他境界の感覚をはぐぐむ目的がある(崔,2016)とされており,メンタライジング・アプローチの枠組みを援用し,アイデンティティ形成の支援が行える可能性があると考えられる。この点は臨床的にも意義があると考えられる。
そこで本研究では,アイデンティティ形成をねらいとしたた心理教育プログラムを作成し,その実践を通して効果を検証する。
方 法
・プログラムの作成
Allen&Fonagy(2011),上地(2011),崔(2016)を参考に心理教育プログラムを作成した。
プログラムの構成は以下の通り(Figure.1)
・実施手続き
コミュニケーション実践講座に参加する8名。
「アイデンティティ講座」と題し,筆者がファシリテーターのワークショップの形(3日間×3時間)で実施した。
・効果検証の方法
質問紙および事後インタビューを行った。
使用した質問紙は,多次元同一性尺度(谷,2001)であり,講座開始以前及び,講座終了後1ヶ月後にそれぞれ記入を依頼した。インタビューでは,「講座での体験」「印象に残ったこと」「講座後に意識していること」などを質問項目として,半構造化面接を行った。
結 果
各参加者の得点と得られた語りの抜粋
考 察
事後におけるMEIS得点は上昇した者と低下した者として分かれた。これには2つの結果が考えられる。 1)メンタライゼーションの枠組みを理解し,考えを援用できたかどうかという点,2)プログラム自体のクオリティの2点にあると考えられる。
メンタライジングは,Fonagy&Bateman(2008)によれば,一般的に適応的であるとされるが,それは不適応的な苦痛を伴うことがあると述べられている。今回の協力者についても,他者の視点を取り入れること,および自他境界を作ることに心理的な抵抗が働いていたことも考えられる。
一方で質的なインタビューでは,参加者それぞれに気づきが生まれている語りが見られた。これは支援の入り口として必要であると考えられ,またこの気づきについて,支援者がどう拾い上げ支援していくかという点は重要な課題となると考えられる。
本研究の課題
本研究の限界を述べる。まず限られたサンプルとなっており結果の一般化には限界が生じる。
さらに考察でも述べたように,このアプローチが適用しやすい者と適用しにくい者などが存在すると考えられ,そうした点を明らかにすることも重要であると考えられる。