日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PF(01-81)

ポスター発表 PF(01-81)

2017年10月8日(日) 16:00 〜 18:00 白鳥ホールB (4号館1階)

16:00 〜 18:00

[PF68] 中学生の相談行動の促進要因・阻害要因の検討

より効果的な自殺予防教育の実施に向けて

窪田由紀1, 杉岡正典#2 (1.名古屋大学, 2.名古屋大学)

キーワード:相談行動, 学級雰囲気, 教師への信頼感

問題と目的

 近年,国をあげての自殺防止対策が進む中で,中高年世代の自殺者数は減少傾向にあるが,若年者については非常に深刻な状態が続いている。そのような状況から,2016年3月に成立した自殺対策基本法の一部を改正する法律においても学校における自殺予防教育の実施が明記された。
 子どもの自殺予防教育の目標は早期の問題認識(心の健康)と援助希求的態度の育成(高橋,2014)とされ,相談行動を促す働きかけがなされつつある(阪中,2015,窪田,2016)。しかし,直接子供に相談を呼びかけるだけでは限界があり,子どもを取り巻く環境への働きかけも必要となろう。
 そこで,本研究では,中学生を対象に学校環境としての学級風土と教師への信頼感が相談行動に及ぼす影響を検討し,より効果的な自殺予防教育のあり方や具体的方法についての基礎資料を得る。

方   法
研究協力者 A市内の中学校8校の生徒1373名(男子690名,女子683名)。
実施方法 研究への協力を了承した学校に質問紙を送付し,学級単位で実施・回収の上,返送を依頼した。
倫理的配慮 調査の趣旨,プライバシー保護の方針等について学校長の同意を得た上で,質問紙表紙に記載した。実施に際し著者の所属機関の研究倫理委員会の承認を得た。
質問紙の構成 質問紙の構成はTable1の通り。

結   果

尺度の構成 相談への態度,学級雰囲気について因子分析結果と先行研究を参考に下位尺度を構成した。教師への信頼感は1因子であった。
尺度間の相関係数はTable2の通り。
中学生の相談行動の促進・抑制要因の検討 
相関係数の値を参考に共分散構造分析を行った。モデルの適合度はGFI=.994,AGFI=.970,RMSEA=.066であった。有意な影響がみられたパスをFigure1に示す。

考   察
分析の結果,学級満足感と教師信頼感という学校環境の肯定的な認知が相談へのポジティブな期待を生み,友人や教師への相談意図に繋がることが示された。このことから,子どもの相談行動を促進するためには,学校の環境作りや学級の温かい人間関係作りのための土台作りの教育(文科省,2014)とその核となる教師の果たす役割の重要性が改めて明らかになった。

本研究は,平成28年度名古屋市子どもの自殺予防に関する調査研究事業補助金の助成を受けて実施した。