16:00 〜 18:00
[PF80] 自由記述データを用いた第二外国語教育の要点に関する探索的研究
捕獲率を用いた知見の飽和度の評価
キーワード:第二外国語教育, 自由記述データ, 捕獲率
目 的
現在,我が国の大学教育においては,1年次から英語と共に第二外国語の教育を行う教育機関が多く存在している。このような環境の中で学習指導を行うにあたり,複数の第二外国語の間で共通する教育上のポイントとなる知見を抽出することができれば,言語間で共通の学習指導上の履修者のニーズを指摘することができる点や,今後新たな第二外国語の講座を開設しようとする際に,既存の第二外国語共通の指導上の知見を踏まえることができる点で有益である。
よって本研究では日本の大学で第二外国語を学ぶ学生を調査対象に,彼らが望むよい第二外国語教育は何なのかを明らかにすることを目的に研究を行った。
方 法
日本国内の同一の私立大学で第二外国語を学ぶ大学生98名に,本研究が第二外国語教育に関する研究であることを説明した後で,協力に同意した大学生67名から自由記述型,多肢選択型の質問項目を含む調査票に対する回答を得た。調査の終了後,回答に欠損がみられた5名を除く62名から得た回答を分析した。
調査に用いた多肢選択型の回答項目はフェイス項目のみからなり,よい第二外国語教育についての質問はすべて自由記述型の回答項目だった。以下に質問文を記載する。
・問1:あなたにとってよい第二外国語の授業とは何ですか。
・問2:第二外国語学習において困難な点は何ですか。
・問3:大学の第二外国語教育に対して要望はありますか。
本研究では,まず自由記述型の質問項目に対してKJ法(川喜田, 1967)を用い,各問から得られた外国語教育に関連する知見の整理を行った。続いて,得られた知見の種類数に関して捕獲率(豊田・大橋・池原, 2013)の計算を行った。 最後に,得られた知見の吟味を行い,複数の言語を履修する学生達の第二外国語に対する意見や要望について吟味を行った。その際に,フェイス項目から協力者を中学校入学前から英語を履修していた≪中学以前群≫と,中学校入学以降に学び始めた≪中学以降群≫,調査時点で,英語または第二外国語を用いて留学を志望していると答えた≪留学志望群≫と,その予定はない≪非留学志望群≫,そして英語または第二外国語を就職に活かしたいと考えている≪仕事志望群≫と≪非仕事志望群≫に分類し,各サブグループにおける捕獲率について計算した。
結 果
協力者全体での捕獲率は問1が91.5%,問2が86.1%,問3が82.7%であった。また,各サブグループにおける捕獲率をTable1に掲載した。
本研究の結果から,全体での各問における捕獲率は十分であることが分かった。また,知見の収集が十分でないサブグループについても明らかとなった。捕獲率の十分である層から得られた知見からは,学生は「実用性があり,スモールステップで文法や発音,単語等の基礎が学べ,学習者間においてコミュニケーションをする機会の多い,楽しい授業」を「よい」と判断している傾向があることや,これまで学習してきた英語と第二外国語との混同について困難さを覚えていることが明らかとなった。そのため,現在の大学教育における環境では,各外国語における困難な項目を把握し,英語との比較や相違点などにも配慮した指導を行うことが必要である点が示唆された。
文 献
川喜田二郎 (1967). 「発想法:創造性開発のために」, 中公新書.
豊田秀樹・大橋洸太郎・池原一哉 (2013). 自由記述のカテゴリ化に伴う観点の飽和度としての捕獲率 「データ分析の理論と応用」 3,1-13.
現在,我が国の大学教育においては,1年次から英語と共に第二外国語の教育を行う教育機関が多く存在している。このような環境の中で学習指導を行うにあたり,複数の第二外国語の間で共通する教育上のポイントとなる知見を抽出することができれば,言語間で共通の学習指導上の履修者のニーズを指摘することができる点や,今後新たな第二外国語の講座を開設しようとする際に,既存の第二外国語共通の指導上の知見を踏まえることができる点で有益である。
よって本研究では日本の大学で第二外国語を学ぶ学生を調査対象に,彼らが望むよい第二外国語教育は何なのかを明らかにすることを目的に研究を行った。
方 法
日本国内の同一の私立大学で第二外国語を学ぶ大学生98名に,本研究が第二外国語教育に関する研究であることを説明した後で,協力に同意した大学生67名から自由記述型,多肢選択型の質問項目を含む調査票に対する回答を得た。調査の終了後,回答に欠損がみられた5名を除く62名から得た回答を分析した。
調査に用いた多肢選択型の回答項目はフェイス項目のみからなり,よい第二外国語教育についての質問はすべて自由記述型の回答項目だった。以下に質問文を記載する。
・問1:あなたにとってよい第二外国語の授業とは何ですか。
・問2:第二外国語学習において困難な点は何ですか。
・問3:大学の第二外国語教育に対して要望はありますか。
本研究では,まず自由記述型の質問項目に対してKJ法(川喜田, 1967)を用い,各問から得られた外国語教育に関連する知見の整理を行った。続いて,得られた知見の種類数に関して捕獲率(豊田・大橋・池原, 2013)の計算を行った。 最後に,得られた知見の吟味を行い,複数の言語を履修する学生達の第二外国語に対する意見や要望について吟味を行った。その際に,フェイス項目から協力者を中学校入学前から英語を履修していた≪中学以前群≫と,中学校入学以降に学び始めた≪中学以降群≫,調査時点で,英語または第二外国語を用いて留学を志望していると答えた≪留学志望群≫と,その予定はない≪非留学志望群≫,そして英語または第二外国語を就職に活かしたいと考えている≪仕事志望群≫と≪非仕事志望群≫に分類し,各サブグループにおける捕獲率について計算した。
結 果
協力者全体での捕獲率は問1が91.5%,問2が86.1%,問3が82.7%であった。また,各サブグループにおける捕獲率をTable1に掲載した。
本研究の結果から,全体での各問における捕獲率は十分であることが分かった。また,知見の収集が十分でないサブグループについても明らかとなった。捕獲率の十分である層から得られた知見からは,学生は「実用性があり,スモールステップで文法や発音,単語等の基礎が学べ,学習者間においてコミュニケーションをする機会の多い,楽しい授業」を「よい」と判断している傾向があることや,これまで学習してきた英語と第二外国語との混同について困難さを覚えていることが明らかとなった。そのため,現在の大学教育における環境では,各外国語における困難な項目を把握し,英語との比較や相違点などにも配慮した指導を行うことが必要である点が示唆された。
文 献
川喜田二郎 (1967). 「発想法:創造性開発のために」, 中公新書.
豊田秀樹・大橋洸太郎・池原一哉 (2013). 自由記述のカテゴリ化に伴う観点の飽和度としての捕獲率 「データ分析の理論と応用」 3,1-13.