10:00 〜 12:00
[PG01] 学科の専門性と「就業力」についての縦断調査研究
大学生を対象として
キーワード:就業力, 学科, 青年期発達
問題と目的
後期青年期に位置する大学生の発達課題には,職業へのアイデンティティ(Erikson,E.H.,1959)がある。関連して昨今では,大学生が大学期間中に身につけることとして望まれる力,「就業力」の用語が大学で用いられている。「就業力」とは,2010年に文部科学省が「学生が卒業後,自らの素質を向上させ,社会的・職業的自立を図るために必要な能力」と定義したもので,全国180の大学・短期大学を対象に「大学生の就業力育成支援事業」を展開した。しかし現状では「就業力」を具体的に測る統一の指標があるわけではなく,大学生が在学期間の学びを通して具体的にどのような「就業力」を獲得,または向上させているかは不明確なため,これから検証していく必要があるだろう。
本研究の調査協力校では,2010年度より現在に至るまで,同事業の一環として,同大学が独自に作成した「就業力アンケート」を,基本的に全学年全学生を対象に毎年4月に実施している。発表者らはこの調査データが,後期青年期である大学生の心理発達の実態を捉えた縦断研究の題材となり得ることに着目し,分析を行ってきた(中村・池,2016:池・中村・石崎,2017)。その結果,大学生が4年間の大学生活を通して,1)「就業力」を構成する9因子中,8つの因子を向上させていたこと,2)就業力の下位因子ごとに,向上する時期や段階が異なることを明らかにした。
今回の発表では,学科の専門分野と大学生の「就業力」の発達には特徴があるのか,更に検討をしていきたい。
方 法
1. 調査対象
公立A大学B学部に2010年度入学した大学生全員で,本調査に回答した180名の内,回答に不備のあった者や卒業時まで継続調査ができなかった者を除く134名(男性26名,女性108名,入学時平均年齢18.06歳,SD=0.24)を分析対象とした。
2. 比較時期・学科
2010年4月(1年次),2012年4月(3年次),2013年4月(4年次)の計3回を比較した。新入時は大学生が大学教育を受ける以前の高校までの能力が分かる初年次であること,3年次は大学での基礎的な学びを経てゼミに入る中間の年次であること,4年次は大学の学びを終える卒業年次であることが3時期を比較する理由である。
比較する学科は社会学系学科,福祉学系学科,教育・心理学系学科の3学科とした。1年次の調査協力者数を基準とした際の4年次の継続調査率は,社会学系学科(78.8%),福祉系学科(88.3%),教育・心理学系学科(94.6%)であった。
3. 調査内容
公立A大学「就業力アンケート調査」を使用した。同大学は,「就業力」を「幅広い職業人としての職業開拓力および社会的強み(社会貢献力)を兼ね備えている力」と定義し,大学生に記名式調査票を一斉に配布し,悉皆調査を現在に至るまで毎年継続している。この調査票を発表者らで因子分析し,信頼性・妥当性を検討して抽出された9因子(中村・池,2016)を今回の分析に用いた。
結果と考察
学科および時期を独立変数,就業力下位9因子を従属変数とした2要因分散分析(3×3)を行った。その結果,「1.討論における能力」「2.将来展望の明確さ」「4.周囲との協調性」「8.自己理解」で交互作用並びに主効果が認められた。単純主効果検定で有意であった部分について,Bonferroniの多重比較を行った結果,学科の違いや時期によって有意差が認められた。学科の専門分野と大学生の「就業力」の獲得・向上やピークには発達的特徴があることが考えられた。
後期青年期に位置する大学生の発達課題には,職業へのアイデンティティ(Erikson,E.H.,1959)がある。関連して昨今では,大学生が大学期間中に身につけることとして望まれる力,「就業力」の用語が大学で用いられている。「就業力」とは,2010年に文部科学省が「学生が卒業後,自らの素質を向上させ,社会的・職業的自立を図るために必要な能力」と定義したもので,全国180の大学・短期大学を対象に「大学生の就業力育成支援事業」を展開した。しかし現状では「就業力」を具体的に測る統一の指標があるわけではなく,大学生が在学期間の学びを通して具体的にどのような「就業力」を獲得,または向上させているかは不明確なため,これから検証していく必要があるだろう。
本研究の調査協力校では,2010年度より現在に至るまで,同事業の一環として,同大学が独自に作成した「就業力アンケート」を,基本的に全学年全学生を対象に毎年4月に実施している。発表者らはこの調査データが,後期青年期である大学生の心理発達の実態を捉えた縦断研究の題材となり得ることに着目し,分析を行ってきた(中村・池,2016:池・中村・石崎,2017)。その結果,大学生が4年間の大学生活を通して,1)「就業力」を構成する9因子中,8つの因子を向上させていたこと,2)就業力の下位因子ごとに,向上する時期や段階が異なることを明らかにした。
今回の発表では,学科の専門分野と大学生の「就業力」の発達には特徴があるのか,更に検討をしていきたい。
方 法
1. 調査対象
公立A大学B学部に2010年度入学した大学生全員で,本調査に回答した180名の内,回答に不備のあった者や卒業時まで継続調査ができなかった者を除く134名(男性26名,女性108名,入学時平均年齢18.06歳,SD=0.24)を分析対象とした。
2. 比較時期・学科
2010年4月(1年次),2012年4月(3年次),2013年4月(4年次)の計3回を比較した。新入時は大学生が大学教育を受ける以前の高校までの能力が分かる初年次であること,3年次は大学での基礎的な学びを経てゼミに入る中間の年次であること,4年次は大学の学びを終える卒業年次であることが3時期を比較する理由である。
比較する学科は社会学系学科,福祉学系学科,教育・心理学系学科の3学科とした。1年次の調査協力者数を基準とした際の4年次の継続調査率は,社会学系学科(78.8%),福祉系学科(88.3%),教育・心理学系学科(94.6%)であった。
3. 調査内容
公立A大学「就業力アンケート調査」を使用した。同大学は,「就業力」を「幅広い職業人としての職業開拓力および社会的強み(社会貢献力)を兼ね備えている力」と定義し,大学生に記名式調査票を一斉に配布し,悉皆調査を現在に至るまで毎年継続している。この調査票を発表者らで因子分析し,信頼性・妥当性を検討して抽出された9因子(中村・池,2016)を今回の分析に用いた。
結果と考察
学科および時期を独立変数,就業力下位9因子を従属変数とした2要因分散分析(3×3)を行った。その結果,「1.討論における能力」「2.将来展望の明確さ」「4.周囲との協調性」「8.自己理解」で交互作用並びに主効果が認められた。単純主効果検定で有意であった部分について,Bonferroniの多重比較を行った結果,学科の違いや時期によって有意差が認められた。学科の専門分野と大学生の「就業力」の獲得・向上やピークには発達的特徴があることが考えられた。