10:00 〜 12:00
[PG16] 発達障害のある生徒への捉え方に影響を及ぼした要因に関する検討
キーワード:発達障害, 仲間関係, 特別支援教育
問題と目的
文部科学省(2012)によると,公立小中学校の通常学級には発達障害の可能性のある児童生徒が6.5%程度の割合で在籍しているとされる。このような現状を受け,発達障害児の仲間関係に関する研究や学級適応に関する研究は行われてきたが,周囲の生徒側が発達障害児をどのように理解し,関係を形成しているのかについての検討はこれまで十分に行われてこなかった。 青年前期にあたる中学生の子どもは同質性を重視した友人関係を求め,異質な友人を拒否しようとする心性が生じること(高坂,2010)や,集団に受け入れられたいという欲求の影響下では,周囲に同調的な行動をとりやすいこと(宮島ら,2008)などが明らかにされている。このような中学生の心性を踏まえると,障害を理解し仲間へ受容する必要性を感じたとしても,仲間としての受容や援助行動の生起に必ずしも直接的に繋がらず,他者の発達障害児への態度や行動に影響を受けて,発達障害児への捉え方や接し方が変化する可能性が考えられる。
そこで,本研究では中学生において発達障害のある生徒との出会い以降,捉え方や接し方には何らかの変化がみられるのか,そしてその変化には対人関係要因を含めどのような要因が影響するかを探索的に検討することを目的とする。
方 法
調査協力者 18歳以上の大学生,大学院生16名(女性8名,男性8名)。
調査手続き 調査協力者の障害への知識や認知の差異から,様々な捉え方や接し方が存在していることが考えられるため,より多様なデータを得ることのできる半構造化面接を採用した。20XX年11月から12月にかけて実施した。
調査内容 1)定型発達児同士の関係,2)発達障害があると思われる生徒との関係,3)自分以外の生徒と発達障害が思われる生徒との関係,4)捉え方,接し方の変化,5)発達障害に関する知識や理解。質問には中学時代を回顧し答えるよう伝えた。
分析 KJ法を援用して類型化を行った。なお,想起された生徒に実際に発達障害があるのかは判断できないため,「発達障害があると思われる生徒」という表記を用いる。
結果と考察
発達障害があると思われる生徒の捉え方の変化
「発達障害があると思われる生徒」との出会いから中学卒業時までの期間における捉え方の変化をKJ法により分類した結果,(1)変化が見られない「変化なし」,(2)否定的に変化する「否定的変化」,(3)肯定的に変化する「肯定的変化」に分類された。さらに「否定的変化」は,1)相互関連型(周囲の影響と想起した同級生本人の起こした問題が合わさって生じた変化),2)強化型(自身の認識を周囲によって強める変化),3)自己保身型(周囲の影響に対して自分の身を案じて生じた変化)の下位要因に分類された。
発達障害があると思われる生徒の捉え方の変化に影響を及ぼす要因
KJ法の結果,捉え方の変化に影響を及ぼした要因に関して,(1)周囲の人間との関係や周囲の人間の行動が影響を及ぼした「対人要因」,(2)発達障害があると思われる生徒に関与した時期の長さが影響を及ぼした「関係持続要因」,(3)関与の度合いが影響を及ぼした「関与度要因」に分類した。
まず,全ての変化に「対人要因」がみられた。このうち,「否定的変化」及び「肯定的変化」は,本人が「発達障害があると思われる生徒」をどのように捉えているかに関わらず,周囲の人間の捉え方や接し方に影響を受けて生じた変化と考えられる。特に「否定的変化」における語りからは,発達障害があると思われる生徒を異質と見なすことが排除や回避の直接の原因となるのではなく,周囲の意見や行動を取り入れることがそれらを引き起こす原因となることが示唆された。これは同質性を重視する中学生の対人特性と一致するものであり,この同質性が捉え方や接し方に影響するものと考えられる。
次に,「関係持続要因」は,「変化なし」と「肯定的変化」にみられた。その中でも最も多くの語りを得られたのが「肯定的変化」であった。このことは「発達障害があると思われる生徒」との関係が長く継続するほど,生徒への捉え方が肯定的に変化していくことが示唆された。
さらに,「関与度要因」は「変化なし」にのみみられた。これは捉え方や接し方に変化が起こるためにはある程度の関与が前提となることが考えられる。関与度の低さの背景には,本人と「発達障害があると思われる生徒」の性別の差異や,「発達障害があると思われる生徒」が特別支援学級に在籍しており,学校内での生活場面が離れていたことなどが考えられる。
文部科学省(2012)によると,公立小中学校の通常学級には発達障害の可能性のある児童生徒が6.5%程度の割合で在籍しているとされる。このような現状を受け,発達障害児の仲間関係に関する研究や学級適応に関する研究は行われてきたが,周囲の生徒側が発達障害児をどのように理解し,関係を形成しているのかについての検討はこれまで十分に行われてこなかった。 青年前期にあたる中学生の子どもは同質性を重視した友人関係を求め,異質な友人を拒否しようとする心性が生じること(高坂,2010)や,集団に受け入れられたいという欲求の影響下では,周囲に同調的な行動をとりやすいこと(宮島ら,2008)などが明らかにされている。このような中学生の心性を踏まえると,障害を理解し仲間へ受容する必要性を感じたとしても,仲間としての受容や援助行動の生起に必ずしも直接的に繋がらず,他者の発達障害児への態度や行動に影響を受けて,発達障害児への捉え方や接し方が変化する可能性が考えられる。
そこで,本研究では中学生において発達障害のある生徒との出会い以降,捉え方や接し方には何らかの変化がみられるのか,そしてその変化には対人関係要因を含めどのような要因が影響するかを探索的に検討することを目的とする。
方 法
調査協力者 18歳以上の大学生,大学院生16名(女性8名,男性8名)。
調査手続き 調査協力者の障害への知識や認知の差異から,様々な捉え方や接し方が存在していることが考えられるため,より多様なデータを得ることのできる半構造化面接を採用した。20XX年11月から12月にかけて実施した。
調査内容 1)定型発達児同士の関係,2)発達障害があると思われる生徒との関係,3)自分以外の生徒と発達障害が思われる生徒との関係,4)捉え方,接し方の変化,5)発達障害に関する知識や理解。質問には中学時代を回顧し答えるよう伝えた。
分析 KJ法を援用して類型化を行った。なお,想起された生徒に実際に発達障害があるのかは判断できないため,「発達障害があると思われる生徒」という表記を用いる。
結果と考察
発達障害があると思われる生徒の捉え方の変化
「発達障害があると思われる生徒」との出会いから中学卒業時までの期間における捉え方の変化をKJ法により分類した結果,(1)変化が見られない「変化なし」,(2)否定的に変化する「否定的変化」,(3)肯定的に変化する「肯定的変化」に分類された。さらに「否定的変化」は,1)相互関連型(周囲の影響と想起した同級生本人の起こした問題が合わさって生じた変化),2)強化型(自身の認識を周囲によって強める変化),3)自己保身型(周囲の影響に対して自分の身を案じて生じた変化)の下位要因に分類された。
発達障害があると思われる生徒の捉え方の変化に影響を及ぼす要因
KJ法の結果,捉え方の変化に影響を及ぼした要因に関して,(1)周囲の人間との関係や周囲の人間の行動が影響を及ぼした「対人要因」,(2)発達障害があると思われる生徒に関与した時期の長さが影響を及ぼした「関係持続要因」,(3)関与の度合いが影響を及ぼした「関与度要因」に分類した。
まず,全ての変化に「対人要因」がみられた。このうち,「否定的変化」及び「肯定的変化」は,本人が「発達障害があると思われる生徒」をどのように捉えているかに関わらず,周囲の人間の捉え方や接し方に影響を受けて生じた変化と考えられる。特に「否定的変化」における語りからは,発達障害があると思われる生徒を異質と見なすことが排除や回避の直接の原因となるのではなく,周囲の意見や行動を取り入れることがそれらを引き起こす原因となることが示唆された。これは同質性を重視する中学生の対人特性と一致するものであり,この同質性が捉え方や接し方に影響するものと考えられる。
次に,「関係持続要因」は,「変化なし」と「肯定的変化」にみられた。その中でも最も多くの語りを得られたのが「肯定的変化」であった。このことは「発達障害があると思われる生徒」との関係が長く継続するほど,生徒への捉え方が肯定的に変化していくことが示唆された。
さらに,「関与度要因」は「変化なし」にのみみられた。これは捉え方や接し方に変化が起こるためにはある程度の関与が前提となることが考えられる。関与度の低さの背景には,本人と「発達障害があると思われる生徒」の性別の差異や,「発達障害があると思われる生徒」が特別支援学級に在籍しており,学校内での生活場面が離れていたことなどが考えられる。