10:00 AM - 12:00 PM
[PG25] NPO法人発達障害療育センター学習教室での学習支援
知的障害がある中学生,高校生に対する学習支援
Keywords:発達障害
はじめに
NPO法人発達障害療育センター学習教室で,知的障害がある中学生,高校生の学習支援を行った。それぞれの生徒の学習到達度や特徴に合わせて学習課題を選択・作成し,実施した。この学習支援について報告する。
知的障害がある中学生に対する学習支援
1)支援対象生徒
特別支援学校に通う中学2年生男子。読み書きが困難で会話が成り立たない。注視が成り立たない。知的障害がある。
2)学習支援
2週間に1回の頻度で金曜日午後,学習教室に来てもらい,学習支援を行った。この学習支援の注目すべき内容を報告する。
a)パソコン画面に表示される簡単なひらがな単語を見ながら,それと同じ単語をタイピングする課題を行った。この課題で食べ物の単語や,食べ物でないゆり,はし,はと,くも等の単語をタイピングするときによく「おいしい?」と聞いてくること。
b)休憩時間のとき,主に生徒が好きなアンパンマン等の音楽CDを聞きながら先生と生徒で対話した。このときによく「パン食べる?うまい?」と聞いてくること。パンだけでなくビール,キムチ,梅酒等食べ物について聞いてくること。また,学習教室に来て学習教室に入ってすぐに「ビール飲む?」と聞いてくることもあった。
c)先生はメイン講師のT1先生とサブ講師のT2先生の2人いるが,T2先生に対してはよく「T2先生大好き。」と言うが,T1先生に対しては言わないこと。また,T1先生が生徒に教えている様子をT2先生が見ているときに,T2先生によく「ねむい?」と聞いてくること。さらに,T2先生に「においをかがして。」と言ったこともあった。しかし,T1先生に対しては言わなかった。
知的障害がある高校生に対する学習支援
1)支援対象生徒
養護学校に通う高校2年生男子。普通に話すことができない。突然笑いだしたり叫んだりする。知的障害がある。
2)学習支援
毎週金曜日夕方に学習教室に来てもらい,学習支援を行った。この学習支援の注目すべき内容を報告する。
a)パソコン画面に実際の人の写真を表示させ,その人の気持ちについて答える課題を行った。一般の中学生,高校生ならば誰でもできるごく簡単な課題である。また,次週以降は選択する気持ちの順番を並べかえただけで実質的には前回と同じ問題を出して生徒の学習の変化をみた。この課題ではじめの頃は間違え数が多かった。また,前回正解した問題を間違えたときもよくあった。しかし,回数が多くなるに連れて次第に間違え数が少なくなっていった。
b)中学生の場合と違って,食べ物やにおいについて頻繁に言わないが,中学生の影響によるためか,たまに突然「いただきま~す。もぐもぐ。」と言ったり,たまに突然「いいにお~い。」と言ったり,たまに突然「むしゃむしゃ。」と言ったりするときがあった。
c)中学生の場合と違って,T2先生よりもT1先生に対してやや反抗的であった。T1先生は生徒に注意したり見下したような対応をよくしたが,それに応じてT1先生に対して強く反抗していた。また,先生のテンションが低いときや,先生が生徒の対応に困っていたときにそれに反応して変に笑いだしたりしたときがあった。
d)先生の近くで平気で大きな咳をしたり,のどをガラガラさせたりするときがよくあった。
考 察
知的障害がある発達障害の生徒は他者の心情を理解することができないといわれているが,この学習支援において生徒の様子について考えると,他者の心情を理解している場合があることが考えられる。中学生の場合,T1先生とT2先生とでは態度が違い,T2先生が嫌がることをよくしたこと。高校生の場合,T2先生よりもT1先生に対してやや反抗的でT2先生の否定的な態度によって強く反抗していたこと。先生のテンションが低いときや,先生が生徒の対応に困っていたときに変に笑いだしたりしたことなどから,先生によって態度が違い,先生の心情を理解している場合があることが考えられる。また,食べ物やにおいに敏感であり,食べ物と食べ物でないものとの区別ができない可能性があることも驚くべきことである。さらに,中学生と高校生の場合違うことから知的障害がある発達障害には個人差があることがわかる。
NPO法人発達障害療育センター学習教室で,知的障害がある中学生,高校生の学習支援を行った。それぞれの生徒の学習到達度や特徴に合わせて学習課題を選択・作成し,実施した。この学習支援について報告する。
知的障害がある中学生に対する学習支援
1)支援対象生徒
特別支援学校に通う中学2年生男子。読み書きが困難で会話が成り立たない。注視が成り立たない。知的障害がある。
2)学習支援
2週間に1回の頻度で金曜日午後,学習教室に来てもらい,学習支援を行った。この学習支援の注目すべき内容を報告する。
a)パソコン画面に表示される簡単なひらがな単語を見ながら,それと同じ単語をタイピングする課題を行った。この課題で食べ物の単語や,食べ物でないゆり,はし,はと,くも等の単語をタイピングするときによく「おいしい?」と聞いてくること。
b)休憩時間のとき,主に生徒が好きなアンパンマン等の音楽CDを聞きながら先生と生徒で対話した。このときによく「パン食べる?うまい?」と聞いてくること。パンだけでなくビール,キムチ,梅酒等食べ物について聞いてくること。また,学習教室に来て学習教室に入ってすぐに「ビール飲む?」と聞いてくることもあった。
c)先生はメイン講師のT1先生とサブ講師のT2先生の2人いるが,T2先生に対してはよく「T2先生大好き。」と言うが,T1先生に対しては言わないこと。また,T1先生が生徒に教えている様子をT2先生が見ているときに,T2先生によく「ねむい?」と聞いてくること。さらに,T2先生に「においをかがして。」と言ったこともあった。しかし,T1先生に対しては言わなかった。
知的障害がある高校生に対する学習支援
1)支援対象生徒
養護学校に通う高校2年生男子。普通に話すことができない。突然笑いだしたり叫んだりする。知的障害がある。
2)学習支援
毎週金曜日夕方に学習教室に来てもらい,学習支援を行った。この学習支援の注目すべき内容を報告する。
a)パソコン画面に実際の人の写真を表示させ,その人の気持ちについて答える課題を行った。一般の中学生,高校生ならば誰でもできるごく簡単な課題である。また,次週以降は選択する気持ちの順番を並べかえただけで実質的には前回と同じ問題を出して生徒の学習の変化をみた。この課題ではじめの頃は間違え数が多かった。また,前回正解した問題を間違えたときもよくあった。しかし,回数が多くなるに連れて次第に間違え数が少なくなっていった。
b)中学生の場合と違って,食べ物やにおいについて頻繁に言わないが,中学生の影響によるためか,たまに突然「いただきま~す。もぐもぐ。」と言ったり,たまに突然「いいにお~い。」と言ったり,たまに突然「むしゃむしゃ。」と言ったりするときがあった。
c)中学生の場合と違って,T2先生よりもT1先生に対してやや反抗的であった。T1先生は生徒に注意したり見下したような対応をよくしたが,それに応じてT1先生に対して強く反抗していた。また,先生のテンションが低いときや,先生が生徒の対応に困っていたときにそれに反応して変に笑いだしたりしたときがあった。
d)先生の近くで平気で大きな咳をしたり,のどをガラガラさせたりするときがよくあった。
考 察
知的障害がある発達障害の生徒は他者の心情を理解することができないといわれているが,この学習支援において生徒の様子について考えると,他者の心情を理解している場合があることが考えられる。中学生の場合,T1先生とT2先生とでは態度が違い,T2先生が嫌がることをよくしたこと。高校生の場合,T2先生よりもT1先生に対してやや反抗的でT2先生の否定的な態度によって強く反抗していたこと。先生のテンションが低いときや,先生が生徒の対応に困っていたときに変に笑いだしたりしたことなどから,先生によって態度が違い,先生の心情を理解している場合があることが考えられる。また,食べ物やにおいに敏感であり,食べ物と食べ物でないものとの区別ができない可能性があることも驚くべきことである。さらに,中学生と高校生の場合違うことから知的障害がある発達障害には個人差があることがわかる。