10:00 〜 12:00
[PG27] ふりかえりシートの導入によるクラス会議の話し合いの質改善の試み
キーワード:協同学習, ふりかえり, 話し合い活動のスキル
問題と目的
クラス会議は学習者の社会的スキルや問題解決能力を高め,学級への適応を促す可能性があることが示唆されているが(ネルソンら,2000),これまでその効果は実践者の主観的な観察や経験から論じられることが多く,科学的な手法を用いて検証を行った研究は多くない。そこで本研究では,より科学的な手法でクラス会議の効果を検証することを目指す。クラス会議によって相互扶助的な学級風土ができれば,学習の場面においても友達と協力し助け合おうとする傾向が高まると仮説を立て,クラス会議の実施により「協同学習に対する有効性の認識」が向上するか検証する。加えて,クラス会議の効果に影響を与える要因として「話し合い活動のスキル」に焦点をあて,話し合いスキルが「協同学習に対する有効性の認識」に影響を与えるかを合わせて検討する。
方 法
調査対象者と時期
中学3年生1クラス(男子17名,女子20名,計37名)を対象に,2015年9~12月に実施した。参加者は,この調査を行う前年度にクラス会議を経験している。
質問紙
協同学習認識尺度:長濱ら(2009)を参考に作成した。因子分析を行い,協同効用因子(α=.86),個人志向因子(α=.80)の2因子が得られた。
ふりかえりシート
「クラス会議における話し合いスキル10項目の自己評価」「次回の目標の設定」「前回目標に設定したスキルの改善度」の3領域から構成される。
手続き
事前・事後調査として質問紙調査を行った。クラス会議は全4回実施され,各回の進行は生徒が行い,議題に対して小グループでの話し合いをした後に全体で意見が共有された。クラス会議終了後,ふりかえりシートの記入を行った。
結果と考察
(1)クラス会議の効果の検討
クラス会議の実施は協同学習に対する有効性の認識を向上させるかを検討するため,時期×因子種類(協同効用因子,個人志向因子)の2要因分散分析を行った結果,時期の主効果は認められなかった。
(2)話し合いスキルと協同学習の有効性認識の関連
話し合いのスキルは協同学習に対する有効性の認識に影響を与えるかを検討するため,全日程のスキルの自己評価得点と事前調査の協同効用因子の下位尺度得点を説明変数とし,事後調査の協同効用因子の下位尺度得点を目的変数として,ステップワイズ法による重回帰分析を行った。その結果,事後調査の協同効用因子に対して「事前調査の協同効用因子」「第3回11/16の聞き方スキル」「第4回12/9要約スキル」が正の影響を及ぼしていた。
今回は実施回数の少なさや対象者の協同志向が事前調査の時点で高かったこともあり,クラス会議の効果として想定していた協同学習の有効性の認識の向上は認められなかった。しかし,話し手の意見を理解しようとしながら聞いたり,多くの意見の類似点をまとめて要約する発言ができた学習者は,協同学習に対する有効性の認識が高くなることが示唆された。したがって,この2つのスキルについての指導を重点的に行うことで,学習者の協同学習に対する有効性の認識を向上させることができる可能性がある。
クラス会議は学習者の社会的スキルや問題解決能力を高め,学級への適応を促す可能性があることが示唆されているが(ネルソンら,2000),これまでその効果は実践者の主観的な観察や経験から論じられることが多く,科学的な手法を用いて検証を行った研究は多くない。そこで本研究では,より科学的な手法でクラス会議の効果を検証することを目指す。クラス会議によって相互扶助的な学級風土ができれば,学習の場面においても友達と協力し助け合おうとする傾向が高まると仮説を立て,クラス会議の実施により「協同学習に対する有効性の認識」が向上するか検証する。加えて,クラス会議の効果に影響を与える要因として「話し合い活動のスキル」に焦点をあて,話し合いスキルが「協同学習に対する有効性の認識」に影響を与えるかを合わせて検討する。
方 法
調査対象者と時期
中学3年生1クラス(男子17名,女子20名,計37名)を対象に,2015年9~12月に実施した。参加者は,この調査を行う前年度にクラス会議を経験している。
質問紙
協同学習認識尺度:長濱ら(2009)を参考に作成した。因子分析を行い,協同効用因子(α=.86),個人志向因子(α=.80)の2因子が得られた。
ふりかえりシート
「クラス会議における話し合いスキル10項目の自己評価」「次回の目標の設定」「前回目標に設定したスキルの改善度」の3領域から構成される。
手続き
事前・事後調査として質問紙調査を行った。クラス会議は全4回実施され,各回の進行は生徒が行い,議題に対して小グループでの話し合いをした後に全体で意見が共有された。クラス会議終了後,ふりかえりシートの記入を行った。
結果と考察
(1)クラス会議の効果の検討
クラス会議の実施は協同学習に対する有効性の認識を向上させるかを検討するため,時期×因子種類(協同効用因子,個人志向因子)の2要因分散分析を行った結果,時期の主効果は認められなかった。
(2)話し合いスキルと協同学習の有効性認識の関連
話し合いのスキルは協同学習に対する有効性の認識に影響を与えるかを検討するため,全日程のスキルの自己評価得点と事前調査の協同効用因子の下位尺度得点を説明変数とし,事後調査の協同効用因子の下位尺度得点を目的変数として,ステップワイズ法による重回帰分析を行った。その結果,事後調査の協同効用因子に対して「事前調査の協同効用因子」「第3回11/16の聞き方スキル」「第4回12/9要約スキル」が正の影響を及ぼしていた。
今回は実施回数の少なさや対象者の協同志向が事前調査の時点で高かったこともあり,クラス会議の効果として想定していた協同学習の有効性の認識の向上は認められなかった。しかし,話し手の意見を理解しようとしながら聞いたり,多くの意見の類似点をまとめて要約する発言ができた学習者は,協同学習に対する有効性の認識が高くなることが示唆された。したがって,この2つのスキルについての指導を重点的に行うことで,学習者の協同学習に対する有効性の認識を向上させることができる可能性がある。