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[PG41] 学びの習熟化とテストとの関わり
テストで点を取ることは、点を取るだけのことなのか?
Keywords:中学生, テスト, 発達
はじめに
経験を多く反映させている場合を習熟段階,そうでないものを初期段階と考え,初期段階にある中1生と習熟した中3生では,定期テストや受験勉強の仕方に大きな質的違いがあると予想できる。学びの質的違いをベイトソンの学習理論(Bateson,1987)やミラーの3層包括論(Miller,1988)を参考にして,次の3つの層に分けて考える。主に反復練習することで学習内容を知識として取り込んでいく(学び1)。関連づけや筋道を立てた理解で知識の定着を図り,さらに先を予想して使いやすい形に整理しておく(学び2)。自らの力で失敗の原因や問題点を発見し,解決のための手段を工夫し,それを実行することで目標に近づく努力をする(学び3)。習熟化にともなう,学びの3つの層と模試との相関の推移を考察する。
方 法
調査対象・時期 進学を重視した東北地方にある中高一貫の私立中学1年~3年(12歳~15歳)を対象とし平成26年~28年にそれぞれ7月と12月の年2回,質問紙による調査を行った。中1・7月85件(男49名分 女36名分)中1・12月98件
(男50名分 女48名分)中2・7月88件(男33名分 女55名分)中2・12月87件(男37名分 女50名分)中3・7月63件(男29名分 女34名分)中3・12月68件(男33名分 女35名分)合計489件(男231名分 女258名分)である。
評価法 学びのレベルを学び1~3の3つの階層に分けそれぞれ20項目ずつ,合計60項目の具体的な内容に落とし込んだ質問紙SANZOを作成した。それをもとに生徒が「(1)全くできていない」から「(4)よくできている」の4件法を自己評価する形で実施し,学びごとの得点を4×20=80点満点として集計した。また学校の指導で4月と10月に受験している業者全国総合模試の偏差値を,模試のデータとして利用した。なおデータの使用については,学校側に説明し承諾を得ている。
結果と考察
学びのレベルごとの得点と,その直後に実施された全国総合模試の偏差値との相関係数を求めた。
学年が上がるにつれ学び1,学び2,学び3と模試との間に低い相関が現れる。これは学びが習熟するにつれ,学びの3つの層すべての方略を利用して模試と対峙するためと考えられる。一方,中3になると模試との相関に急激な低下が見られる。中2~中3以降では学習に対する動機づけが低下する報告があり,これが原因かもしれない。
学びの得点の急な上昇は,その学びレベルに対応する手段や方略への関心の高まりを表すと考えられる。一要因分散分析の結果,時期ごと得点平
均は学び1がF(7,593)=8.820,p<.001,学び2がF(7,593)=16.378,p<.001,学び3がF(7,593)=21.934,p<.001で有意であった。
さらにTukey法による多重比較の結果,中1年7月を基準にとると学び1,学び3では中1年12月以降との差が,学び2の場合は中2年12月以降との差がそれぞれ0.1%水準で有意となった。この結果と模試との相関を比較すると,学び1の方略は努力すればすぐ結果につながるが,学び2,学び3の方略は結果に結びつけるには半年から年単位の努力が必要であることがわかった。
経験を多く反映させている場合を習熟段階,そうでないものを初期段階と考え,初期段階にある中1生と習熟した中3生では,定期テストや受験勉強の仕方に大きな質的違いがあると予想できる。学びの質的違いをベイトソンの学習理論(Bateson,1987)やミラーの3層包括論(Miller,1988)を参考にして,次の3つの層に分けて考える。主に反復練習することで学習内容を知識として取り込んでいく(学び1)。関連づけや筋道を立てた理解で知識の定着を図り,さらに先を予想して使いやすい形に整理しておく(学び2)。自らの力で失敗の原因や問題点を発見し,解決のための手段を工夫し,それを実行することで目標に近づく努力をする(学び3)。習熟化にともなう,学びの3つの層と模試との相関の推移を考察する。
方 法
調査対象・時期 進学を重視した東北地方にある中高一貫の私立中学1年~3年(12歳~15歳)を対象とし平成26年~28年にそれぞれ7月と12月の年2回,質問紙による調査を行った。中1・7月85件(男49名分 女36名分)中1・12月98件
(男50名分 女48名分)中2・7月88件(男33名分 女55名分)中2・12月87件(男37名分 女50名分)中3・7月63件(男29名分 女34名分)中3・12月68件(男33名分 女35名分)合計489件(男231名分 女258名分)である。
評価法 学びのレベルを学び1~3の3つの階層に分けそれぞれ20項目ずつ,合計60項目の具体的な内容に落とし込んだ質問紙SANZOを作成した。それをもとに生徒が「(1)全くできていない」から「(4)よくできている」の4件法を自己評価する形で実施し,学びごとの得点を4×20=80点満点として集計した。また学校の指導で4月と10月に受験している業者全国総合模試の偏差値を,模試のデータとして利用した。なおデータの使用については,学校側に説明し承諾を得ている。
結果と考察
学びのレベルごとの得点と,その直後に実施された全国総合模試の偏差値との相関係数を求めた。
学年が上がるにつれ学び1,学び2,学び3と模試との間に低い相関が現れる。これは学びが習熟するにつれ,学びの3つの層すべての方略を利用して模試と対峙するためと考えられる。一方,中3になると模試との相関に急激な低下が見られる。中2~中3以降では学習に対する動機づけが低下する報告があり,これが原因かもしれない。
学びの得点の急な上昇は,その学びレベルに対応する手段や方略への関心の高まりを表すと考えられる。一要因分散分析の結果,時期ごと得点平
均は学び1がF(7,593)=8.820,p<.001,学び2がF(7,593)=16.378,p<.001,学び3がF(7,593)=21.934,p<.001で有意であった。
さらにTukey法による多重比較の結果,中1年7月を基準にとると学び1,学び3では中1年12月以降との差が,学び2の場合は中2年12月以降との差がそれぞれ0.1%水準で有意となった。この結果と模試との相関を比較すると,学び1の方略は努力すればすぐ結果につながるが,学び2,学び3の方略は結果に結びつけるには半年から年単位の努力が必要であることがわかった。