日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PG(01-81)

ポスター発表 PG(01-81)

2017年10月9日(月) 10:00 〜 12:00 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 〜 12:00

[PG46] 保育施設における園庭の実践と価値観の検討

辻谷真知子1, 秋田喜代美2, 杉本貴代3, 石田佳織#4, 宮田まり子#5, 宮本雄太#6 (1.東京大学大学院, 2.東京大学, 3.愛知大学, 4.園庭研究所, 5.白梅学園大学, 6.東京大学大学院)

キーワード:園庭, 保育, 実践

問題と目的
 本研究の目的は,園庭における実践と施設の価値観との関連について検討することである。近年,乳幼児が安心して活動できる屋外環境の減少等から,園庭の役割は一層高まってきている。園庭環境ではハード面の実態だけでなく,遊び場への意味づけやルール設定等の実践も施設間で相違がみられている(石田他, 2017; 辻谷他, 2017)。それらの実践には,物理的な環境だけではなく各施設の価値観が関わっていると考えられる。よって本研究では,園庭に関する質問紙調査より,各施設が園庭において実施・重視している内容について検討する。
方   法
 国内の1744の保育・幼児教育施設から回答を得た質問紙のうち,園庭のある1659施設の回答を今回の分析対象とした。実施時期は2016年11月〜翌1月である。結果より,1「園庭で実施している程度」(以下「実施度」)「大切だと思う程度」(以下「重視度」)について5件法で程度を尋ねる各9項目の回答をもとにt検定により項目の特徴を検討した。2因子分析(最尤法・プロマックス回転)を実施し各構造を検討した。3「子どもの経験として大切だと思う順」を5項目の順位法で尋ねた結果との関連を検討した。
結果1 「実施度」「重視度」の9項目中「子どもの遊びの様子を見て回る」「子ども同士の関わる機会を作る」の2項目は平均値が高く,重視し実施する施設が多いことが示された。9項目とも,重視度の平均が実施度よりも有意に高く(p<.001),標準偏差は実施度の方が大きかった。実施度と重視度の差は「自然を生かした活動を計画する」(平均値差.84, t(1612)= 36.5, p<.001, d=2)で最も大きかった。
結果2 因子分析の結果,各2因子が抽出された。いずれも,因子Ⅰは「難易度の高い活動を指導する」など主に保育者が直接的に設定する活動,因子Ⅱは「子どもの遊びを見て回る」など保育者が間接的に関与する活動の内容であることから,「実施」は「保育者実施(Ⅰ)」「子ども実施(Ⅱ)」,「大切」は「保育者価値(Ⅰ)」「子ども価値(Ⅱ)」と命名した。
結果3 「保育者実施」得点(M= 20.0, SD= 4.09),「保育者価値」得点(M= 22.6, SD= 3.93)について,3の順位との関連を検討した。各項目に1位をつけた群と他の順位をつけた群とで,上記2つの得点についてt 検定を行なったところ,「疑問に思ったことややってみたいことを試したり表現したりすることができる」に1位をつけた群(N= 495)では他施設よりも2得点が有意に低かった(「保育者実施」t(1488)= 3 .118, p<.01, 「保育者価値」t(1534)= 5.938, p<.001)。また「体力や運動技能を育てることができる」に1位をつけた群(N= 241)では他施設よりも2得点が有意に高かった(「保育者実施」t(1487)= 4.986, p<.001, 「保育者価値」t(433.618)= 9.076, p<.001)。
総合考察
 1より,子どもの遊びの様子を見ることや子ども間の関わる機会を作ることについては,施設間で共通して重視・実施していることが示唆された。また各項目で実施度の分散が大きいことから,実施の程度は施設間で幅があることが示唆された。中でも「自然を生かした活動」は,実施したいが十分にはできない現状があると考えられる。2,3より,施設において保育者の設定する活動を大切にする程度と,子どもの経験として重視している事柄との間に関連が見られることが示唆された。具体的には,子どもが疑問に思ったことを試したり表現したりする経験を重視する施設では,保育者設定の活動に対する価値や実施の評定が低く,体力や運動技能の育成を重視する施設ではその逆であることが示された。
課題と展望
 本研究において見出された施設間の価値観の相違をもとに,関連が想定される物理的・人的環境や,実際の取り組みへの影響について,今後より詳細に検討する必要がある。
付   記
 本研究は東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センターのプロジェクトの一環である。