10:00 〜 12:00
[PG70] 女子短大生に対するグループワークプログラム実践の試み(5)
キーワード:大学生, コミュニケーション力, キャリア教育
問 題
近年,大学でのコミュニケーション力の育成に注目が集まってきている。厚生労働省 (2007) は意思疎通・協調性・自己表現力といった具体的なコミュニケーション力の獲得を促している。これを受け,高岡ら (2013; 2014) は大学生のコミュニケーション能力である社会的スキルを高める具体的な方略を開発し,その効果検証を行った。しかし,高岡ら (2013; 2014) は部分的な効果しか見出せなかった。高岡ら (2013) は今後の課題としてより焦点化した効果の検証が必要であることを挙げている。
そこで本研究では,高岡ら (2013; 2014) のコミュニケーションプログラムを実施し,主張性スキル,問題解決スキル,他者からの評価懸念に焦点を当てた効果検証を行うことを目的とした。
方 法
対象者:女子大学生18名が登録し,最終的に17名 (平均年齢18.83歳,SD = 0.70歳) が継続的にプログラムに参加した。
プログラムの概要:本プログラムは各180分,全15回で構成され (高岡ら,2013),X年9月~X+1年1月の講義時間内に実施した。第1回は心理教育を行い,第2回~第9回は社会的スキル訓練,第10回~第15回は問題解決スキル訓練を中心に扱った。また,実生活への般化や維持促進をねらって,毎回ホームワークを課した。
測定尺度:①機能的アサーション尺度;下位因子として課題達成,語用論的配慮 (三田村ら,2014),②Problem Solving Inventory 邦訳版 (PSI: 丸山ら,1995),③Fear of Negative Evaluation Scale 短縮版 (FNE: 笹川ら,2004),を使用した。
測定時期:機能的アサーション尺度は介入前と介入後,PSI と FNE は介入前,中間 (第9回),介入後に測定を行った。
結果と考察
1. 主張性スキルへのプログラム効果 (Table 1)
分析は回答に誤りがなかった14名を対象とした。機能的アサーション尺度を従属変数,時期 (介入前,介入後) を独立変数とするt検定を行った。また,効果サイズとして介入前後のCohen’s d を算出した。その結果,機能的アサーション総得点および下位因子すべてに有意な差は示されなかった (総得点 t (13) = 0.88; 課題達成 t (13) = 0.48; 語用論的配慮 t (13) = 1.41)。効果サイズはd = .13~.36であった。
統計的な有意差はみられなかったものの,語用論的配慮の効果サイズは.36と中程度に近い値であった。本研究の様なあらゆる学生を対象とするプログラム形態では十分な大きさであり(Werner-Seidler, 2017),明確な有効性を示すために今後はサンプルサイズを十分に担保した効果検証を行う必要がある。
2. 問題解決スキルと他者からの評価懸念へのプログラム効果 (Table 1)
問題解決スキルと他者からの評価懸念への効果を検討するために PSI,FNE を従属変数,時期 (介入前,中間,介入後) を独立変数とする1要因分散分析を行った。また,効果サイズとしてCohen’s d を算出した。その結果,PSI (F [2, 26] = 0.64),FNE (F [2, 26] = 0.75) のどちらの分析においても有意な時期の主効果はみられなかった。効果サイズはd = -.23~-.10であった。
問題解決スキルと他者からの評価懸念に対して,プログラムの有効性は見いだせなかった。問題解決スキルについては,得点で見ると先行研究 (高岡ら,2013; 2014) から一貫して望ましい変化がみられているが,明確な有効性が示されていない。この理由として本研究の効果測定に限界があったかもしれない。実際に児童に対してではあるが,これまでに問題解決スキル訓練を実施することで明確に効果が示されているのは解決法の案出数の増加である (宮田ら,2010;高橋・嶋田,2013)。本研究では効果測定として用いなかったが,本研究の解決法の案出課題におけるワークシートを質的に見ると,問題解決スキル訓練前半よりも後半ではその数が多くなっていた。今後,問題解決スキルへの有効性を確認するためには自己評価尺度に加え,解決法の案出数といった多側面からの評価が必要である。
近年,大学でのコミュニケーション力の育成に注目が集まってきている。厚生労働省 (2007) は意思疎通・協調性・自己表現力といった具体的なコミュニケーション力の獲得を促している。これを受け,高岡ら (2013; 2014) は大学生のコミュニケーション能力である社会的スキルを高める具体的な方略を開発し,その効果検証を行った。しかし,高岡ら (2013; 2014) は部分的な効果しか見出せなかった。高岡ら (2013) は今後の課題としてより焦点化した効果の検証が必要であることを挙げている。
そこで本研究では,高岡ら (2013; 2014) のコミュニケーションプログラムを実施し,主張性スキル,問題解決スキル,他者からの評価懸念に焦点を当てた効果検証を行うことを目的とした。
方 法
対象者:女子大学生18名が登録し,最終的に17名 (平均年齢18.83歳,SD = 0.70歳) が継続的にプログラムに参加した。
プログラムの概要:本プログラムは各180分,全15回で構成され (高岡ら,2013),X年9月~X+1年1月の講義時間内に実施した。第1回は心理教育を行い,第2回~第9回は社会的スキル訓練,第10回~第15回は問題解決スキル訓練を中心に扱った。また,実生活への般化や維持促進をねらって,毎回ホームワークを課した。
測定尺度:①機能的アサーション尺度;下位因子として課題達成,語用論的配慮 (三田村ら,2014),②Problem Solving Inventory 邦訳版 (PSI: 丸山ら,1995),③Fear of Negative Evaluation Scale 短縮版 (FNE: 笹川ら,2004),を使用した。
測定時期:機能的アサーション尺度は介入前と介入後,PSI と FNE は介入前,中間 (第9回),介入後に測定を行った。
結果と考察
1. 主張性スキルへのプログラム効果 (Table 1)
分析は回答に誤りがなかった14名を対象とした。機能的アサーション尺度を従属変数,時期 (介入前,介入後) を独立変数とするt検定を行った。また,効果サイズとして介入前後のCohen’s d を算出した。その結果,機能的アサーション総得点および下位因子すべてに有意な差は示されなかった (総得点 t (13) = 0.88; 課題達成 t (13) = 0.48; 語用論的配慮 t (13) = 1.41)。効果サイズはd = .13~.36であった。
統計的な有意差はみられなかったものの,語用論的配慮の効果サイズは.36と中程度に近い値であった。本研究の様なあらゆる学生を対象とするプログラム形態では十分な大きさであり(Werner-Seidler, 2017),明確な有効性を示すために今後はサンプルサイズを十分に担保した効果検証を行う必要がある。
2. 問題解決スキルと他者からの評価懸念へのプログラム効果 (Table 1)
問題解決スキルと他者からの評価懸念への効果を検討するために PSI,FNE を従属変数,時期 (介入前,中間,介入後) を独立変数とする1要因分散分析を行った。また,効果サイズとしてCohen’s d を算出した。その結果,PSI (F [2, 26] = 0.64),FNE (F [2, 26] = 0.75) のどちらの分析においても有意な時期の主効果はみられなかった。効果サイズはd = -.23~-.10であった。
問題解決スキルと他者からの評価懸念に対して,プログラムの有効性は見いだせなかった。問題解決スキルについては,得点で見ると先行研究 (高岡ら,2013; 2014) から一貫して望ましい変化がみられているが,明確な有効性が示されていない。この理由として本研究の効果測定に限界があったかもしれない。実際に児童に対してではあるが,これまでに問題解決スキル訓練を実施することで明確に効果が示されているのは解決法の案出数の増加である (宮田ら,2010;高橋・嶋田,2013)。本研究では効果測定として用いなかったが,本研究の解決法の案出課題におけるワークシートを質的に見ると,問題解決スキル訓練前半よりも後半ではその数が多くなっていた。今後,問題解決スキルへの有効性を確認するためには自己評価尺度に加え,解決法の案出数といった多側面からの評価が必要である。