10:00 〜 12:00
[PG72] 高校における心理学の学びの効果
キーワード:選択理論, 高校
問題と目的
定時制高校に入学する生徒の多くは,不登校経験,経済的な困難,学習能力不足,中途退学経験,日本語の未習得,そして学力 不振等の課題をひとつないし複数,抱えていることが多く,自己肯定感が低い傾向にあることが想定される。こうした生徒たちに対して,
・自分の人生のハンドルは責任を持って自分が握る
・身近な人との良好な人間関係を築く
ことを目的として,総合的な学習の時間において,「選択理論心理学」を学ぶ機会を設けた。
*「選択理論心理学」は,米国の精神科医ウイリアム・グラッサーが提唱する心理学で,「人は外側の刺激によって反応するのではなく,内側から動機付けられて行動を選択する」ことを基盤とし,他者をコントロールするのではなく,自分の行動は自分で責任をもって選択することを重視する。
*実践された学習プログラムは,「選択理論でアクティブラーニング」(ほんの森出版)として出版 (2015年)
このプログラムを学習した生徒たちが,その後,どのように変化をしていったか,その学習効果等について,卒業生に対する面接調査等を踏まえ,検証する。
方 法
高校卒業後約1年を経た卒業生に対して実施した面接調査の結果を,大谷尚が開発したSCAT(Steps for Coding and Theorization)を用いて分析した。SCATは,観察や面接調査等に基づく質的研究のための分析ツールである。
結果と考察
面接調査から得られたことをあげる。
・アクティビティを多く行ったことで,それが友人関係をつくるきっかけになった。
・「選択理論心理学」を学ぶことで自分自身に変化が起きた。しかし,その変化を認識したのは,高校卒業間際である。
・他者を変えようとせず,自分を変えることで,身近な人との関係性が良くなることを実践を通して理解した。
・親を理解しようと努めることで関係性が良くなり,感謝の気持ちが強まった。
・現在は,身近な人との良い関係性を築くことができている。
・対人関係に自信を持つことができた。
・自分の欲求を満たすには,自分自身が行動する必要がある。
・日常のストレスや将来に対する不安を,コントロールできるようになった。
これらのことから,この取組みのねらいとしたことが概ね達成できたことがわかる。
また,こうした変化には,高校に勤務する教職員が生徒たちを受容的に受け入れてきたことが貢献していることや,変化には一定の時間を要することも浮かび上がってきた。
教材の開発,職員の研修体制等の整備などの課題があるものの,「選択理論心理学」の学びは,様々な困難を抱えた定時制の生徒たちだけでなく,不登校に対する対応,発達障害等のある生徒に対する自立活動,人権意識の向上,いじめ問題への対応などにも期待できると考えられる。
定時制高校に入学する生徒の多くは,不登校経験,経済的な困難,学習能力不足,中途退学経験,日本語の未習得,そして学力 不振等の課題をひとつないし複数,抱えていることが多く,自己肯定感が低い傾向にあることが想定される。こうした生徒たちに対して,
・自分の人生のハンドルは責任を持って自分が握る
・身近な人との良好な人間関係を築く
ことを目的として,総合的な学習の時間において,「選択理論心理学」を学ぶ機会を設けた。
*「選択理論心理学」は,米国の精神科医ウイリアム・グラッサーが提唱する心理学で,「人は外側の刺激によって反応するのではなく,内側から動機付けられて行動を選択する」ことを基盤とし,他者をコントロールするのではなく,自分の行動は自分で責任をもって選択することを重視する。
*実践された学習プログラムは,「選択理論でアクティブラーニング」(ほんの森出版)として出版 (2015年)
このプログラムを学習した生徒たちが,その後,どのように変化をしていったか,その学習効果等について,卒業生に対する面接調査等を踏まえ,検証する。
方 法
高校卒業後約1年を経た卒業生に対して実施した面接調査の結果を,大谷尚が開発したSCAT(Steps for Coding and Theorization)を用いて分析した。SCATは,観察や面接調査等に基づく質的研究のための分析ツールである。
結果と考察
面接調査から得られたことをあげる。
・アクティビティを多く行ったことで,それが友人関係をつくるきっかけになった。
・「選択理論心理学」を学ぶことで自分自身に変化が起きた。しかし,その変化を認識したのは,高校卒業間際である。
・他者を変えようとせず,自分を変えることで,身近な人との関係性が良くなることを実践を通して理解した。
・親を理解しようと努めることで関係性が良くなり,感謝の気持ちが強まった。
・現在は,身近な人との良い関係性を築くことができている。
・対人関係に自信を持つことができた。
・自分の欲求を満たすには,自分自身が行動する必要がある。
・日常のストレスや将来に対する不安を,コントロールできるようになった。
これらのことから,この取組みのねらいとしたことが概ね達成できたことがわかる。
また,こうした変化には,高校に勤務する教職員が生徒たちを受容的に受け入れてきたことが貢献していることや,変化には一定の時間を要することも浮かび上がってきた。
教材の開発,職員の研修体制等の整備などの課題があるものの,「選択理論心理学」の学びは,様々な困難を抱えた定時制の生徒たちだけでなく,不登校に対する対応,発達障害等のある生徒に対する自立活動,人権意識の向上,いじめ問題への対応などにも期待できると考えられる。