10:00 AM - 12:00 PM
[PG75] 中学生の道徳性と主体的に行う生徒指導上の問題行動との関連
Keywords:道徳教育, 生徒指導, 学習指導要領
問題と目的
一部改正中学校学習指導要領(平成27年3月)では,道徳教育を進めるに当たっての配慮事項として,「道徳教育の指導内容が,生徒の日常生活に生かされるようにすること。その際,いじめの防止や安全の確保等にも資することとなるよう留意すること。」という文言が追加された。生徒指導と道徳教育を関連付けることの必要性がより高まったと言えるだろう。その関連が明らかになれば,道徳教育を生徒の日常生活に生かしたり,いじめ等の現実の困難な問題に主体的に対処できる実効性ある力を育てたりすることに効果的であると考えた。しかし,学校教育現場で論じられる「道徳性」とは,学習指導要領に示されたものであり,心理学の「道徳性」とは定義が大きく異なる。そこで,中学生本人を対象とした道徳性に関する生活実態調査の結果をもとに,学習指導要領に示されている道徳性の高さと,主体的な生徒指導上の問題行動の関係について検討することを目的として研究した。
方 法
調査対象 A市内の公立中学校1校に在籍する中学3年生225名(男子120名;女子105名)を対象に質問紙調査を行った。欠損値があるものを除外した結果,得られた218名(男子118名;女子100名)を有効回答とした(有効回答率96.89%)。
調査方法 A市内の公立中学校の3年生を対象とした悉皆調査を2016年7月に実施した。質問紙調査は無記名で行い,授業時間や休み時間を利用して,一斉に配付・実施した。
内容の概要
一部改正中学校学習指導要領(2015)の内容項目や,生徒指導提要の記述を参考に,筆者で作成した質問項目を用いて,「道徳・生活に関する調査」を実施した。質問紙調査票は,道徳性と生徒指導上の問題行動との関係を測定するため,道徳性尺度と主体的問題行動尺度の2つの尺度から構成した。道徳性尺度は,一部改正中学校学習指導要領(2015)にある22個の内容項目の表現方法を参考にし,22項目を作成した。主体的問題行動尺度は,「自分自身に対する反社会的行動尺度」「他者に対する反社会的行動尺度」「自分自身に対する非社会的逃避行動尺度」「他者による反社会的行動被害体験尺度」という4つの下位尺度から15項目を作成した。
結果と考察
道徳性尺度の各項目の合計得点を算出し,それを道徳性得点とした。道徳性と生徒指導上の諸問題を示す項目とのクロス集計の後,χ²検定を行った。道徳性高群,中群,低群で群分けし,それぞれの諸問題の選択肢ごとの有意差検定として残差分析を行ったところ,暴力行為の加害経験・登校渋り経験と,道徳性の高さとの間に関連のあることが示された。
道徳性尺度22項目を用いて因子分析(主因子法,バリマックス回転)を行った結果,4因子が抽出された。第1因子は4項目から構成され,「集団社会帰属」因子と命名された。第2因子は4項目から構成され,「他者尊重」因子と命名された。第3因子は4項目から構成され,「向上志向」因子と命名された。第4因子は4項目から構成され,「生命尊重」因子と命名された。
道徳性の各因子と生徒指導上の問題との関連を検討するため,道徳性尺度の各因子に含まれる項目の合計得点を算出し,それを下位尺度得点とした上で,それぞれ高群・中群・低群に群分けした。道徳性の各因子と生徒指導上の諸問題を示す項目とのクロス集計の後,χ²検定を行った。次に,それぞれの諸問題の選択肢ごとの有意差検定として残差分析を行った。その結果,集団社会帰属の高さと,暴力行為加害経験や登校渋り経験との間に関連のあることが示された。また,他者尊重の高さと,暴力行為加害経験・登校渋り経験との間に関連のあることが示された。そして,向上志向の高さと,暴力行為加害経験・いじめ加害経験との間に関連のあることが示された。さらに,生命尊重の高さと,暴力行為加害経験・登校渋り経験・ネット被害経験との間に関連のあることが示された。
考 察
学習指導要領に示されている道徳性と,暴力行為,登校渋りなどの生徒指導上の諸問題との間に関係があり,道徳性の諸側面においても同様であったことから,高い道徳性が,生徒の生徒指導上の諸問題の良好な状態に関係し,影響を与えていることが推測できた。
一部改正中学校学習指導要領(平成27年3月)では,道徳教育を進めるに当たっての配慮事項として,「道徳教育の指導内容が,生徒の日常生活に生かされるようにすること。その際,いじめの防止や安全の確保等にも資することとなるよう留意すること。」という文言が追加された。生徒指導と道徳教育を関連付けることの必要性がより高まったと言えるだろう。その関連が明らかになれば,道徳教育を生徒の日常生活に生かしたり,いじめ等の現実の困難な問題に主体的に対処できる実効性ある力を育てたりすることに効果的であると考えた。しかし,学校教育現場で論じられる「道徳性」とは,学習指導要領に示されたものであり,心理学の「道徳性」とは定義が大きく異なる。そこで,中学生本人を対象とした道徳性に関する生活実態調査の結果をもとに,学習指導要領に示されている道徳性の高さと,主体的な生徒指導上の問題行動の関係について検討することを目的として研究した。
方 法
調査対象 A市内の公立中学校1校に在籍する中学3年生225名(男子120名;女子105名)を対象に質問紙調査を行った。欠損値があるものを除外した結果,得られた218名(男子118名;女子100名)を有効回答とした(有効回答率96.89%)。
調査方法 A市内の公立中学校の3年生を対象とした悉皆調査を2016年7月に実施した。質問紙調査は無記名で行い,授業時間や休み時間を利用して,一斉に配付・実施した。
内容の概要
一部改正中学校学習指導要領(2015)の内容項目や,生徒指導提要の記述を参考に,筆者で作成した質問項目を用いて,「道徳・生活に関する調査」を実施した。質問紙調査票は,道徳性と生徒指導上の問題行動との関係を測定するため,道徳性尺度と主体的問題行動尺度の2つの尺度から構成した。道徳性尺度は,一部改正中学校学習指導要領(2015)にある22個の内容項目の表現方法を参考にし,22項目を作成した。主体的問題行動尺度は,「自分自身に対する反社会的行動尺度」「他者に対する反社会的行動尺度」「自分自身に対する非社会的逃避行動尺度」「他者による反社会的行動被害体験尺度」という4つの下位尺度から15項目を作成した。
結果と考察
道徳性尺度の各項目の合計得点を算出し,それを道徳性得点とした。道徳性と生徒指導上の諸問題を示す項目とのクロス集計の後,χ²検定を行った。道徳性高群,中群,低群で群分けし,それぞれの諸問題の選択肢ごとの有意差検定として残差分析を行ったところ,暴力行為の加害経験・登校渋り経験と,道徳性の高さとの間に関連のあることが示された。
道徳性尺度22項目を用いて因子分析(主因子法,バリマックス回転)を行った結果,4因子が抽出された。第1因子は4項目から構成され,「集団社会帰属」因子と命名された。第2因子は4項目から構成され,「他者尊重」因子と命名された。第3因子は4項目から構成され,「向上志向」因子と命名された。第4因子は4項目から構成され,「生命尊重」因子と命名された。
道徳性の各因子と生徒指導上の問題との関連を検討するため,道徳性尺度の各因子に含まれる項目の合計得点を算出し,それを下位尺度得点とした上で,それぞれ高群・中群・低群に群分けした。道徳性の各因子と生徒指導上の諸問題を示す項目とのクロス集計の後,χ²検定を行った。次に,それぞれの諸問題の選択肢ごとの有意差検定として残差分析を行った。その結果,集団社会帰属の高さと,暴力行為加害経験や登校渋り経験との間に関連のあることが示された。また,他者尊重の高さと,暴力行為加害経験・登校渋り経験との間に関連のあることが示された。そして,向上志向の高さと,暴力行為加害経験・いじめ加害経験との間に関連のあることが示された。さらに,生命尊重の高さと,暴力行為加害経験・登校渋り経験・ネット被害経験との間に関連のあることが示された。
考 察
学習指導要領に示されている道徳性と,暴力行為,登校渋りなどの生徒指導上の諸問題との間に関係があり,道徳性の諸側面においても同様であったことから,高い道徳性が,生徒の生徒指導上の諸問題の良好な状態に関係し,影響を与えていることが推測できた。