日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PG(01-81)

ポスター発表 PG(01-81)

2017年10月9日(月) 10:00 〜 12:00 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 〜 12:00

[PG80] 聴覚障害者における和楽器の聴取に関する検討

湯浅哲也1, 加藤靖佳2 (1.筑波大学大学院, 2.筑波大学)

キーワード:聴覚障害, 和楽器, 音色

問題の所在と目的
 「中学校音楽科学習指導要領解説」では,中学3学年間に1種類以上の和楽器を扱うことが示されている。加藤・山尾(2014)は楽曲識別課題で和楽器は成績が高いことを示しているが,従来の研究では洋楽器を用いた検討が主であり,和楽器については不明な点が多い。そこで,本研究では,和楽器の単音を用いた音色の印象及び和楽器認知度検査を実施し,聴覚障害者の和楽器に対する基礎的知見を得ることを目的とする。
方   法
(1)対象者:日常的に音楽を聴取している聴覚障害学生4名(補聴器,19歳〜23歳,95dBHL〜100dBHL)及び,比較対象として健聴学生4名を対象とした。
(2)刺激・装置:音楽ソフト(YAMAHA XGworks ST)を用いて,MIDI音源(S-XYG50)より楽器音の単音を用いた。使用する音色は,Koto,Syamisen,Shakuhachi,Taiko drumの楽器音とした。刺激は,防音室においてスピーカ(SONY SRS-88)を通して,対象者に至適レベルで呈示された。
(3)手続き:対象者は,呈示された検査音から和楽器が醸し出す音色に関する印象について,7段階評価で回答させた。
(4)和楽器の認知度検査:4種類の和楽器について,まず,写真カードを見せ,楽器名を答えさせる課題を行ない,楽器名を明示した上で,①観覧,②聴取,③使用の有無に関する質問紙に回答させた。
結果と考察
 聴覚障害学生の和楽器に対する音色の聴取評価を平均した結果をFigure 1に示す。音色評価については,対象者において幅が大きいことが示され,健聴学生よりも聴覚障害学生の方がその傾向は著しかった。聴覚障害学生の特徴としては,尺八を除いた3つの楽器が聞きやすい傾向にあることが示唆された。特に,太鼓は最も「聞きやすい」ことが注目される。太鼓は打楽器であり,視覚的に捉えることが可能であるため,聴覚障害児教育をはじめ,様々な場面で用いられている。そのため,和太鼓のみ対象者全員が使用経験があり,普段から聴取している音色であるが故に,以上の結果になったと推測される。そして,太鼓,三味線,箏は減衰音であり,その反面,尺八は持続音であることから,エンベロープが聞きやすさの評価に影響した可能性が考えられた。
 今後の課題としては,対象者を増員させて更なる検証の必要性,MIDIに収録された和楽器が少なく,対象楽器が弦楽器に偏向していたことから,他の和楽器を加え,楽器分類を考慮した上で分析を進めていく必要がある。
文   献
加藤靖佳・山尾昌平(2013).聴覚障害者における楽器音の聴取.日本教育心理学会総会発表論文集,55,117.