日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

2017年10月9日(月) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PH02] 高校生の大学受験にかかる専攻決定プロセスの質的研究

M-GTAを用いて

川端壮康1, 佐藤真奈美#2 (1.尚絅学院大学, 2.尚絅学院大学)

キーワード:進路選択, 質的研究

研究の目的
 進路選択行動とは,生涯に渡って繰り返される行動であり,本質的には自分が置かれた状況でいくつかの可能性の中から1つの選択肢を選び,それに適応していくための行動と言える(富永,2008)。
 高校生の進路選択については,自己効力感(浦上,1993),大学志望動機(八木・斎藤・牟田,2000),あるいは様々な要素を統合したモデル構成(鈴木・柳井,1993;豊田・前田・室山・柳井,1991)等の視点からの先行研究がある。本研究では,本人の興味や志向との関連が深いと考えられる大学での専攻の選択に焦点を絞り,どのような内的過程を経て進路が決定されるのかを明らかにすべく,予備的な質的調査を行った。
方   法
 調査協力者:大学生6名(男性3名,女性3名,平均年齢21.5歳±0.55)。調査内容:「大学受験の際にどういうことで悩み,どのように解決していったか」について,約1時間半程度の半構造化された面接を実施した。手続き:募集に応じた者に,調査内容等について説明し,同意を得た上で面接を実施した。面接内容は録音し,逐語記録として文章化した。なお謝礼として,500円分のQUOカードを支払った。分析方法:修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)(木下, 2003,2007)に基づき分析した。
結   果
 M-GTAによって22概念が生成され,6カテゴリー(メインカテゴリー3つ)にまとめられた。時間経過を踏まえ,全体のプロセスを考慮した上で,概念とカテゴリーの関係が検討され,結果図が作成された(Figure 1)。
 進路を決定するにあたって,「興味関心の探究」を行い,「将来の検討」や「職業のピックアップ」を行っている学生は,「焦り」や「不安」をはらんだ<ネガティブな感情の発生>に繋がらず,「進路選択を迷う」ことなく進路選択行動に向かうことが明らかになった。
一方,「受験指導の開始」となっても<進路選択を真剣に受け止めない>状態の学生は,「進路決定の時期が迫ってくる」にしたがって,「焦り」や「不安」を感じ,進路選択で迷う傾向にある。そして,進路選択のタイムリミットを自覚し<進路探索>に移ることが明らかになった。
そして,<家庭の影響>などを受けて「進路の取捨選択」がなされ,最終的に専攻が決定されていくことが示された。
考   察
 高校における大学の専攻決定に際しては,その時点までに,自己の内面に目を向け,将来について思案し,進路選択に向き合うかによって大きな違いがあることが明らかになった。また,高校生は,家庭から後押しをされたり,方向付けされたりなど,様々な影響を受けながら,自己の進路を選択していくことも明らかとなった。