日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

2017年10月9日(月) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PH09] 情報のなわばりとモダリティ表現が確信度判断へ与える影響Ⅰ

小泉嘉子1, 飯島典子2 (1.尚絅学院大学, 2.聖和学園短期大学)

キーワード:情報のなわばり, モダリティ, 確信度

目   的
 言葉は明確な情報だけでなく「認識のモダリティ」と呼ばれる文末表現(かもしれないなど)によって断定することのできない情報を伝達することができる。そこで本研究では,大学生を対象にモダリティ表現と情報のなわばりが確信度判断に与える影響について検討した。
方   法
 1.調査協力者と調査時期:2015年7月にS大学の講義で実施した。調査協力者は,大学生32名(回答に欠損がある8名を除いた24名について分析,21~23歳,平均21.50歳,男性9名・女性15名)であった。
 2.質問項目と評定方法:先行研究(小泉,2016;2017)より,発話者を友人とし,4種類のモダリティ表現と心的動詞(かもしれない・はずだ・にちがいない・知っている)を採用し,提示文の命題を「主観的なもの(味覚)」として未知物(例:サラク)・既知物(例:メロン)の甘さの確信度について尋ねた。これにより1種類の発話者×4つの文末表現×2種類の命題内容の8問を作成し,「友人が,果物について説明しています。その説明を聞いて,どのくらい『本当だ(確かだ)』と感じますか。もっともあてはまると感じる色の数字を,1つ選んでください。」と教示し,「このサラクは甘いはずだ(未知+はずだ)」のように組み合わせた文章を提示して確信度を評定させた。評定方法は吉川ら(1995)の多重尺度図法を参考に,数直線上の0~12間を3択・4択に分け,この選択肢から選ばせた。
結果と考察
 吉川・西村(1991)に基づき3択と4択の2つの尺度が重なる「より当てはまる範囲」を1,1つの尺度のみが該当する「あてはまるとみなせる範囲」を0<x<1,いずれも該当しない「当てはまらない範囲」を0のメンバーシップ度として,分布を12パターンに分類した(FIGURE1~2)。ただし,2つの尺度が重ならない6つのパターン(7~12)については,吉川・西村(1994)を参考にBetween集合を用いて2つの尺度の間を表す分布を採用した。χ2分析の結果(Table1),友人が「このサラクは甘いかもしれない」のように情報のなわばりを持たない未知物について述べた場合に確信度の低いパターンが多く,「このメロンは甘いかもしれない」のように情報のなわばりを持つ既知物について述べた場合は確信度の高いパターンが多かった。「はずだ」の場合,未知物では確信度が低中程度のものが多く,既知物の場合は高程度のものが多かった。一方,「にちがいない」の場合は情報のなわばりによって有意な差は見られなかった。これらのことから,可能性判断を表す「かもしれない」や確信的判断を表す「はずだ」は情報のなわばりとモダイリティ表現に応じて確信度が判断されているが,書き言葉で使用される「にちがいない」は,同様の判断がされていない可能性が考えられた。