The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH11] 幼児期における行動抑制の発達的変化(8)

幼児期の抑制行動得点と小学校でのQーU得点との関連

難波久美子1, 河合優年2, 佐々木惠#3 (1.武庫川女子大学, 2.武庫川女子大学, 3.武庫川女子大学)

Keywords:抑制行動, 縦断研究, Q-U

目   的
 一連の研究(3)において,自分にとって不快な状況が起こったときに,どのような表出をするかということを抑制行動得点とし,日常生活における行動を検討するために,母親に対する行動と母親の前での友人に対する行動,また保育所(園),幼稚園(以下,園とする)における担任(以下,先生とする)に対する行動と友人に対する行動が検討された。この中で,5歳から6歳にかけて,大人に言われたことは嫌でも行動することが増え,園生活の中で,友人に対してルールを無視する行動は減り,言葉で交渉する行動が増えることが示された。
 これらの行動は,その後の社会生活の中で基礎となる行動である。そこで,これらの行動と小学校での適応と関連するのかどうか検討した。
方   法
研究協力者と期間 2005年から実施されたJCS(Japan Children’s Study)の協力者のうち,三重中央医療センターで同意を得て観察・調査を実施し,研究終了後のデータ使用許諾と研究協力の継続に同意した139組の児及びその家族。また,協力児が在籍していた園の先生。本研究に使用したデータが得られた時期は,2010年から2011年(5,6歳),2013年から2016年(小学校3,4,5年生)であった。分析対象 5,6歳時,協力児が在籍していた園における調査(先生による行動評価。以下,園調査)データと,同時期に実施された養育者による行動評価。小学校3,4,5年生時実施の「楽しい学校生活を送るためのアンケート(Q-U,図書文化社より発行)」。手続き 園調査は難波ら(2014)を参照。同様の手続きで抑制行動得点が算出された。Q-Uは,小学校3年生以降毎年3学期に実施しているパネル調査に組み込まれた。家庭で児が回答し,郵送にて返送された。実施要項に従って得点化された。
結   果
 抑制行動得点とQ-Uの領域得点の相関係数を求めた。その結果,先生評価は5歳の「先生に対する抑制のない表出(表出)」と小5「学習意欲」,「被侵害得点」が,また「友人に対するルール無視(友2)」と小5「被侵害得点」で有意な係数が得られた。6歳の先生評価をTableに示す。母評価は,5歳の「友人に対する交渉(友1)」と小4「学習意欲」のみ有意であった。
 園で先生に対して抑制しない行動をしていた児は,小3,小4,小5ともクラスに受け入れられていない感覚を持っている。小3,小4で,いい友人関係が持てていなかったり,クラスが楽しくなかったりする。また,園で友だちに対して,遊びのルールに従わない行動をしていた児は,クラスで受け入れられていない感覚を持ち,小4,小5ではクラス内で孤立している。
先生に言われたら,嫌だと思っていても我慢してやるということや,友だちと遊ぶときにルールに従って遊ぶということが6歳になるまでに身についていないまま進学し,小学校への適応がよくない児が存在すると思われる。
文   献
 難波久美子・河合優年・佐々木惠・山川紀子・山本初実(2014) 幼児期における行動抑制の発達的変化(3)5歳児・6歳児の母親,先生,友人に対する抑制.  日本心理学会第78回総会発表論文集P.1050.
附記: 本研究は,JSPS科研費(15H03453)の助成を受けた。