日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

2017年10月9日(月) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PH17] 看護学生の死生観

自由記述の分析より

石井あゆみ1, 藤田和加子2, 徳珍温子3 (1.大阪信愛女学院短期大学, 2.大阪信愛女学院短期大学, 3.大阪信愛女学院短期大学)

キーワード:看護学生, 死生観

問題と目的
 日本では,医療機関で死亡する者の増加や核家族の家庭等,死が日常から切り離され,看護学生においても死を身近なものとして経験する機会が減少している。しかし卒業後は,終末期にある患者や家族に関わり,QOLを高めその人らしい最期を迎えられるよう支援していく役割を担うことになる。そのため,看護基礎教育において終末期看護について学ぶことは重要である。園田ら(2007)は死別や見取り経験は祖父母が大部分であり,身近な人との経験が看護学生の死生観とは結び付かないことを指摘し,生と死について真剣に討議することが教育として必要であると述べている。
 本学では,2回生の後期にがん化学療法や緩和ケア,終末期看護についての授業があり,授業の最終には死生観のレポートを提出する。このレポートを分析し,授業を受けた後の死生観について知り,今後の示唆を得ることを目的とする。
方   法
(対象者)A短期大学2回生の同意が得られた51名の看護学生
(調査方法) 終末期看護が中心の授業が終了した平成29年2月に無記名で,「あなたの死生観」についてと題してA4用紙に自由記述してもらった。
(分析方法)自由記述の中で意味が同じと思われるものは,漢字やひらがななど語を統一した後にフリーソフトウエアKH-Coderを用い,頻回に出現した語を頻出語としてリスト化し,このリストを用いて階層的クラスタ分析を行った。
(倫理的配慮)研究参加を対象者の自由意思に基づくものであり,随時同意を撤回することが可能であること,その場合でも何ら不利益を被ることはないこと個人情報は個人が特定されないように守秘し,研究及び学会発表後はすべての情報を破棄することを口頭と書面にて説明した。
結果と考察
総抽出後は19173語(使用語数6876語)であった。出現回数が15回以上の語をTable1に示す。
次に階層的クラスタ分析(Ward法)を行ったところ6つのクラスタに分類された。結果より,身近に死を体験したことに関する内容で祖父祖母が亡くなったことを悲しいと感じ(クラスタ1),人が死ぬことはよく生きることに通じること(クラスタ2),自分自身の死生観は今を大切に生きること(クラスタ3),人生の最期を迎える時に(クラスタ4),家族と患者を看護することが大切で(クラスタ5),苦痛をとり,気持ちや思いを周囲の人へ伝え最後の時を過ごしたい(クラスタ6)と考えている。結果をTable2に示す。

 身近に体験した死は祖父母が大部分という結果は先行研究1)と同じであった。自由記述から,これから看護師として終末期にある患者やその家族に看護を行う時に患者の思いに寄り添えるよう援助したいと考えていることがわかった。
 また少数ではあるが,授業をきっかけ死生観は人によって違いがあること,押し付けてはいけないこと,に気付いたと記述している看護学生もいた。石川ら(2015)は,死生観教育は学生の情意領域に焦点を当てる教育であり,終末期看護への理解に影響すると述べている。この学びをさらに育む関わりが必要と考える。
引用文献
石川美智,山本真弓(2015).身近な人との死別体験を教材とした死生観教育展開後の学生の思い,ホスピスケアと在宅23(3)350-356
園田麻利子,上原充世(2007).ターミナルケアの授業における学生の死生観に関する検討,鹿児島純心女子大学看護栄養学部紀要:11,21-35