日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

2017年10月9日(月) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PH21] 保育学生がもつ保育現場(保育者)イメージによる希望就職先の検討

佐藤那美 (白百合女子大学)

キーワード:保育現場イメージ, 希望就職先

問題と目的
 待機児童から派生した保育士不足は,近年大きな社会問題として取り上げられている。また,全国保育士有効求人倍は平成28年度11月時点で2.34倍であることが「保育士確保集中取組キャンペーン」の中で報告されている(厚生労働省,2017)。保育士養成校の学生はこのような現状の中で,保育現場(保育者)へどのようなイメージを持ち,また彼らの職業選択へどのように影響を及ぼしているのか明らかにすることを目的とした。
方   法
調査協力者 関東圏内の私立大学へ通う女子大学生計129名を分析対象とした。
手続き 2016年12月授業内で一斉配布式により実施をした。
質問紙 就職希望先を問う設問,保育現場(保育者)に対するイメージをSD法(5件法)で問う設問の10項目から構成された。具体的なイメージは「暗い-明るい」「辛い-楽しい」「だれでもできる-専門的な」「指導的な-遊び的な」「厳しい-優しい」「仕事が忙しい-仕事はゆとりがある」「給料が安い-十分な給料」「一時的な仕事-一生の仕事」「ギスギスした-カラッとした」「保育者主体の動き-子ども主体の動き」というもであった。分析における採点方法としては,右側の語句から左側の語句に向かって,5,4,3,2,1と採点をした。希望就職先は幼稚園,保育園,こども園,施設,それ以外とした。なお選択肢の中の「それ以外」とは保育現場以外の職種に就きたい場合,選択するものとした。
倫理的配慮 調査にあたって,その目的と分析方法,データの保管や公表の方法,回答の任意性及び匿名性について説明を行った。
結   果
 保育現場(保育者)へのイメージが,希望就職先の選択へ影響を及ぼすのか明らかにするため,まず標準化(z得点)した後,K-means法による非階層クラスター分析を行った。その結果,解釈可能性の観点から3クラスターを採用した。第1クラスターは,平均よりも概ね保育現場(保育者)に対しポジティブなイメージを持っている群として「ポジティブイメージクラスター」,第2クラスターはその逆の「ネガティブイメージクラスター」と命名し,第3クラスターは,就業条件にそれほど不満はなく,かつ専門的ではないとイメージしている群であることから「就業条件満足・非専門クラスター」と命名した。その後,各クラスターと就職希望先とのクロス集計を行った。なお,すべてのクラスターにおいて検討可能な人数に達しなかったため,今回はΧ2検定は行わなかった。保育現場(保育者)に対するイメージにおけるクラスター別の就職先の人数とその割合をTable1に示す。
考   察
 ネガティブイメージを持つ者の中で,就職先に「それ以外」を選択する者は20%存在し,他のクラスターと比べて保育現場(保育者)に対するネガティブなイメージが,保育現場以外の就職先を選択する要因となることが示唆された。また,ポジティブなイメージを持っていても,ネガティブなイメージを持っていても,希望就職先としては幼稚園が一番多く,次いで保育園であることが明らかとなった。
引用文献
 厚生労働省雇用均等・児童家庭局(2017)Press Release.「保育士確保集中取り組みキャンペーン」実施します 報道発表資料 厚生労働省(2017年5月6日)