日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

2017年10月9日(月) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PH22] 協同学習における成績および意欲の変化について

熊谷圭二郎 (千葉科学大学)

キーワード:主体的・対話的で深い学び, 協同学習, 学習意欲

問題と目的
 現在,生徒の主体的・対話的で深い学びの必要性が指摘され,学校現場ではアクティブ・ラーニングという言葉が飛び交っている。このアクティブ・ラーニング型授業の一つに協同学習が挙げられ,その効果として,海外では学習成果の促進,学習内容の定着,自尊感情などさまざまなものが挙げられている。この協同学習の一つのモデルとしてSlavin(1995)が提唱した生徒チーム学習法がある。この学習は,「教師による指導-グループ討議-テスト・評価」という流れで構成され,現在,高校現場で見られるアクティブ・ラーニング型授業の形態の一つである。そこで本研究では協同学習としてはあまり取り上げられていない高校国語において,協同学習の一つである生徒チーム学習法を行い,成績や意識の変化をみることでその効果を検証することを目的とする
方   法
調査時期と対象
 20XX年4月〜6月までの間に,首都圏の公立高等学校の2年生58名を対象とした。
調査内容と方法
 学力に関しては学校長の承認を得,学年(322名)で行われた国語の考査の偏差値を使用した。実施前の偏差値は1年生3月の結果であり,実施後の偏差値は2年生6月末に行われた考査の結果を使用している。また学習意欲に関しては10項目の質問紙調査を作成し,実施前と実施後に行った。
結果と考察
 協同学習実施前の成績を高中低の3群に分けてその変化を見た場合,交互作用が見られ,中群と低群の成績が向上しているが,高群の成績は向上していないことがわかる。しかし高群の学習意欲は高まっているところから,今回の学習方法,期間は学力が高い生徒の意欲向上につながっても,成績向上につなげられなかったことがわかる。成績高群の生徒の成績を向上させるためには,学習内容のレベルを上げることや生徒同士の相互作用の質を向上させることが必要だと考えられる。
 また意欲に関しては,協同学習実施クラスの学習意欲の3群に交互作用は見られず,実施前の意欲の高低に関係なく,すべての群において向上していることがわかる。しかし,成績の3群で変化を見た場合,交互作用が見られ,成績低群の向上が他の群よりも大きいことが明らかになった。成績低群の生徒は国語に対する苦手意識があったため授業実施前の意欲は低かったが,協同学習によって身近な仲間に質問し,教えてもらうことができた。それによって理解が進み,授業に対する抵抗感や苦手意識をあまり感じることがないまま学習を進められたため,成績,意欲ともに向上したと考えられる。