日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

2017年10月9日(月) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PH25] 小学校の授業における効果的な板書の検討(1)

メタ認知の発達と理解度評定の関連

布施光代 (明星大学)

キーワード:板書, メタ認知, 理解度評定

問題・目的
 学校現場では,多くの授業で板書が活用されており,板書は効果的な授業のツールであることが指摘されている(児玉・釘宮, 2011他)。授業内容を理解させ,学習を定着させるためにも,授業で用いられる板書やノート活動を効果的に活用することが求められるであろう。
 小学校において,効果的に板書を用いるためには,学習者である子どもたちの認知能力の発達をふまえた指導を考える必要があると考えられる。しかし,これまでの教授学習に関する研究では,子どもたちの認知発達をふまえた検討はあまり行われていない。
 そこで,本研究では,メタ認知の発達を取り上げ,同一の授業者によって行われた授業の理解に対する自己評価との関連を探索的に検討する。
方   法
調査対象者:関東地方および東北地方の公立小学校3校の3年生259名および5年生250名,計509名を対象とした。
調査内容:(1) メタ認知に関する学習方略(14項目,4件法) 佐藤・新井(1998)が作成した学習方略の使用尺度30項目のうち,「柔軟的方略」と「プランニング方略」の2下位尺度から構成される「メタ認知的方略」14項目を用い,どの程度方略を用いているかを尋ねた。
(2) 授業の理解に関する自己評定 同じ授業者によって行われた算数の授業において,授業の冒頭に提示された本時の学習内容のポイントに対する自己評価を求めた。評定は「ぜんぜんわからない」,「少しわかる」,「まあわかる」,「かなりわかる」,「説明できる」の5段階から該当するものを選ばせた。
 併せて,該当授業の板書やノートを書く際に気をつけること,工夫したことや実際のノートのデータも収集したが,本研究では分析の対象としない。
手続き:担任教師によってクラスごとに実施した。
調査時期:2016年10月~2017年1月。
結果・考察
(1)メタ認知に関する学習方略の得点化 佐藤・新井(1998)の下位尺度の得点化にならい,「柔軟的方略」得点と「プランニング方略」得点を算出した(Figure 1)。学年×性別の2要因分散分析を行った結果,「柔軟的方略」では,交互作用は見られず,性別の主効果の有意傾向が得られ,男児よりも女児の方が高い傾向にあることが確認された(F(1, 456)=3.27. 0.5(2) 授業内容の理解度とメタ認知的方略の関連 授業内容の理解度とメタ認知的方略の関連を検討するため,授業内容の理解度の自己評定によってグループを設定し,メタ認知的方略の「柔軟的方略」と「プランニング方略」の得点に差が見られるのかを検討した。メタ認知的方略に学年差は見られないことが確認されたため,自己評定の段階による一要因の分散分析を行った結果,「柔軟的方略」(F(5,466)=3.92, p<.05)と「プランニング方略」(F(5,472)=6.72, p<.001)のいずれも有意な差が確認された。自己評定の段階が上がるにつれて,メタ認知的方略の使用の得点も上がることが示唆された。今後,さらにこれらの方略と板書やノートテイキングの関連を検討していくことが必要であると考えられる。