The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH27] ネガティブ感情はいつバネになるのか

達成目標と自己効力感がネガティブ感情に与える影響に着目して

川島万由子 (名古屋大学大学院)

Keywords:失敗, ネガティブ感情, 動機づけ

問題と目的
 「悔しさをバネにして頑張る」「必ずリベンジする」など,失敗をしても,諦めずに頑張ることのできる人がいる。先行研究では,失敗により落胆や諦め,無力感といったネガティブ感情が喚起されると,動機づけが低下するという因果関係が想定されていた。その一方で,悔しさや後悔といったネガティブ感情は,後の学習行動を促進するということも明らかになってきている。しかし,従来の感情と学習動機づけ,学習行動の関連を検討した研究では,個人差がネガティブ感情に与える影響についての検討は行われていない。そこで本研究では,個人の達成目標と自己効力感に着目し,失敗時のネガティブ感情が,後の学習行動に影響をおよぼすプロセスを明らかにする。
方   法
調査参加者 大学生110名,専門学生72名(男性92名,女性90名)を対象とした。
手続き 本研究では,場面想定法を用いた質問紙調査を行った。まず,参加者に達成目標志向性尺度(中山,2005)と自己効力感尺度(成田他,1995)へ回答するよう求めた。続いて,中学3年時の英語の中間テストに失敗する場面を想定させるシナリオを読むよう求めた。その後,シナリオ場面で感じる感情得点(奈須,1990)を評定し,次のテストでの努力量を11件法で回答するよう求めた。
結果と考察
 自己効力感尺度得点の中央値を基準にして高群と低群に分け,多母集団同時分析を行った。
 分析の結果,自己効力感の高低にかかわらず,高い達成目標を持っていると,失敗経験をしたときにより強い後悔を感じ,その後悔が,間接的に努力量を高めるように働いていた。後悔は,失敗に対して自分が状況をコントロールできるという感覚を伴っている。これを踏まえると,高い達成目標を持つ人は,将来の状況をコントロールしていくための手段の一つとして,次の学習に向けて努力すると考えられる。また,後悔と悔しさは,類似した心理的概念ではあるものの,失敗後の努力量に与える影響は異なることが示唆された。コントロール可能という感覚を伴う後悔が生じると,人は,自分自身の行動変容,すなわち努力をすることで,次は成功することができるはずであるという考えに至るだろう。一方で,悔しさは,失敗の原因を自分以外の他者に帰属するような要素も内包しているとも考えられ,他者に原因があるということから,自分の行動を変えたところで何も変わらない。そこから,失敗後の学習行動を促進しないという結果が得られたと考えられる。