The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH28] 学習教材における挿絵の学習意欲効果とリラックス効果について

増本紗也香1, 岡嶋一郎2 (1.長崎純心大学大学院, 2.長崎純心大学)

Keywords:挿絵, 学習意欲, リラックス

問題・目的
 学習教材(以下,教材と略す。)に挿絵を含むことの効果に関して,適度なマンガの挿絵は,大学生にとって内容への関心を引く(向後,1993),学習マンガは分かりやすく感じ,勉強するときに使いたいと回答する小学生が多く,これは新奇で親しみがもて,勉強をあまり意識させないためと推測する(中澤・望月,1995),可愛らしく癒されるイラストは,大学3,4年の既学者と比べ,大学1,2年の初学者に好まれる傾向がある(周村,2009)といった報告があるが,学校段階を通した研究は見あたらない。
 そこで本研究は,小学生から高校生における挿絵付教材の学習意欲促進効果とリラックス効果について,次の仮説を検証する。仮説1:挿絵あり条件が挿絵なし条件よりも,学習意欲効果とリラックス効果が高い。仮説2:学習意欲及びリラックス効果は,認知度の高いキャラクターの挿絵付教材に対して最も高く現れる。

方   法
 期間 2016年8月上旬から9月下旬
 対象 小4,中1,高1の男女328名
 教材 独自に作成した漢字教材の隅に,[挿絵なし条件]は挿絵を入れず,[内容関連条件]は,出題内容に関わりのある挿絵,[オリジナルキャラ条件]は独自に作成した兎の挿絵,[認知度有キャラ条件]は,版元から使用を許可された江戸川コナン(『名探偵コナン』)の挿絵を入れた。
 教材の評定 4種の教材を見たときの印象,学習意欲,リラックス感について,周村(2009),大國・伊藤(1987),小池他(2007)をもとに作成した尺度(3件法)に回答を求めた。また,使用したい教材の順位を尋ね,1位と4位の理由を自由回答法で求めた。

結   果
 尺度の因子分析(重み付けなし最小2乗法,プロマックス回転)により,第1因子を学習意欲効果,第2因子をリラックス効果と命名した後,性別(2)×学校段階(3)×教材(4)の3要因反復測定分散分析を行った。多重比較はRyan法を用いた。本稿では教材の効果に関する結果を述べる。

 学習意欲効果 性別☓教材の交互作用が有意であり(F(3,891)=5.64,p<.01),男子は,認知度有>関連・オリジナル>挿絵なし,女子は認知度有・オリジナル>関連>挿絵なしとなった(MSe=3.36)。
 リラックス効果 性別☓学校☓教材の二次交互作用が有意であり(F(3,891)=2.55,p<.05),女子の小学生は,認知度有>挿絵なし・関連,中学生はオリジナル・認知度有>挿絵なし,高校生はオリジナル>関連・認知度有・挿絵なしとなった。一方,男子の中学生は認知度有・関連>挿絵なし,高校生はオリジナル・認知度有>関連・挿絵なしとなり,小学生は認知度有・関連で比較的効果高く,挿絵なしが低かったものの,多重比較は有意でなかった(MSe=1.38)。

考   察
 学習意欲効果について 仮説1,2とも支持され,挿絵の学習意欲効果が学校段階を越えて現れることが明らかになった。また,よく知るアニメキャラクターへの親しみやすさが効果を高めると考えられるが,知らないキャラクターでも効果が高まった女子は,これとは異なる動機づけのメカニズムを併せ持つことが考えられる。
 リラックス効果について 仮説1は,性別や学校段階により異なる一部の挿絵において支持された。また,仮説2は,一部の低い学校段階で支持されたものの,高校生では支持されなかった。リラックスをもたらす素材が,成長と共に,よく知るものから知らなくともゆるい雰囲気のものへと移行することが示唆された。
 認知度の高いキャラクターが小学生男子の設定であったことや,オリジナルキャラクターがゆるい雰囲気を持つものであったことに対して,今後は別の例を用いた検討が必要である。