The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH31] 個人特性要因が対人記憶に及ぼす影響

岩本知絵1, 高橋知己2 (1.上越教育大学大学院, 2.上越教育大学)

Keywords:対人記憶, 仮想的有能感, セルフコントロール

問題の所在及び研究の目的
 他者と関係形成する過程においては,関係形成のはじめの段階から対人認知が重要となる。なぜなら,新たな他者と出会う際の対人認知は,その後の相互作用の質や量を決定するからである。しかし,出会いの段階で新たに出会う他者との関係を構築できるか否かは,個人の要因によるものであると考えられる。本研究の目的は,新たな他者に対する対人記憶に関して,4つの個人要因(特性自尊感情・所属欲求・仮想的有能感・セルフコントロール)の関連について検討することである。
調査対象と調査時期
 大学院生40名(男子28名,女子12名)を対象とした集団による質問紙調査を行った。調査時期は2017年4月である。
調査内容
 (1)個人の調整要因:①自尊感情尺度の自己評価・自己受容の8項目(東京都,2013)②Learyらの作成したthe Need to Belong Scaleの翻訳版である10項目5件報の所属欲求尺度(小林ら,2006)③仮想的有能感尺度(速水,2006)④セルフコントロール尺度短縮版(尾崎ら,2016)(2)新たな他者の紹介文の呈示:田中・池上(2014)を基に作成した温かさを示す行動項目と冷たさを示す行動項目各6項目ずつ,および中立的な行動項目9項目の計21項目を用いた。(3)ディストラクション課題(4)紹介文の内容を再生する課題:(2)で用いた紹介文の内容を,出来るだけ想起するよう求めた。
分析の方法
 回答に欠損のなかった,36名(男25名,女子11名)の4つの個人要因尺度について,それぞれ男女別に分け平均値を出した。紹介文の内容を再生する課題は,参加者が再生した各項目の再生数を再生した項目の総数で除し,各項目の占める割合で分析した。温かさを示す行動項目と冷たさを示す行動項目とでどちらの項目を多く再生しているかを比較し,温かさを示す項目を多く再生した群,冷たさを示す項目を多く再生した群,どちらも同じ割合再生した群に分け,男女別にその人数と個人要因の平均値をχ2検定にかけた。
結果及び考察
 χ2検定の結果は有意であり(χ2(3)=22.106,p<.01),調整された残差の検定によると,冷たさを示す行動項目を多く選択した男子の仮想的有能感(z=2.80,p<.01)と女子のセルフコントロール(z=3.81,p<.01)において有意差がみられた(Table1)。他者と関係を結ぶ際,他者から自分がどの程度関係を結ぶに値するかという関係的評価に敏感である。仮想的有能感の高い男子は,新たな他者と出会った際に,他者と自らを比較し,他者を軽視することで自己を評価するため冷たさを示す行動を多く選択したと考えられる。セルフコントロールが高い女子が,冷たさを示す行動を多く選択したのは,関係を形成する際,他者から受容されるために,状況に相応しいやり方で,その人との付き合い方を決定し,自分の思考や感情,行動を変更しようとするからであると思われる。
引用文献
速水ら(2004)仮想的有能感の構成概念妥当性の検討 名古屋大学教育発達科学研究科紀要(心理発達科学)第51巻pp.1-8
小林ら(2006)所属欲求尺(the Need to Belong Scale)の翻訳の試み 日本心理学会第70回大会発表論集p220
小川ら(2010)一般感情尺度の作成 心理学研究 第71巻 第3号 pp.241-246
尾崎ら(2016)セルフコントロール尺度短縮版の邦訳
および信頼性・妥当性の検討 心理学研究 第87巻 第2号
pp.144-154.
東京都教職研修センター(2013)子供の自尊感情の傾向を把握する方法
  と指導のポイント<http://www.kyoiku-kensyu.metro.tokyo.jp/09seika/ reports/files/bulletin/h22/materials/h22_mat01a_02.pdf>
  (2017年7月21日)