The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH30] SNSにおける悲観的発信に対する閲覧者の認知

野口直樹1, 三宮真智子2 (1.大阪大学大学院, 2.大阪大学大学院)

Keywords:SNS, 悲観的発信, 賞賛獲得欲求

問   題
 Social Networking Service(以下:SNS)の1つであるTwitterでは,「嫌なこと・悲しいこと」などの他者の悲観的な発信に対して,閲覧者は「かまってほしい人」や「自己アピール」であると認知しネガティブな感情を抱くことが明らかになっている(藤井・山本・伊藤,2013)。しかし「嫌なこと・悲しいこと」の発信とも言えるSNS上の愚痴は,自身の励ましを目的としている場合もあり(伊藤,村野井・芝田,2014),閲覧者の認知の妥当性については検討の余地があると言える。
 そこで本研究は,閲覧者が他の発信よりも悲観的発信に対して深読み的な認知を行っている可能性に注目する。SNSにおいては,他者からの反応数が自己評価の指標となり得る(柏原,2011)。そのため,反応を得ようとする発信は賞賛獲得欲求が感じられやすいと言える。つまり閲覧者は,悲観的発信が不特定多数の他者から反応が得られる可能性に目を向け,「多くの反応が得たいという賞賛獲得欲求による発信」と捉えている可能性がある。その場合,閲覧者は悲観という内容の裏にある不確実な本音を深読みし,否定的な解釈をしていると言えるだろう。本研究は,この深読み的な認知を「作為性の認知」とし,閲覧者が悲観的発信に対して賞賛獲得欲求と作為性をどれだけ感じるかを測定することで,具体的な解釈内容について明らかにすることを目的とする。
方   法
実験参加者:研究参加に同意した大学生および大学院生31名の中から,SNS(Twitter,Facebook,Instagram)を利用していないと答えた3名,及び年齢が大きく外れた3名を除外し,計25名を分析対象者とした(男性8名,女性17名,平均年齢20.80歳,SD=1.29)。
手続き:場面想定法を用いて,各実験参加者に悲観的発信を含む5つの発信内容を呈示し,それぞれの発信に対して質問項目への評定を求め,発信内容ごとの項目の平均値を比較した。
発信例:悲観的発信1例,他者からの良い評価や反応を求める発信3例(社会的に望ましい自己の性格について発信する「自己高揚発信」 / 直接「いいね」や「シェア」など他者からの反応を求める「直接希求発信」 / 稀有な体験談について述べ「いいね」や「シェア」など他者からの反応を期待する「稀有体験談発信」),特に意図や目的がないとされる「ひとりごと発信」1例の計5つの発信を用意した。
質問項目:賞賛獲得欲求「良い評価を得ようとしている」と作為性「発信の裏に本音があるように感じる」について,「1:全くそう思わない~7:非常にそう思う」の7件法で測定した。
結   果
 独立変数を各発信,従属変数を各質問項目とする対応のある1要因の分散分析を行った。発信ごとの賞賛獲得欲求と作為性の平均値をFigure1に示す。
賞賛獲得欲求:場面の主効果が見られたため(F(2.66,63.91)=42.49,p<.001),ボンフェローニ法による多重比較を行った。その結果,ひとりごと発信に対してその他4つの発信すべての平均値が有意に高くなった。
作為性:場面の主効果が見られたため(F(4,96)=8.93,p<.001),ボンフェローニ法による多重比較を行った。その結果,悲観的発信は他の全ての発信と比べて平均値が有意に高くなった。
考   察
 悲観的発信は,賞賛獲得欲求と作為性の両方が強く認知されていた。この結果から,閲覧者は悲観的発信に対して,「発信の裏には,多くの反応がほしいという隠された意図がある」と認知していると考えられ,深読み的な認知の存在が示されたと言える。我々は他者の言動の背後に意図を感じると,その後類似する言動に対して同様の意図を感じやすくなる(Fein,1996)。つまり,悲観的発信に対する賞賛獲得欲求の認知は,発信者の意図を踏まえずステレオタイプ的になされ続ける恐れがある。このような閲覧者の認知や,それにより生じる問題について,さらなる検討が必要となる。