The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH33] 反証事例の配列順序の違いが「浮力」に関する誤概念修正に及ぼす効果

田邉雄也1, 高橋知己2 (1.上越教育大学大学院, 2.上越教育大学)

Keywords:浮力に関する誤概念, 二重推理法

問題と目的
 学校での学習と日常生活の経験の乖離により,学習者は自然現象や社会現象についての誤概念((ru) ̅;ル・バー)を持つことがある。そうした誤概念は,正しい情報を与えるといった教授方法だけでは修正が難しい。誤概念の効果的な修正方略の研究は,教育心理学的にも教育実践上も重要な課題であり,数多くの研究者によって研究が進められている(麻柄ら,2006)。誤概念の修正の方略として,誤概念にとっての反証事例を用いた学習援助をはじめに行うことで,誤概念の意識化・明確化を行う「ル・バー対決型ストラテジー」が細谷(1983)によって提案されている。また,同じ誤概念の修正方略であっても,反証事例の配列順序の違いにより,効果が変化することが明らかとなっている。麻柄(2001)は,誤概念にとっての反証事例の前に手がかりをあらかじめ学習させ,直感に基づいた回答と先に学習した手がかりに基づいた回答を求める「二重推理法」を提案している。本研究では,「浮力」に関する誤概念を取り上げ,その修正に反証事例の配列順序の違いが与える効果を検討する。
方   法
方法 教員養成系大学の学生20名を対決群と二重推理群にランダムに振り分けて実施した。対決群,二重推理群にはそれぞれ資料Tと資料Nを配布して解答を求めた。
資料 進藤(1995)をもとに,「浮力」の理解を促す資料を,「ル・バー対決型ストラテジー」を用いた資料Tと「二重推理法」を用いた資料Nの二種類作成した。資料の内容はFigure 1に示すとおりである。テストと確認問題はそれぞれ3問,7問で構成されている。
結果と考察
 対決群と二重推理群を比較したところ,テストの平均得点は,対決群1.20,二重推理群0.80であった。確認問題の平均得点は,対決群3.10,二重推理群3.10であった。確認問題の正解者数をTable 1に示す。χ^2検定を行った結果,テストと確認問題の正答者数に群間の有意差は認められなかった。テストにおける二重推理群の直感に基づいた回答(以下,直感回答)と手がかりに基づいた回答(以下,手がかり回答)のうち,直感回答が誤りであり,手がかり回答が正しいといった組み合わせは,30組中9組しか見受けられなかった。また,直感回答の正誤に関わらず,手がかり回答が正しい組み合わせは30組中17組であった。テスト解答後に意外度評定と納得度評定を5件法で行った結果,意外度評定における平均評定値は,対決群1.77,二重推理群1.77であり,χ^2検定を行った結果,有意差は認められなかった。納得度評定における平均評定値は,対決群2.13,二重群2.73であり,χ^2検定を行った結果,有意差は認められなかった。結果から,誤概念修正方略には領域固有性があることが示唆される。「浮力」についての誤概念修正に対する「ル・バー対決型ストラテジー」の有効性は,進藤(1995)によって明らかとなっているが,「二重推理法」の有効性は明らかとなっていない。手がかりを用いてテストに正答する被験者少ないことから,「浮力」についての誤概念修正には手がかりを用いて回答するといった過程が十分ではなかったと考えられる。
引用文献
進藤聡彦(1995)「誤法則を明確化する先行課題が法則の修正に及ぼす効果」教育心理学研究 第43巻3号 pp.266-276.
麻柄啓一(2001)「二重推理法による誤概念の修正」科学教育研究 第25巻2号 pp.128-136.