The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH37] 小学生の学習習慣・学習意識と親の教育観との関係に関する研究

荒牧良祐1, 浅田匡2 (1.早稲田大学大学院, 2.早稲田大学)

Keywords:学習習慣, 親の教育観

問題と目的
学力を扱った研究は様々なものが行われているが,その多くは学力をテストの得点のみに限定した狭義 の学力のものに偏っている。この理由としては,勝田(1967)の学力論による「計測可能な認知的な部分 に学力の概念を限定しよう」といった意図が強く反映していると考えられる。一方で,広岡は結果のみでなく思考態度も含めて学力なのではないかと主張し,学力を[基礎知識・学習方略・考え方,感じ方,行い方]の3層で構成されている論を提示した。志水 (2016)は,学力に対して影響力を増し続けている要因の1つに学習習慣をあげており,適切な学習習慣の形成が学力格差を解決するにあたり鍵を握っていると述べており,また,文部科学省が学習指導要領で示す新たな学力では知識技能に加えて,「学ぶ意欲や,自ら学び,主体的に判断し,行動し,問題解決する能力や資質」を含めており,従来の結果主義から,思考態度・意識習慣の重要性が主張されるよう になった。また,家庭の要因と学力の関係を示す研究は多く行われているが,その多くは SES(社会経済 的地位)と狭義の学力を関係性について言及したも のに偏っている。しかし,SESとの関連性を挙げたところで提示された家庭は何を変えることができるだろうか。そこで,本研究では,子どもが望ましい学習習慣を獲得する要因となるものを家庭における教育戦略という観点から明らかにすることで,保護者の教育観や,今後親世代となる我々への足場かけを行うことを目的とする。
研究方法
対象者:所沢市の小学校2校の5年生・6年生と保 護者(計 486 名) 調査方法:質問紙調査(児童用:杉村・井上・豊田 (1986)参考,保護者用:志水(2016)参考)
結果と考察
 児童の学習意識,学習習慣に関する回答について, 因子分析を行い,5因子を抽出し,因子得点を算出した。5因子は,学習習慣因子,学習意識因子,向学 校意識因子,学習積極性因子,抗学習因子と命名した。次に,各因子を従属変数,保護者の取り組みを 独立変数とし重回帰分析を行なった結果,学習習慣と「具体的な学校名を用いて進路の話をする」という保護者の取り組みとの間に5%水準で有意な正の関係がみられた。F(5,203)=2.402 (p<0.05)。保護者が,児童に関わる時間や学歴期待に基づき保護者をグル ープに分け,5因子を従属変数とした一要因分散分析を行なったところ,保者の学歴期待が高ければ児童の学習習慣や学習意識が高いという結果は示されなかった。学歴期待の高さが直接児童の学習習慣に影響するのではなく,学歴期待が高くても家庭での教育的取り組みを行わないことが考えられた。学歴期待,教育的取り組み,児童の学習習慣の関係を検討した結果,学歴期待が高いと教育的取り組みを行なっている傾向にあり,その結果,学習習慣に正の影響を与えているということが示された。この結果を元に,子どもの学習習慣と親の教育観の関係性の仮設モデルを立て,Fig.1のような関係性が存在しているのではないかと考えた。
課   題
 保護者の教育的取り組みを左右する要因と考えられるSESや学習習慣と学力テスト得点との関係など,学力に関連する多様な要因をどのように測定し分析するかを新たに考える必要があるだろう。
参考文献
・広岡亮蔵 1978 「学力とは何か」 『現代の学 力問題』明治図書選書 pp7-54・勝田守一 1967 「学力とは何か」 教育と医学, 15(10), pp4-10.・志 水・高田 2016 「マインド・ザ・ギャップ」大阪 大学出版・杉村健・井上登世子・豊田弘司 1986「小 学生における学習習慣と学業成績の関係」奈良教育 大学教育研究所紀要,22 pp43-58