The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH38] 短期大学生の学習課題先延ばし行動とセルフコントロールとの関連

遠藤美行 (中京学院大学)

Keywords:学習課題先延ばし行動, セルフコントロール, 短期大学生

問題と目的
修学につまづきを生じる学生の多くは「進級したい」「卒業したい」という思いがあるものの,期日の決められた課題やレポート,試験勉強などについて,提出締め切りや重要な試験の日が迫ってきているのに他のことを行ったり,気になりつつも放っておくなどの行動をとってしまう(Ellis & Knaus, 1977 ; 向後・中井・野島, 2004)。この課題先延ばし行動と学業成績との間には負の関連が報告されている(Tice & Newbein,1997)。学業課題先延ばし行動の抑制には改良型セルフコントロールの実行が重要であることが示唆されている(藤田,2009)。一方,改良型セルフコントロールは,遅延価値割引との相関関係が見られており(Sugiwaka & Okouchi,2004),この遅延価値割引の個人差と成績との間には相関関係が認められている(Kirby,Winston&Santiestba,2005)。本研究では学業課題先延ばし行動を抑制する要因を遅延価値割引,改良型セルフコントロールとの関連から検討する。
方   法
1.調査対象者・期間及び手続き
・対象:短期大学生46名(男性5名,女性41名,平均年齢=19.2歳 SD=1.21歳)
・実施時期:2017年2月。
・倫理的配慮:アンケート実施時,①実験IDを用い,個人が特定されず,評価には影響がないこと。②同意が得られない場合にはアンケートに回答しないように伝え,回答したすべての学生から同意を得た。本調査の実施に先立ち,中京学院大学倫理審査会からの承認を得て行った。(第28014号)
2.調査項目
先延ばし行動の測定
 課題先延ばし行動傾向尺度:藤田(2005)の作成した尺度で,「課題先延ばし因子」(9項目)「約束事への遅延因子」(4項目)の2因子からなる。13項目の尺度である。評定は自分の行動について「非常にある」(5点)から「全くない」(1点)の5段階評定で,得点が高いほど先延ばし傾向が高いことを示している。
セルフコントロールの測定
 Redressive-Reformative Self-Control Scale (RRS)尺度: 杉若(1995)が作成した日常生活で観察されるセルフ・コントロールの個人差を評価する尺度。下位尺度「改良型SC」「調整型SC」「外的要因のコントロール」で構成される。
遅延価値割引の測定
 遅延価値割引測定用紙:質問紙の選択肢は仮想金銭報酬の即時小報酬を左側,遅延大報酬を右側に配置した。割引の程度の指標として,曲線下面積(AUC)を算出した。AUCは0から1の範囲の値をとり,価値割引が穏やかであれば面積が大きく,割引が激しければ面積が小さくなる。

結果と考察
学業課題先延ばし行動とRRSとの関連では,課題先延ばし行動と改良型セルフコントロールに負の相関関係(r=-.514, p<.01),課題先延ばし行動と外的要因のコントロールに正の相関関係が認められ(r=.315, p<.05),改良型セルフコントロールの実行が学業先延ばし行動に影響するとした先行研究に一致した(藤田,2012)。一方,②学業課題先延ばし行動と遅延割引との間に有意な負の相関関係が認められた(r=-.534, p<.01)。これら相関分析の結果から,学業課題先延ばし行動と遅延割引に関連がある可能性が示され,課題先延ばし行動を目的変数とした重回帰分析を行った。その結果,課題先延ばし行動の抑制には,遅延割引の個人差,改良型セルフコントロールの実行度が影響していることが示された。また,外的要因のコントロールは先延ばし行動を促進させてしまう可能性が示された。本研究の結果から,課題先延ばし行動の抑制に遅延価値割引の個人差が関与している可能性が初めて示された。