日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

2017年10月9日(月) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PH49] 身近な他者への相談が意思決定後の後悔に及ぼす影響

伊藤拓1, 瀬戸美奈子2, 金井篤子3 (1.名古屋大学大学院, 2.三重大学, 3.名古屋大学)

キーワード:後悔, 意思決定, 相談

問題と目的
 我々は生きていく上で誰しも後悔を経験する。小宮・楠見・渡部(2007)は意思決定に他者が関わることが,その後生じる後悔に何らかの影響を及ぼすことを示唆している。本研究では他者への相談を伴う意思決定に着目し,相談相手の助言に従ったか否か,及び意思決定者の自己統制感がその後の後悔に及ぼす影響を検討する。
方   法
調査協力者:大学生190名(男性76名,女性110名,不明4名)
手続き:授業時間内に質問紙を配布し,協力者の同意の上,集団で実施した。
質問紙:調査協力者は仮想場面を提示された。高校生の大学選択を想定し,友人Xの助言(A大学-B大学),最終的な決定(A大学-B大学),意志決定の根拠(友人の助言-自分の意志)の3要因を組み合わせたものから,場面1(当初の意志A→友人XがAを推奨→助言に従ってA),場面2(当初の意志A→友人XがAを推奨→自分の意志でA),場面3(当初の意志A→友人XがBを推奨→助言に従ってB),場面4(当初の意志A→友人XがBを推奨→自分の意志でA)という4場面を提示した。各場面での選択後悔(その大学を選んだことに対する後悔)と相談後悔(その相談相手に相談したことに対する後悔)を4件法で評定した。自己統制感について一般的LOC尺度(鎌原・樋口・清水,1982)の全18項目を4件法で評定した。
結果と考察
 意思決定の根拠と自己統制感の組み合わせによる各後悔それぞれの平均値差を検討するために分散分析を行った(Table1)。その結果,選択後悔においては自己統制感と意思決定の根拠に有意な交互作用が見られたため,単純主効果の検定を行ったところ,内的統制型,外的統制型ともに友人Xの助言に従って選んだ場合の方が当初の自分の意志で選んだ場合に比べて有意に選択後悔が大きかったが,特に内的統制型の場合にその差が顕著であった。
 相談後悔においては,意思決定の根拠に有意な主効果が見られ,友人の意見に従った場合,当初の自分の意志に従った場合に比べ,相談後悔が大きくなることが示された。
 4つの場面と自己統制感の組み合わせによる各後悔の平均値差を検討するために分散分析を行った(Table2)。その結果,選択後悔においては有意な場面の主効果が見られた。多重比較を行ったところ,場面3は,その他の3つの場面に比べて選択後悔が有意に大きかった。相談後悔においても有意な場面の主効果が見られ,多重比較の結果,場面3,場面1,場面2,場面4の順に相談後悔が大きくなることが示された。
 以上より,相談を伴う意思決定において,意思決定者は自分の意志で最終的な決定をすることで後悔が小さくなること,相談に応じる者は意思決定者の意志とは異なる意見を提示しつつ,意思決定者の自己決定感を高めるような相談の乗り方によって,後悔の小さい意思決定を支えることができることが示唆された。