The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH51] 向社会的行動とセルフコンパッションがレジリエンスに及ばす影響について

構造方程式モデリングによる検討

岩城美良 (法政大学大学院)

Keywords:レジリエンス, 向社会的行動, セルフコンパッション

問題・目的
 近年,逆境や試練を克服し,感情的・認知的・社会的に健康な精神活動を維持するのに不可欠な心理特性とされる(森ら,2002),「レジリエンス」に関する研究が盛んに行われており,研究が進むにつれ,利他的行為,向社会的行為がレジリエンスを高める要因の一つであることが明らかになっている(Southwick&Charney,2015)。
 また,苦痛を経験したときに,自分自身に対する思いやりの気持ちを持ち,否定的経験を人間として共通のものとして認識し,苦痛に満ちた考えや感情をバランスが取れた状態にする(有光,2014),「セルフコンパッション」に関する研究から,セルフコンパッションとレジリエンス間に正の相関があることも明らかとなっている(kemperら,2015)。
 しかし向社会的行動とセルフコンパッションがそれぞれレジリエンスにどのように影響するのかを検討する研究はまだないため,本研究では,向社会的行動とセルフコンパッションがレジリエンスの下位概念にどのように関連するのかを検討する。
方   法
調査対象 206名(男性51名,女性155名),平均年齢19.8歳に質問紙調査を行った。
手続き 調査時期は2016年11月中旬で,大学の講義後に行われた。初めに,研究目的と調査の注意事項を教示し,その後質問紙を配布し,その場で回答してもらった。
使用尺度 1.小塩(2002)による神的回復力尺度(「新奇性追求」,「感情調整」,「肯定的な未来志向」を下位概念とする)。2.菊池(1988)による大学生版向社会的行動尺度。3.宮川・谷口(2016)による日本語版セルフコンパッション反応尺度(SCRI-J)。
分析方法 構造方程式モデリングによる潜在変数間のパス解析を適用した。レジリエンスの下位概念である,「新奇性追求」,「感情調整」,「セルフコンパッション」を目的変数,「向社会的行動」,「セルフコンパッション」を説明変数とする多重指標モデルを採用した。
結   果
 SEMによる多重指標モデルの結果をFigure1に掲載する。これは,観測変数とそれに付随する誤差変数を除いたものである。向社会的行動は新奇性追求と0.35の最も強いパス係数(標準化解)を示し,感情調整とは関連がなかった。逆にセルフコンパッションは感情調整と0.57と最も強い関連を示した。
考   察
 向社会的行動は新奇性追求と最も強い関連があった。(Reivich &Shatte ,2015)は,レジリエンスは,困難を「乗り越える力」だけではなく,新しいことに挑戦し,意義ある行動を追求する「働きかける力」でもあると述べており,向社会的行動はこの「働きかける力」と関連していると考えられる。
 また同じく(Reivich &Shatte ,2015)によると,レジリエントであるかどうかにおいて重要なのは「感情」であり,この感情は「認知」によって引き起こされるとしている。セルフコンパッションは困難な状況における自己に対する認知であるから,感情調整力を促進すると言える。一方で,向社会的行動はあくまで行動であり,自分の感情を調整するような認知的な働きはしない。
 以上のことから,向社会的行動は行動力,セルフコンパッションは感情調整力の面で,レジリエンスを促進することが分かった。