The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH52] 現代青年の「悩めなさ」についての研究

尺度作成の試み

鳥本大貴1, 上田琢哉2 (1.春日井市民病院, 2.愛知教育大学)

Keywords:現代青年, 悩めなさ, 尺度作成

問題と目的
 学生相談などの臨床場面で「悩めない学生」の存在が取り上げられ始めてから20年程が経つが,現代青年の持つ「悩めなさ」の構造を明らかにし,その心理的特徴を探索する試みは少ないと言える。本研究は,「悩めなさ尺度」を新たに作成すること,その信頼性と妥当性を検討することを目的とする。
方   法
分析対象者 愛知県内の大学生237名(男性50名,女性187名,平均年齢18.76歳,SD=0.86歳)
調査時期 2017年4月下旬
調査内容 (1)「悩めない学生」や「悩めない青年」に関する複数の文献を参考にし,特徴にあてはまると考えられる30項目を作成した。5件法。
(2)後藤・児玉・佐々木(1999)が作成したアレキシサイミア質問紙(Galex)16項目を使用した。7件法。
(3)キャッテル不安診断検査(Cattell Anxiety Scale:CAS)40項目を使用した。3件法。
結果と考察
因子分析
 悩めなさ30項目について,天井効果・フロア効果が見られないことを確認し,主因子法・プロマックス回転による因子分析を行った。スクリープロットの結果を参考に4因子を固定し,負荷量が.45以下の項目を削除する方針で分析を進めた結果,Table 1に示した21項目4因子構造が得られた。第一因子から順に,「悩みの不明瞭さ」「自己不確実感」「内面の語れなさ」「問題解決の性急さ」と命名した。
信頼性・妥当性の検討
 悩めなさ各因子についてクロンバックのα係数を算出したところ,順に.88,.86,.78,.66と概ね十分な高さであった。次に,悩めなさ尺度の因子間相関を確認したところ,すべて.01以下の有意水準で正の相関があった。特に,「悩みの不明瞭さ」と「自己不確実感」,「悩みの不明瞭さ」と「内面の語れなさ」の間に高い正の相関が見られた。
 次に,併存的妥当性を確かめるため,Galexの下位因子「体感・感情の認識言語化不全」「空想・内省の不全」およびCASの不安総得点との相関分析を行った(Table 2)。その結果,悩めなさ各因子とも「体感・感情の認識言語化不全」および不安総得点と正の相関があった。
 「悩めなさ」とは,悩みの無い状態を指すのではなく,むしろアレキシサイミア傾向に近く,不安も抱えた状態であることが分かった。ただし,不安との相関係数を見ると,因子によっては必ずしも強い関連ではないものもある。今後は,CASの下位尺度との相関を詳しく検証し,現代青年の「悩めなさ」の構造を明らかにしていきたい。