日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

2017年10月9日(月) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PH53] 性差及び出生順が援助要請の阻害要因に与える影響

利益コストに着目して

堀江奈央1, 高橋知己2 (1.上越教育大学大学院, 2.上越教育大学)

キーワード:援助要請, 出生順, 利益コスト

問題の所在及び研究の目的
 学校や社会における諸機関が行うカウンセリングや心理療法,教育相談という援助要請を行う場に足が向かない人に対して,援助要請行動をとりやすくするための阻害要因の研究は必要である。本研究においては,性差及び出生順に焦点を当て,援助要請行動を阻害している要因について検討することを目的とする。
調査対象・調査時期
 大学生及び大学院生40名(男子23名,女子17名)を分析の対象とした。2017年5月中旬に実施した。
調査手続き
 調査では,非調査者に性別と出生順を尋ねた後,以下の質問項目に回答を求めた。(1)援助要請スタイル尺度(永井,2013)計12項目(2)相談行動の利益とコスト尺度(永井・新井,2007)計24項目である。
分   析
 性差と出生順が,援助要請スタイルの3要因(援1:過剰型,援2:回避型,援3:自立型)と利益コストの6要因(利コ1:ポジティブな効果,利コ2:否定的応答,利コ3:無効性,利コ4:秘密漏洩,利コ5:自助努力,利コ6:問題の維持)に影響を及ぼすのか検討した。
結果及び考察
 性別(男・女)及び出生順(長子と次子(以後))に分類し,さらに援助要請スタイルの3要因と利益コストの6要因を基にタイプ分類し分析を行った(Fig.1:男子,Fig.2:女子)。男子ではどの要因間でも有意差は見られなかった。男子においては,出生順は各要因に影響を与えていないことがわかる。女子においては, 有意差が見られた
(χ2(8)=51.554,p<.01)。調整された残差の検定によると,援2(z=2.323,p<.05),援3(z=2.791,p<.01),利コ1(z=3.498,p<.01)で長子が高く,利コ3 (z=-3.415,p<.01), 利コ4 (z =-3.660,p<.01),利コ5(z=-2.122,p<.05)で次子が高いという有意な差がみられる。長子は援助要請スタイルとして回避型と自立型を選択する一方で,次子は利益コストに高い反応を示しながらも援助要請スタイルを選択できない。これは,次子は無効性や秘密漏洩の懸念を抱えコストに対する心配がありながらも,援助要請を行うという可能性があることを表していると考えることができる。
 これまでの援助要請研究では,状況要因や個人特性を変数として検討してきたが,さらに要因として日本人の持つ出生順という概念が援助要請に大きな影響を及ぼす可能性が示唆されたと考える。 

引用文献
永井智・新井邦二郎(2007)「利益とコストの予期が中学生における友人への相談行動に与える影響の検討」教育心理学研究 第55号 pp.197-207 
永井智(2013)「援助要請スタイル尺度の作成−横断調査による実際の援助要請行動との関連から−」教育心理学研究 第61号 pp.44-55